ベルギーの怪物はプレミアの地へ
エデン・アザール選手はチェルシーFC(以下、チェルシー)所属のサイドアタッカーです。WGやSMFとしてプレーすることが多いですが、場合によっては中央に位置取りして味方の攻撃を組み立てることもできます。
そんなアザール選手は、チェルシー所属以前はフランスの名門LOSCリール・メトロポール(以下、リール)に所属していました。10代の頃からベルギーのU代表でもコンスタントに試合に出場しており、「ベルギーの至宝」、「ベルギーの怪物」といったネーミングをされもてはやされてきました。
いよいよプレミア入りの噂が熱を帯び始めた時、最も有力視された移籍先はマンチェスターの両雄でした。ただ、最終的にはユース年代からスカウトがリサーチを続けていたというチェルシーへの移籍が決定。移籍金は約40億円とされています。
エデン・アザールは第2のメッシ、クリスティアーノ・ロナウド?
アザール選手の持ち味はリズム良いドリブルです。ドリブルスピードもさることながら、相手DFを背負ったままでも華麗にターンを行ったり、味方とのパス交換を繰り返して易々と相手ゴール前へ近付くことができます。
2016-17シーズンからは左サイドにマルコス・アロンソ選手を迎え、ある程度ディフェンスのタスクを彼に託し攻撃に専念することができています。
アザール選手のドリブルはお尻と腰回りに秘密があると思います。ドリブルの際にはこのお尻と腰が柔軟に動きつつも、ぶれることがありません。つまり体幹がしっかりしているということです。DFに囲まれても体幹が安定しているため、急角度の方向転換やターンができるのでしょう。
リオネル・メッシ選手やクリスティアーノ・ロナウド選手がベテランの域に達し、「次にやってくる世界最高峰の選手は誰だ?」というのが議論の的になりつつある昨今。そんな時には間違いなくこのアザール選手の名前が挙がるようになっています。
3冠達成!本物のアタッカーになったシーズン
さて、少し時を戻します。
アザール選手は移籍当初は背番号17をつけていましたが、2014-15シーズンからはファン・マタ選手から引き継ぐ形で背番号10をつけるようになりました。
このシーズンは爆発的な攻撃力を発揮し、リーグ戦では37試合14得点8アシストを記録。チェルシーの5年振りのタイトル獲得に大きく貢献しました。
決して独善的なプレーだけではなく、味方を活かす動き出しができる彼は、10番にふさわしいプレースタイルを確立することができました。
そして見事プレミアリーグ年間最優秀選手賞、PFA年間最優秀選手賞、FWA年間最優秀選手賞などを獲得。3冠を達成しチェルシーに欠かせない選手の一人になりました。
被ファール数トップクラス!それでもケガはしない
アザール選手はかねてより被ファール数が多いことで知られる選手でもあります。「ファールでなければ止められない」んですよね。これはアタッカーの誉れとも言えるでしょう。
しかし、ファールを受ける数が多ければケガのリスクも増えます。アザール選手がケガで長期離脱となれば、チェルシーの攻撃レベルは著しく下がります。これだけは何としても避けたいところです。
ところが、です。アザール選手はチェルシー加入どころかリール在籍時からケガが原因での長期離脱はありません。
調子が上がらないことはありましたが、常に第一線で戦ってきました。
これは推測ですが、幼少期に習っていたという柔道のおかげで「受け身(こけ方)がとても上手」なのだと思います。体幹の強さもここから由来しているのではないでしょうか。
柔道がサッカーに活きていることは本人も公言済みです。
アザールの移籍はあり得る?マドリー行きの噂はどうなるのか
アザール選手はレアル・マドリードCF(以下、マドリー)の移籍がよく取り沙汰されています。
これは毎度噂レベルの話であり、実際に交渉の席に臨んだことはないようです。ただ、マドリーの監督である「ジネディーヌ・ジダン氏はアイドル」と語っていることもあり、サポーターは「もしかしたら、いつかきっと……」と思う方も多いのが事実です。
さらにモウリーニョ監督の下で不調に陥った2015-16シーズンは、「来季はどこにいるかわからない」と言った主旨の発言をしたことでも話題になりました。
そして翌年2016-17シーズンのチェルシーはどうなったかというと、絶好調に次ぐ絶好調。コンテ監督の下で採用された3バックシステムは見事機能し、アザール選手も大活躍。2017年3月には「ロンドンでの暮らしに満足しており、移籍の可能性はない」という報道もありました。どうやら今のところ移籍はなさそうです。チェルシーが好調を維持し続けられれば、の話ではありますが。
コンテ式3バックでのアザールの立ち位置とは
アザール選手はコンテ監督が採用した3バックシステムで再び輝き始めました。
左サイドで全幅の信頼を与えられた彼は、アタッカーにも多くの守備のタスクを求めたモウリーニョ監督の時とは打って変わって、のびのびとプレーしているようにみえます。
左サイドの相棒マルコス・アロンソ選手とは抜群の相性で、中盤のエンゴロ・カンテ選手やネマニャ・マティッチ選手らとのワンツーの完成度も抜群です。
自分が狙いたい相手DF陣の間隙を、パスや走り出しに、”メッセージ”として乗せることができているように思えます。彼のパスに意思のないパスはありません。無謀なチャレンジもありません。常に最善で最高のプレーを選択することができます。
実の弟!トルガン・アザールとは
エデン・アザール選手には実の弟であるトルガン・アザール選手がいます。兄のエデン・アザール選手同様チェルシーに所属したこともあり、比較の対象とされてきました。どの世界でも兄弟同士の比較は、本人たちにとって辛いものがありますよね。
そんな状況下においては、トルガン・アザール選手もいまひとつブレイクすることができず、レンタル移籍を経験。2015-16からはボルシア・メンヒェングラートバッハ(以下、ボルシアMG)に移籍しました。
トルガン・アザール選手もドリブルを得意としていますが、エデン・アザール選手にはスピードで劣ります。ただ、サイドよりは中央で張ることが得意で一瞬の隙をついたシュートやパスには光るものがあります。
このまま結果を出し続ければ、ビッグクラブの移籍やチェルシーへの復帰があってもおかしくはないでしょう。いつか兄弟での共演も観てみたいものですね。