優勝争いは鹿島、FC東京、横浜FMが中心
明治安田生命J1リーグの優勝争いは残り5節。いよいよ佳境に入った。
シーズン序盤から快調に首位を走り、悲願の初優勝を目指すFC東京は、28節で3シーズンぶり9度目の優勝を狙う鹿島に首位を明け渡した。しかし29節で神戸を下し、鹿島が松本と引き分けに終わったため、得失点差により順位は2位で変わらないが、勝点では並んだ。
また、優勝すれば15年ぶり4度目となる横浜FMは、湘南を破り勝点差1で両チームを追う。清水に勝って勝点50の広島、札幌を破り勝点49のC大阪、G大阪と引き分けて勝点48となった川崎Fは残り試合から考えると逆転は厳しいが、数字の上では勝点43の大分を含め優勝争いに踏みとどまっている。
2017年川崎Fが初優勝 鹿島はまさかのV逸
J1リーグのタイトルを巡っては毎年、シーズンの終盤にドラマが起きる。
とりわけ2回戦総当たり制に戻った2017年は、鹿島にとって悪夢のような幕切れとなった。
この年、連覇を狙った鹿島だったが、不調に陥り石井正忠監督を解任。後任の大岩剛監督がチームを建て直し、2位に勝点5の差をつけて首位で迎えた30節、横浜FMと敵地で対戦した。
優勝のチャンスをわずかに残していた横浜FMは、立ち上がり早々に伊藤翔(現・鹿島)がコーナーキック(CK)を頭で合わせ先制する。さらに14分には鹿島・植田直通(現・セルクル・ブルージュ)の不用意なボール処理を天野純(現・ロケレン)が突いて2点目をあげる。鹿島は、前半のロスタイムに山本脩斗がルーズボールへ反応し、一矢を報い1-2で前半を折り返した。すると66分に植田がCKを頭で合わせる汚名返上のゴールで同点に追いつく。首位固めが見えてきた鹿島だったが、74分、途中出場の遠藤渓太に追加点を奪われ、痛い敗戦を喫してしまう。
一方、初優勝に望みをつなぐ川崎Fが広島を下し、勝点差2で残り4節となった。この30節の結果が優勝争いに大きく影響した。

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31節で鹿島は札幌を下し、川崎Fは柏と引き分けて勝点差は再び4に。この時点でC大阪、柏、横浜FMの優勝の可能性は消え、V争いは鹿島と川崎Fに絞られた。
32節は両チームとも勝利をものにし、勝点差は4のまま。鹿島は33節で柏に勝てば、残り1試合を残して優勝という状況になった。
しかし、鹿島は33節、ホームで柏と痛恨のスコアレスドロー。川崎Fは敵地で浦和と対戦、前半14分、家長昭博のクロスを右足で合わせた小林悠の得点を守り切り、勝点差2で最終節を迎えることに。
最終節で鹿島が磐田を破れば、川崎Fの結果に関わらず鹿島が2年連続で優勝となるのだが、この時点で得失点差は鹿島が22、川崎Fが34。川崎が勝った場合、鹿島は引き分けでは勝点で並んでもV逸となるため、優勝にはこの試合に勝つしか道はなかった。
すべてのゲームが同時刻にキックオフ。
鹿島は敵地で磐田相手になかなか得点を奪うことができない。一方の川崎は初優勝のために鹿島の動向をうかがいつつ、ともかく本拠地等々力で大宮に勝たなければならない。開始早々に阿部浩之の左足で先制すると、前半ロスタイムに家長のクロスに小林が合わせ2点目を奪う。60分には再び家長のクロスを小林悠が右足で合わせ勝利を確実にすると、もう川崎Fは止まらない。81分に小林悠がPKでハットトリック達成、後半ロスタイムには長谷川竜也が5点目をあげトドメを刺した。
鹿島はスコアレスドロー。川崎Fのイレブンは試合終了と同時にベンチから飛び出してきた選手やスタッフを見て、優勝を決めたことを知った。鬼木達監督は就任1年目での初戴冠だった。鹿島はあと一歩のところで足元をすくわれてしまった。
2018年は2強に絞られるも広島が自滅
18年は29節終了時点で、7位のチームまで優勝の可能性を残していた。連覇を狙う川崎Fが勝ち点57、首位を独走しながら、26節から4戦勝ちなしで首位から陥落した広島が勝ち点56で追う展開で、残り5試合となる30節を迎えた。30節を終えて優勝の行方が川崎F、広島の2チームに絞られたが、さらに広島は連敗。32節で川崎Fも星を落としたものの、あと2節を残して川崎Fが連覇を決めた。し烈な優勝争いが期待されたが、広島の自滅であっけない幕切れとなった。

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大混戦の2019年、上位チーム残り5節の相手は?
さて、19年はどうなるのだろうか。鹿島には17年の苦い思い出がある。FC東京には初優勝の重圧がかかるだろう。
鹿島が11月1日の30節で対戦するのは浦和。浦和は今季Jリーグでは下位に沈むも、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)では10月の準決勝2試合を勝ち、決勝進出を決めた。何より浦和にとって鹿島は宿敵であり、鹿島には、その後にも川崎F、広島と簡単ではない相手が待ち受ける。特に川崎には通算成績で負け越している。
FC東京は大分のほか、もともと得意ではない磐田、そして湘南との対戦を残す。磐田と湘南はいずれもJ残留へ必死の相手で油断はできない。また、浦和は大幅に負け越している苦手チームのひとつだ。
横浜FMの残り5戦の相手で、対戦成績で大きく勝ち越しているのは札幌だけ。しかし、今季の敵地での戦いは完敗だった。川崎Fと広島は30節で直接対決する。優勝への望みをつなぐサバイバルマッチとなるだろう。

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上位3チームの直接対決は最終節の横浜FM対FC東京のみ。
選手もサポーターもライバルチームの結果に一喜一憂することになる。
今年はどんなドラマが待ち受けているのか。Jリーグの終盤戦から目が離せない。