レアル元会長が落命、バルサは財政難で選手と賃下げ交渉
東京五輪が新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)により延期されることが決まった。当初はアジアで感染者が増えたがその後、欧州で大きな震源が次々と発生している。
欧州サッカーは、ほぼ完全に停止状態になっており、選手や関係者にも感染が広がっている。レアル・マドリードでは、歴代の会長2名が感染したことが確認された。マルティン・アルバレス氏(72歳)は深刻な状態でマドリード市内の病院に入院。ロレンソ・サンツ氏(享年76歳)は3月21日、帰らぬ人となった。
スペインリーグは、無期限延期となっており、いつシーズンの全試合を終えることが出来るのか、全く先が見えない状況になっている。
もう一つのビッグクラブ、FCバルセロナは、試合が行われないことで生じる財政的な損失を緩和させるために、選手たちと給与の引き下げ交渉を始めている。
両クラブの対戦は、「エル・クラシコ」と呼ばれ、非常に盛り上がるが、サンティアゴ・ベルナベウとカンプ・ノウのスタンドは静寂に包まれたままだ。
対立が先鋭化するスペイン中央政府とカタルーニャ州政府
スペイン国内ひいてはリーガに活気を取り戻すためにも、新型コロナウイルスへの効果的な対策が求められるが、その対応をめぐってレアル・マドリードの本拠地マドリードにあるスペイン中央政府とFCバルセロナがホームとするカタルーニャ州の自治政府が対立している。
レアル・マドリードとFCバルセロナの対立の構図は、ピッチの中だけでなく、スペインとカタルーニャの間に横たわる歴史的な溝が根底にあるが、この対立は「エル・クラシコ」にも大きく影響しそうだ。
カタルーニャ州政府のキム・トーラ首相は、感染者が爆発的に増える中、3月上旬にカタルーニャ州内への交通封鎖を提案したが、中央政府は、カタルーニャ州単独での封鎖を認めなかった。その後、中央政府は3月18日からスペインの国境を封鎖することを発表した。
これに先立ち、中央政府のペドロ・サンチェス首相は3月14日、国家非常事態を宣言し、店舗の営業や国民の外出を制限する措置を発動。健康と安全について、中央政府の管理下に置くとした。これに伴い「皆が主義や違いを忘れないといけない。重要なことは、ウイルスに打ち勝ち、国民の健康を守ることだ」と、カタルーニャ州を意識したともとれる発言を行った。
独立意識の強いカタルーニャ州の指導者たちは、中央政府の権力強化に反対したが、その矢先に医療現場で両政府の衝突が発生。バルセロナの大きな感染被害を受けた地区にある病院への医療物資の配送が中央政府に妨害され、少なくともマスク4,000枚や保護グラスがスペイン国家警察に押収されたという。
国家警察当局は業者に連絡し、物資がどこに納入されるかも調査しているという。
カタルーニャ州政府のアルバ・ベルゲス保健大臣は3月18日「迅速に最も必要な場所に送らなければならないのに、中央集権化し、注文品を阻止するのは全く理解出来ない」と反発を示した。
カタルーニャは、マドリード地域に次いで、2番目に感染者数が多く、バルセロナの病院では、物資不足から白衣の替わりにゴミ袋を纏っている医療職員もいる。病床数も足りず、閉鎖中のホテルを仮の医療施設として利用しているが、医療現場はどこも野戦病院と化しており、FCバルセロナも練習施設の提供を申し出ているほどだ。
設備が足りずに、重症でも適切な対処が間に合わず、落命者が続出している。
スペイン保健省は、地方で物資が止められているという事実を否定し、可能な限りフェアに分配していると述べ、ペドロ・サンチェス首相は、中央政府による管理が最も効率的だと強調する。
更なる責任背負う選手、凄み増すクラシコの歓声が次に轟くのはいつか
この緊急事態にあっても一枚岩になれないスペインとカタルーニャ。その溝は、想像以上に根が深い。
2019年10月の「エル・クラシコ」は独立をめぐる政治対立により、危険と判断され延期された。私達が疫病を克服し平時に戻った時、対立の記憶が積み上げられた「エル・クラシコ」に開催の判断は下されるのか。
クラシコの歓声が次に轟くのはいつになるのだろうか。
新型コロナウイルス感染拡大による影響まとめ