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貪欲なストライカーが歩む己の道!ジエゴ・コスタ

2017 6/28 09:44dada
diego costa
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コスタの原点はストリートにあり

ジエゴ・コスタ選手は少年の頃、ブラジルのストリートでサッカーをしていた。

彼の父は出稼ぎ労働者で家は常に貧しい状況が続いていた。当然、恵まれたサッカー環境にあるわけもなく、なんと16歳までストリートでくすぶっていたようだ。ストリートではケンカなど日常茶飯事で、他の少年たちを殴り、蹴り、肘打ちを食らわせるような少年だった。
「自制心はなく、相手を殺すくらいに打ちのめすことばかりを考えた」とまで語っている。

18歳でやっとポルトガルのSCブラガと契約するも、手癖の悪さは一向に良くならず6年間で7つのクラブを転々とする。やはり昔から培われたストリートでの癖を抜くのは相当難しいようだ。

しかし、2012年にアトレティコ・マドリード(以下、アトレティコ)でシメオネ監督と出会うことで、彼のキャリアは大きく動き始める。

シメオネのチョリスモが変えた姿勢

アトレティコを率いるシメオネ監督は、「チョリスモ(シメオネ主義)」と呼ばれる戦術をクラブに浸透させていく。チョリスモは、前線からの激しいプレッシングを起点とし試合をコントロールしていく戦術だ。

選手一人一人が全力で走り続けることが重要で、コスタ選手もチョリスモを構成する重要なファクターになっていく。
最初は彼の少々難ありの性格が献身的な働きを阻害するものと思われたが、元々の獰猛さが良い意味で幸いしてバックラインにプレスをかけるようになった。

時折、一触即発するような場面があるものの、コスタ選手のプレー姿勢は間違いなく向上し、アトレティコに欠かせない選手として成熟していった。
シメオネ監督もコスタ選手に全幅の信頼を寄せるようになり、2012-13のコパ・デル・レイ(スペイン国王杯)ではクリスティアーノ・ロナウド選手を抑えて8得点で得点王になる。

アトレティコが叶えた悲願!置き土産を残したコスタ

リーガ・エスパニョーラでは、マドリーとFCバルセロナ(以下、バルセロナ)、そしてアトレティコの三つのクラブが優勝を争う。

しかし、最後の最後に結局リーグタイトルのトロフィーを掲げるのは、マドリーとバルセロナの二強だ。アトレティコは常にその後を追う存在で、優勝など遠い存在だった。

アトレティコに就任したシメオネ監督は、この流れを変えるべくチョリスモを導入し、チーム状況の立て直しを図る。
成熟したコスタ選手は、2013-14シーズンに獅子奮迅の活躍をみせ、リーグ27得点を記録。アトレティコは勝ち点90を計上し、二強を寄せ付けない強さで18年振りのリーグタイトルを獲得した。試合に勝つ度、その中心にはコスタ選手がおり、クラブとサポーター、彼の三者間には強く固い絆が結ばれた。

ただ、そんなコスタ選手の獲得に目を付けたのがイングランドのチェルシーFC(以下、チェルシー)だった。

ストライカー探しに決着!チェルシーが欲した才能

チェルシーは、これまでに幾度となく結果を出せるストライカーの獲得に失敗している。

特にリヴァプールFC(以下、リヴァプール)から、フェルナンド・トーレス選手は、約65億円もの金額でチェルシーに移った。鳴り物入りで加入したトーレス選手だったが、リヴァプール時代の活躍を全く発揮することができずレンタル移籍等を経てアトレティコに移った。

こういった背景を経て、コスタ選手は約56億円でチェルシーに加入した。サポーターは「トーレスのようなことにはならないで欲しい」と心配したが、20得点を記録し5年振りのリーグタイトル獲得に貢献した。
やはり若干の手荒さはあったが、当時のチェルシーを指揮したモウリーニョ監督の下、常にゴールを狙い、守備への貢献も怠らなかった。

不満分子になりつつある野獣……

2016-17シーズンのチェルシーはアントニオ・コンテ監督が率いており、3バックに変更してから首位を快走し続けている。

ただ、2017年に入ってからは段々とパフォーマンスが低下しており、得点も伸び悩んでいる。※32節終了時点では28試合に出場し17得点。

冬の移籍市場では古巣アトレティコへの復帰を目指していたことや、中国クラブからの100億超えのオファーが届くなど彼の周囲は慌ただしくなっている。
その慌ただしさはプレーにも現れているのか、これまでのゴールに向かう獰猛な姿勢は、鬱憤を晴らすかのようなものに変わっている。チェルシーサポーターがコスタ選手に感じるのは「いつ相手を殴ってもおかしくない緊張感」と、「この先スランプに陥りまたストライカーがいなくなるという不安」だ。

これまでの経験に鑑みれば、ストライカー探しに喘ぎ、上位争いを演じられなくなるのは避けたいところだ。コスタ選手がそんなサポーターの気持ちをどこまで理解しているかわからないが、活躍の舞台を変える可能性はかなり高い。

サッカー選手には一つのクラブに留まり続けるタイプと、コスタ選手のように様々なクラブを放浪するタイプが存在する。これはもう仕方のないことなのかもしれない。

次のストライカーに目星はついている?

チェルシーはコスタ選手の去就が不透明な状況を受け、次なるストライカー獲得に動き出している。

その筆頭がかつて所属していたロメル・ルカク選手とアルバロ・モラタ選手だ。 ルカク選手がエヴァートンFC(以下、エヴァートン)でブレイクするが、CL権を得ることはできず、再び古巣への加入を熱望しているようだ。ただ、エヴァートンとチェルシーは過去のジョン・ストーンズ選手の移籍で揉めており、スムーズに移籍できるかどうかはまだわからない。

アルバロ・モラタ選手は、コンテ監督と相思相愛であるとされ、2017年4月には個人合意に至っているとの報道もあった。レアル・マドリードCF(以下、マドリー)での出場機会も限られており、別のクラブに移籍するのは必然とされている。 どちらがチェルシーに加入するかはなかなかはっきりしないが、どちらもクオリティの高さは折り紙付きだ。 対するコスタ選手は、古巣かつアントワーヌ・グリーズマン選手がいなくなる可能性のあるアトレティコか、大枚をはたく中国リーグへの参戦があり得る。しかし、バルセロナが獲得を狙っているという噂もあり、その動向はやはり不透明だ。 不満分子となる可能性の高いコスタ選手が、腰を据えてプレーできるクラブは見つかるのだろうか。