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ストライカー鈴木孝司はC大阪のラストピース 30歳のJ1ルーキーは花開くか

2019 9/10 11:00中山亮
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30歳の点取り屋がJ1初ゴール

9月2日の明治安田生命J1リーグ第25節セレッソ大阪対川崎フロンターレの一戦は、2-1でセレッソ大阪が勝利。勝負を決めたのは今夏から加入した鈴木孝司だ。

大学卒業後8年間のキャリアでJ2、J3、JFLを経験し、それぞれ15点、31点、34点を稼いできた点取り屋がJ1に刻んだ初ゴールが決勝点となった。

記念すべき瞬間は、明治安田生命J1リーグ第25節セレッソ大阪対川崎フロンターレ戦での後半開始早々54分にやってきた。

水沼からのクロスが川崎Fの下田に当たり、右サイドでレアンドロ・デサバトが縦に抜け出す形になる。このタイミングで鈴木孝司はニアポストへと走り出していた。そしてゴールエリアの手前、レアンドロ・デサバトがクロスを上げる直前に急停止。

この動きで自分の周りにスペースを作り出すと、上がってきたクロスを狙いすましたヘディングシュート。チョン・ソンリョンの守る川崎Fゴールを揺らした。

これがプロ生活8年目、30歳にして初めてJ1でプレーするチャンスを掴んだ鈴木孝司のJ1初ゴールとなった。

ストライカーのゴール

J1初ゴールは鈴木孝司がこれまで積み重ねたキャリアが凝縮された様なゴールだった。

このゴールの最大のポイントは「ストップ」。

「最初は、もっと相手の前に入ろうと思ったのですが、そこまで入るとゴールの角度がなかったのでDFにつかまると思いました。あとは、思ったよりクロスを上げる時間もあったので、1度止まったというか、入り過ぎないようにポジショニングを取れたことが良かったと思います」(まいどセレッソ J1 第25節 川崎F戦|試合後のセレッソ選手コメント)

試合後にそう振り返っているように、この止まるというプレーは偶然やヒラメキではない。冷静に状況判断した結果である。

鈴木孝司はこれまでの町田や琉球で重ねてきた経験を元に「止まる」ことで、味方からのパスを受け、ゴールを決める確率の高いシュートを打つために必要な時間とスペースを作り出すことができることを知っていたのだ。

足元の技術についての上手/下手ではなく、またスピードや身体の強さといった身体能力でもない。ゴールを決めるために必要なことを知っている。まさにストライカーとしてのプレーだった。

ロティーナ監督が求めたフィニッシャーとして花開くか

30歳の鈴木孝司のこれまでのキャリアを振り返ると、J2以下では確実に結果を残してきた選手の1人である。

法政大学から町田に加入した1年目こそ無得点に終わりチームはJFL降格(J3創設前のため)となったが、2013年のJFLではレギュラーポジションを掴みゴールを量産。J3創設1年目の2014年にはJ3初代得点王にも輝き、2015年にはJ2昇格。2016年には町田のエースとして当時J2だったC大阪と対戦し2得点を記録。2013年から2016年まではカテゴリを上げながらも毎年2桁得点を決めており、ボックス内で勝負できるJ2でも注目FWの1人だった。

しかし2016年途中にアキレス腱断裂の大怪我で長期離脱。さらに復帰直前に再断裂という悲劇にも見舞われ2018年シーズン終了後に町田を退団。怪我の影響で以前の様に得点を挙げられなくなっていた。

しかしトライアウトを経て今年1月に加入した琉球で復活。琉球での環境がフィットしたのか以前の鋭さを取り戻し8月までで15得点を記録しシーズン前半戦では一時J2得点ランクのトップに。 その活躍が認められC大阪からのオファーが舞い込んだ。

C大阪が鈴木孝司にオファーした理由はわかりやすい。得点力に問題を抱えているが、チーム内得点王のブルーノ・メンデスがスペースで勝負するタイプであり奥埜は本来中盤の選手。C大阪にはボックス内で勝負できるストライカーがいなかったからだ。

ボックス内にボールを運ぶ形は出来てきた。あと足りないのはフィニッシャー。鈴木孝司はロティーナ監督が求めるラストピースとなり得る選手なのだ。