ファーガソン監督がマンチェスター・ユナイテッドに残した功績
アレックス・ファーガソン監督は1986年の就任以降、実に27年間の長きにわたってマンチェスター・ユナイテッドを率いた名監督です。
ウェールズ訛りに赤い鼻、怒りを爆発させる様子がたびたびメディアに取り上げられ、「鬼軍曹」のような扱いを受けていましたが、サッカーにかける情熱やひたむきさ、ストレートな言動を支持したファンは世界中に存在します。
ファーガソン監督の理念は「成功の第一歩は若手の育成」というもの。その公言通り、高額な選手補強は控えめに、ライアン・ギグス選手、ポール・スコールズ選手、ガリーとフィルのネヴィル兄弟、デビッド・ベッカム選手といった若手を超一流選手に育て上げました。
何よりも規律を重んじ、日頃から全力を尽くすことと献身的な姿勢を求め、チームが一丸となるよう努めました。それはリーグやカップ戦などの戦績にも劣らない重大な功績と言えるでしょう。
世界中が驚愕した退任劇、迷走を始めるユナイテッド
マンチェスター・ユナイテッドで前人未踏の記録を築き上げてきたアレックス・ファーガソン監督は、2012-13シーズンのプレミアリーグを制覇した後、チームからの退任と監督業引退を発表。世界中がこのニュースに驚愕します。ただ、人生の大半をサッカーに捧げ、誰にも負けない情熱でユナイテッドを常勝チームに育てたファーガソン監督もこの年で72歳。健康面を危惧する声もたびたび聞かれていました。
後任には、エバートンで長らく指揮を執っていたデイビッド・モイーズ監督が就任。しかしこの招聘には懐疑的な目を向けるファンも多く、モイーズ監督は就任初日からファーガソン監督との比較が運命付けられます。これがユナイテッド迷走の始まりです。
短命に終わる新監督、ファーガソン監督が残した理念の崩壊
デイビッド・モイーズ監督は6年契約のうちわずか10ヶ月で解任の憂き目に遭います。これにはさまざまな意見が飛び交いましたが、中堅クラブ特有の「負けないための戦い方」をユナイテッドに持ち込み、実力ある選手たちになじめなかったという見方が多いようです。
いくつかの記録的敗戦が重なり、ファンの支持を得られなかったことも理由でしょう。いずれにしても、モイーズ監督の短期政権でユナイテッドの迷走は加速していきます。
2014-15シーズンからは前オランダ代表監督のルイ・ファン・ハール氏が招聘されました。世界の強豪チームを率いてきた実績のあるファン・ハール監督ですが、2年の在籍期間で目立ったのは華々しい補強とそれに費やした費用です。
特に昨シーズンの開幕前には260億円をつぎ込んでアンヘル・ディ・マリア選手やルーク・ショー選手、アンデル・エレーラ選手といった大型補強を敢行しますが、結果が伴わず解任となりました。
2016-2017シーズン。再建を託された「スペシャル・ワン」
今シーズンの開幕前、マンチェスター・ユナイテッドの指揮官にはジョゼ・モウリーニョ監督が就任しました。ポルト、チェルシー、インテル、レアル・マドリードでリーグ戦やチャンピオンズリーグを制してきた「スペシャル・ワン」の招聘です。
補強面では世界で五指に入るストライカーのズラタン・イブラヒモビッチ選手、名門ユベントスで随一の存在となっていたポール・ポグバ選手などを獲得し、ユナイテッド再建が託されました。
この3年にわたるスター選手の獲得、伴って放出されたユース出身選手の図式を見ると、かつてファーガソン監督が提唱した理念は風化しつつあります。しかし、覇権奪回の至上命題を受け、ユナイテッドはもはや待ったなしの状況となっているのです。
今シーズンのマンチェスター・ユナイテッドが払拭すべき課題とは
ファーガソン監督の退任から3年、ユナイテッドが獲得したトロフィーはFAカップとコミュニティシールドの各1回のみです。混迷を極め、メディアやファンから多くのバッシングを受けてきたチームは、かつての自信を失った状態といえるでしょう。長いシーズンを戦う上で自信を保てなくなるのは大きなハンデです。
新加入ながら百戦錬磨の経験を持つイブラヒモビッチ選手やベテランのマイケル・キャリック選手、主将のウェイン・ルーニー選手の統率力が期待されます。モウリーニョ監督が採用する戦術をいち早く浸透させ、相手が脅威に感じるかつての姿を取り戻せば、屈辱にまみれた前3シーズンを過去のものとできるはずです。
まとめ
プレミアリーグ2016-2017シーズンも第14節を消化、マンチェスターユナイテッドは5勝6分3敗の6位と勝ち切れない試合が続いています。しかし良いニュースもあり、新加入選手がいずれも一定の活躍を見せているのはシーズン後半に向けた好材料ではないでしょうか。
モウリーニョ監督の采配にも冴えが出ており、これからの逆襲が期待できます。