スペインで輝くフランス人アントワーヌ・グリーズマン
アントワーヌ・グリーズマン選手はスペインリーガのアトレティコ・マドリード(以下、アトレティコ)で活躍するFWだ。トップの位置でプレーすることが多いだが、スピードとテクニックがあるため、サイドでの起用や中央に流れてのプレーも可能だ。
かつてはレアル・ソシエダのユースを経験し、18歳でリーガデビュー。初先発で初得点を挙げるなどスタメンを確保し、179試合で49得点と活躍した。
2014−15シーズンからはアトレティコへとステップアップし、最初のシーズンから22得点を挙げ、ここでもチームに欠かせない選手となる。
元々身体が小さかったらしく、いくつもの入団テストに落ちていたグリーズマン選手だが、レアル・ソシエダに加入以降はフィジカルよりもテクニック重視のリーガにフィット。異国の地で世界最高峰の選手の一人に成長した。
パワー×スピード×決定力
グリーズマン選手は「パワー×スピード×決定力」の攻撃に必要な3拍子がしっかりと揃った選手だ。ボールを持ち、前を向いた時のトップスピードには目を見張るものがある。ドリブルコースの見極めが素晴らしく、あっという間にゴール前へ移動。足を振り抜けば重く速いシュートが飛んでいくという怪物のような選手だ。
2016−17シーズンになってからはミドルシュートにも磨きをかけ、19節のアスレティック・ビルバオ戦では距離25m超えの無回転ミドルシュートを披露してくれた。
リーガではFCバルセロナのリオネル・メッシ選手、レアル・マドリードCFのクリスティアーノ・ロナウド選手、そしてアトレティコ・マドリードのアントワーヌ・グリーズマン選手がそれぞれのエースとして君臨している。しかし、アントワーヌ・グリーズマン選手は1991年生まれで前述の2名よりも5歳以上若いだ。まだまだリーガで圧巻のプレーをみせてくれるのではないだろうか。
チョリスモとグリーズマンの守備貢献
2011−12シーズン以降のアトレティコを指揮しているのが、同クラブやインテル・ナツィオナーレミラノ、アルゼンチン代表として活躍したディエゴ・シメオネ監督だ。愛称を「チョロ」という。現役時代には守備的MFとして豊富な運動量で中盤を支配していた。
そんな彼がアトレティコで掲げているのが「シメオネ主義」、通称「チョリスモ」と呼ばれるスタイルだ。チョリスモは選手に徹底した守備貢献とカウンターだ。相手がボールを持てばチーム一体となり、すぐさまボールを奪取。その際には多少のファウルも恐れない。そしてボールを奪うと、中盤のコケ選手やサウール選手など戦術眼に優れた選手が前線にボールを供給。グリーズマン選手らが得点を挙げていく。
このチョリスモにおいては、FWであろうと前線からの激しいプレッシングを求められる。前線の選手が圧をかけることにより、ロングフィードやショートパスには綻びが生じるから、結果としてボールを奪える確率が高まる。この方針に従わない選手は存在を許されない。
シメオネ監督によってステップアップを遂げたグリーズマン選手は、攻守でよく走る。攻撃で影響力を持つ選手は、スタミナを節約しておきたいため守備の為に走ることを嫌がる傾向にある。監督もそのことを承知しており、特例を認める場合もある。クリスティアーノ・ロナウド選手がその代表格かもしれない。
アトレティコがボールを奪われた時には、ぜひグリーズマン選手の動き出しを観察してみてほしい。きっと激しくプレスを開始し、その直後にはアトレティコのカウンターが始まっているはずだ。アトレティコはシメオネによって、ポジティブトランジション(攻→守への切り替え)とネガティブトランジション(守→攻への切り替え)がはっきりした粘り強いクラブになった。
憧れのアイドル!デイヴィッド・ベッカム
「僕のアイドルはデイヴィッド・ベッカム」、グリーズマン選手はかねてよりベッカム選手を尊敬していることを公にしている。
アトレティコやフランス代表で着用しているのは、ベッカム選手が使用していたのと同じ背番号7。特にベッカム選手が所属していたマンチェスター・ユナイテッド(以下、ユナイテッド)での7番には格別の意味がある。(※後述)
さらにはベッカム選手同様、グリーズマン選手は長袖ユニフォームの着用を心がけている。
スペイン(マドリード)の夏はとても暑いことで知られ、夏の最高気温は40度を超えることもある。日本ほどジメジメとした暑さではないにせよ、長袖のユニフォームはやはり暑そうだ。
しかし、グリーズマン選手は絶対に背番号7の長袖ユニフォーム!とことんベッカム選手を愛してやまない。
ユナイテッド移籍の噂は現実になるのか
グリーズマン選手はかねてよりユナイテッドへの移籍が噂されている。2016年夏の移籍で120億円をポグバに投資したユナイテッドは、それでもなおクラブの象徴となる選手の獲得を止めはしない。確かにリーグ優勝ならまだしもCLを本気で獲りにいくのであればワールドクラスの選手が3人は欲しいところ。
そのうちの一人がポグバ選手、一人が去就の不確かなイブラヒモヴィッチ選手、そして最後がグリーズマン選手となるのだろうか。
グリーズマン選手は移籍の噂に対して否定。「クラブ、チームメイト、マドリードの街にも満足している」という旨の発言を繰り返している。
だが実際はどうだろうか。前項でお話したユナイテッドが「アイドルであるベッカムの古巣」であることや、現在ユナイテッドの空き番号である「背番号7」、これらの条件を加味すれば移籍の可能性はゼロではないだろう。
ユナイテッドは豊富な資金を持っているし、110億円ほどと目されるグリーズマン選手の獲得資金を用意できないことはないだろう。
現在(2016−17シーズン)のユナイテッドの前線には、イブラヒモヴィッチ選手やアントニー・マルシャル選手、ヘンリク・ムヒタリアン選手、マーカス・ラッシュフォード選手らがいる。イブラヒモヴィッチ選手のポジションを奪うのは難しいかもしれないが、彼もキャリア終盤なので将来的にポジションを奪えなくも無いだろう。ヘンリク・ムヒタリアン選手はモウリーニョ監督の下で、いまひとつ定位置を確保できていないし、マルシャル選手やラッシュフォード選手はまだまだ若手。グリーズマン選手であればスタメン確保は間違いないだ。
ユナイテッドの背番号7は「栄光の7番」として有名だ。エリック・カントナ氏やベッカム選手、クリスティアーノ・ロナウド選手ら実力者が背負ってきた番号だ。
この番号をユナイテッドで背負うグリーズマン選手が観られる時は、もうすぐそこまで近付いているのかもしれない。