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ジュビロ磐田完敗も攻守に見えた設計図 フベロ新監督はJ1残留に導くことができるか

2019 8/29 06:00中山亮
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フベロ磐田の初陣、C大阪戦は完敗

2019年のJリーグも終盤に向かおうとしている第23節終了後、最下位に沈むジュビロ磐田はフェルナンド・フベロ新監督の就任を発表。早速第24節のC大阪戦から指揮をとった。 J1残留の土俵際まで追い込まれている磐田はC大阪戦でどういった戦いをみせたのか。

先に結果を言っておくと0-2で敗戦。前半はC大阪のパスワークに翻弄され、後半は押し込むことができたものの堅守を崩すことができなかった。

これで5戦未勝利(1分4敗)で勝ち点18のまま。16位鳥栖との勝ち点差は6のまま広がらなかったが、17位松本との勝ち点差は5に広がり、残留が確定する15位にいる仙台との勝ち点差は10に広がった。

Jリーグでは「残り試合数=勝ち点差」までがなんとか逆転可能なラインだと言われているが、残り試合数は10。ちょうど残留圏となる15位仙台との勝ち点差と並び、次節の結果次第では16位鳥栖との勝ち点差もこのラインに並んでしまう可能性がある。もはや土俵際と言っても良いだろう。

しかしまだJ1残留の可能性が潰えたわけではない。僅かな期間で初戦を迎えたフベロ新監督のチームからはポジティブな要素も感じさせた。

組織的なチームを作ろうとしているフベロ監督

この試合の磐田は4-4-2の布陣を敷いた。フベロ監督が指導者としてのキャリアを築いたパラグアイでも4-4-2を中心としたチームを作っているので、おそらく今後の磐田の定番フォーメーションとなるのだろう。

実際の戦い方だが、守備で特徴的だったのはまず4-4-2の形で守備ブロックをセットするということ。前半の立ち上がりはFWの山田大記を中心にハイプレスをしかける場面もあったが、プレスに行く前にはかならず4-4-2でセット。決して闇雲にボールを追うだけの守備ではなさそうだ。

前線からプレスに行くという守備は攻撃的でチームに勢いがあるように見えるが、実際には前に出て行く分背後にスペースを開けてしまい、行けば行くほどピンチになりかねない。

残留争いに飲み込まれてしまうと選手も何とかしようと普段以上に意識してしまい、それが空回りしてこうした落とし穴にハマってしまうこともあるのだが、しっかりと守備ブロックを形成していた初戦を見る限りその心配はなさそうだ。

この試合ではC大阪のパスワークに翻弄され組織的な守備をすることができなかったが、これは対戦相手とタイミングが悪かった。C大阪は対戦相手を見て柔軟な戦い方をしてくる、新監督が就任して1週間に満たない状態で当たるにはJリーグで最も難しいチームである。

他のチームはもう少し特徴がハッキリしているので対策を立てやすいはずだ。

アダイウトンの強みが生きる、幅を使った攻撃

攻撃で特徴的だったのが、左サイドの大外にアダイウトンを張らせていたことだ。アダイウトンの突破力、突進力はJ1トップクラス。間違いなく磐田のストロングポイントである。

そのアダイウトンが極端に左に寄ることで、比較的ボールを受けやすくなり、中央から離れたことで得意の1対1も仕掛けやすくなっていた。そして、相手がアダイウトンに食いついたところでその内側に左SBの秋山を走らせるプレーは、今後も攻撃の選択肢になりそうだ。

前半は機能していなかった右サイドも後半から荒木大吾を投入することで改善。C大阪を押し込むところまでは持っていった。

残念ながらJ1最小失点を誇るC大阪の堅守の前に得点という結果は出なかったが、一か八かではない、フベロ磐田の設計図が薄っすらとではあるが見えた。

J1残留へ時間との戦い

フベロ監督の初陣は内容を見ると決してネガティブではなかった。個人のプレーから生まれるチャンスに頼らず、組織的なチームをつくろうとするポジティブな要素の方が多く、今後に期待をもたせる試合だった。

しかし結果としては敗戦。ここで勝ち点を積めなかったことは痛い。残り10試合。磐田に残された時間は決して多くない。その中でチームの精度をどこまで高めることができるか。

磐田のJ1残留は新指揮官の双肩にかかっている。