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【猛獣注意】復活を遂げたティグレ!ラダメル・ファルカオの今

2017 8/3 12:07dada
ラダメル・ファルカオ
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スペインの懐かしき3人の男たちとティグレの名

かつてのリーガ・エスパニョーラには、リオネル・メッシ選手クリスティアーノ・ロナウド選手、ラダメル・ファルカオ選手(いずれも以下、敬称略)という選手がいた。
この3人はそれぞれFCバルセロナ、レアル・マドリードCF、アトレティコ・マドリード(以下、アトレティコ)という、スペインを代表する3クラブに所属していた。彼らによる得点王争いは、必然とクラブの優勝争いを左右していた。20代半ばであった当時のファルカオは、選手として脂の乗り切ったタイミングで世界最高峰のストライカーとして君臨していた。
左右両方の足が正確に扱えるファルカオは、様々な角度からシュートを放つことができる。ゴール前のポジショニングは正確で、味方からパスを受けてのポストプレーも上手い。空中戦にも長けており、彼の強烈なヘディングシュートは幾度となくゴールを突き刺した。
ドリブルやパスなど、華麗な攻撃で崩すメッシやロナウドを現代的なストライカーとするならば、ファルカオは数の少なくなってきた「古典的ストライカー」だろう。猛然とゴール迫る姿勢と嗅覚は猛獣のようだ。彼の愛称である「ティグレ(虎)」は彼のためにある名だ。
だが、ファルカオはこの三すくみから離脱する形で、2013-14シーズンにフランスのリーグ・アンで戦うASモナコ(以下、モナコ)へ移籍した。スペインのサッカー界は一気に寂しくなった。

転換期を迎えたASモナコと海外選手

2013-14シーズン当時のモナコは、多額の資金でクラブを強くする転換期にあった。前シーズンをリーグ・ドゥ(フランスの2部リーグ)首位で終えていたモナコは、リーグ・アンでも躍進を続けるために補強が必要不可欠だった。
このシーズンはファルカオだけでなく、ハメス・ロドリゲス選手、ジョアン・モウチーニョ選手、リカルド・カルバーリョ選手といった海外の大物選手を集めた。
ただ、ライバルクラブであるパリ・サンジェルマンFC(以下、パリ・サンジェルマン)も前年から積極的な補強を続けており、リーグでの争いは熾烈を極めた。 結果的にパリ・サンジェルマンは、2012-2016シーズンまでリーグを4連覇した。

逃したW杯への出場、ファルカオを襲った悲劇

モナコが変わろうとしているなかで、ファルカオもまた新天地で己のキャリアに邁進しようとしていた。 そんな彼を悲劇が襲う。2017年1月、ラフプレーを受け膝の靭帯を損傷する。
ゴールに迫っていたファルカオは後方から相手選手のスライディングを受けた。その瞬間、変えの左足は外側へ不自然に曲がり、ピッチに倒れ込んだ。
彼はこの負傷により、同年の夏に開催されるブラジルW杯への出場を逃した。前述していたようにファルカオはこの時キャリアで最も活き活きとしていたタイミングだ。
彼の母国であるコロンビアは南米の国。ブラジルでの開催は、彼にとって感慨深いものとなるに違いなかった。
この負傷により、彼のキャリアは大きく変わっていくこととなる。

転々とするも見えてこない未来

ブラジルでのW杯を棒に振ったファルカオは、モナコではなく様々なクラブを転々とするようになる。 2014-15シーズンを戦ったのは、マンチェスター・ユナイテッドFC(以下、ユナイテッド)だった。
完全移籍のオプションを伴うこのレンタル移籍は、ファルカオにとって負傷後の起死回生を図る絶好の機会だ。しかも、世界最高峰としても名高いプレミアリーグ。このリーグで結果を出すことができれば、ファルカオの名もサッカー界に帰ってくる。
だが、ファルカオはユナイテッドで全く結果を出すことができなかった。かつての負傷が影響しているのか、ゴール前での勢いが見られない。オプションは行使されることなく、手土産なしでのモナコ帰還となった。
翌2014-15も再びレンタル移籍を経験。向かったのはまたしてもプレミアリーグ。ジエゴ・コスタ選手のバックアッパーを探していたチェルシーFC(以下、チェルシー)だった。
ファルカオはシーズン開幕当初から途中出場で度々ピッチに立った。エデン・アザール選手らサイドアタッカーの強力なチェルシーは、ファルカオのポストプレーでタメを作ってから攻撃を展開しようとする意思が見られた。
ファルカオは、ユナイテッドの時よりもバックアッパーながら懸命に戦う姿勢を見せるが、10月にまたもや負傷離脱。この際の離脱は翌2016年の4月まで引きずられ、2シーズン連続でファルカオはピッチから消えてしまった。
失意のうちにファルカオはモナコへと帰還した。

抜かれても抜かれても。抗い続けたティグレの復活!

2014年の負傷からファルカオはかつてのティグレとしての姿を失っていた。
相次ぐ不調と負傷は彼の牙を抜き続けた。「モナコへ復帰してもファルカオは結果を出せない。年齢もなかなかだし(復帰時30歳)、すでに終わった選手なのかもしれない」そんなことを多くの人々は考え始めていた。
2016-17シーズン、そんなファンの心配を受けながらファルカオの再挑戦が始まった。 このシーズンのモナコは、10代の超新星キリアン・ムバッペ選手や中盤のファビーニョ選手、ティエムエ・バカヨコ選手ら若手が大活躍。リーグを1位でフィニッシュし宿敵パリ・サンジェルマンの連覇を止めた。
さらにはCLでもベスト4入りするなど最高のシーズンを送った。 ファルカオはこのシーズンで再び牙をむき、若手選手らに混じって前線で献身的な動きを続けゴールを量産した。結果、リーグでは29試合21得点、CLでは8試合で5得点を挙げた。
不調は嘘のようにボールを受ければ果敢にゴールへ迫った。また、左右の両足からはかつての正確なシュートが戻り、ポストプレーによる若手選手への献身的な支えも見事だった。 モナコの大躍進の裏に、このベテランの活躍があったことは言うまでもない。
「やっていく上で大切な3つの要素がある。それは身体と心と魂だ。選手には強いフィジカルも必要だが、それは強い心も同じなんだ」と語るファルカオ。 かくしてティグレは舞い戻った。

継続してこそファルカオ!勝負のシーズン

2017-18シーズンは、ファルカオにとってもモナコにとっても勝負のシーズンとなる。
好成績を残した主力組には、多方面から移籍の噂が巻き起こっており、同じメンバーでシーズンに臨めるとは限らない。 ファルカオも2016-17シーズン終了時点で31歳。選手としてのキャリアは終盤を迎え、これから下降線をたどっていくことが予想される。
しかし、どうだろうか。強靭な身体と心と魂を持ち、抜かれても抜かれても牙をむくのがファルカオだ。 彼がゴールという名の獲物に、これからも食らいつき続けてくれる予感もするのではなかろうか。 ティグレはまだまだ眠らない。