横浜FMを優勝に導いたポステコグルー監督
セルティック所属の日本代表FW古橋亨梧が好調だ。
今夏、J1神戸からグラスゴーの名門にわたった男は、初のヨーロッパの舞台でも自らの力をいかんなく発揮。ここまで公式戦18試合出場13ゴールと大暴れだ。現在W杯最終予選で苦しむ日本代表の救世主としても期待される同選手だが、自分に合ったクラブを移籍先に選べたことがここまでの飛躍の最大の要因だろう。
現在、セルティックを率いているのが、オーストラリア人のアンジェ・ポステコグルー監督だ。母国クラブから指導者のキャリアをスタートさせた同監督は、2013年からはオーストラリア代表監督として日本代表の前にも立ちはだかった。
2015年に地元で開催されたアジアカップで見事優勝を果たして名声を高めると、2018年からは横浜F・マリノスの監督に就任。翌年には優勝を果たし、ここでも名将としての価値を示した。
当時から対戦相手として古橋のことを見ている同監督。日本人の特徴をよく知る監督の存在が、同選手を1年目からセルティックパークのアイドルに押し上げたと言えるだろう。
今冬にもプレミアリーグ移籍?
また、スコットランド・リーグの特異なリーグ情勢も、その持ち味を発揮する土壌となっている。同リーグはグラスゴーに本拠地を置くセルティックとレンジャーズがタイトルを独占しており、最後に2強の牙城を崩した事例は84-85シーズンのアバディーン優勝まで遡らなければならない。
つまり、セルティックと対戦するクラブは守りを固めて試合に臨んでくる。これを崩すのに抜群のスピードを持った古橋のような選手は有効なカードだ。チームとしても彼を生かすような戦い方を共有できるようになり、これだけの得点が生まれるようになった。
ここまでの活躍を見せるストライカーを、他のクラブも放っておかないだろう。すでに今冬の移籍市場でプレミアリーグ移籍か、という気の早い報道もある。もちろん、個のレベルアップという点において、レンジャーズとの「オールドファーム」で全てが決するリーグより、競争力の高いレベルで自分を磨きたいと考えるのは選手としては当然の志だ。
来秋のカタールW杯見据えるべき
しかしながら今すぐの移籍は時期尚早の感が否めない。
来年11月にカタールW杯が開幕する。23人枠に選ばれるために1年間、各選手のアピールが続くわけだが、シーズン途中の移籍は非常に難しい。これには名選手たちも苦しんできた。リスクのあるこの時期ではなく、キャンプから合流できる来シーズン開幕前まで待つべきではないだろうか。
そのためにも現在2位と最大のライバル、レンジャーズの後塵を拝しているリーグ戦での逆転優勝、そして、ヨーロッパリーグでのさらなる躍進を置き土産にしたいところだ。
ファンは古橋にすっかり夢中だが、おそらく別れの日は近い。しかし、それは同選手のキャリアのさらなる飛躍、そして、日本代表の新エース誕生の日を意味する。
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