「ハンド」基準が明確に
今年の3月に国際サッカー評議会(IFAB)が発表した競技規則改訂がいよいよ8月からJリーグでも運用されることとなる。
今回の改正で最も大きなものは「ハンド」に関する部分だろう。
これまでハンドの反則となっていたのは「手または腕を用いて意図的にボールに触れる行為」。つまりボールが手や腕にあたったかどうかではなく、ボールを手や腕を使って意図的にプレーしたかどうかが基準だった。
しかし以前の基準のポイントとなる「意図的かどうか」という部分は判断が非常に難しい。そこで今回の改正では「意図的」とするだけでなく、その基準が明文化されることになった。
手や腕に当たることで生まれた得点は認めない
まず、競技者が次のことを行った場合、反則となる。と明文化されたのは
「手や腕をボールの方向に動かす場合を含め、手や腕を用いて意図的にボールに触れる」
「ボールが手や腕に触れた後にボールを保持またはコントロールして、次のことを行う」
・相手競技者のゴールに得点する
・得点の機会を作り出す
「ゴールキーパーを含め、偶発的であっても、手や腕から相手チームのゴールに直接得点する」
注目は2つ目、3つ目。手や腕にあたったボールがそのまま得点につながった場合や、得点機会につながった場合は、意図的かどうかは問題ではなく、たとえ偶発的であってもハンドの反則となることが記された。
具体的に説明すると、相手チームがクリアしようとしているところにFWの選手がアプローチをかける。そしてこのクリアボールがFWの手や腕に当たってゴールネットを揺らした。(もしくはゴール前で偶然味方につながった)
この場合、以前のルールであればアプローチをかけたときのFWが両手を大きく広げていればハンドだったが、手や腕は通常の位置であり偶発的にボールが手や腕にあたった場合は、意図的ではないということで原則としてはハンドにならなかった。
しかし今回のルール改正以降は、手や腕にボールが当たったことで生まれたゴールやチャンスにつながった場合は即反則。手や腕に当たることで生まれた得点は一切認めないことになったのである。
ハンドの反則となるもの、反則とならないもの
そしてさらに、ハンドの反則となるもの、反則とならないものが具体的に明文化された。ハンドの反則となるのは以下の状態で手や腕にボールが当たった場合。
「手や腕を用いて競技者の体を不自然に大きくした。」
「競技者の手や腕が肩の位置以上の高さにある。(競技者が意図的にボールをプレーしたのち、ボールがその競技者の手や腕に触れた場合を除く)」
これまでは「未必の故意」という言葉で説明されていた、「ボールに向かって意図的に手や腕を動かしている訳ではないが、相手のプレーを制限するために手や腕にボールが当たることを期待して取っていた行為」を、故意かどうかではなく手や腕の位置を具体的な基準にしたのである。
さらにその中でも注目なのは、例外となった「競技者が意図的にボールをプレーしたのち、ボールがその競技者の手や腕に触れた場合」という部分。
これは例えばDFがシュートブロックに行き、自らの足や体でブロックしたボールがそのまま手や腕にあたった場合のことで、その場合は反則とならないと明文化された。
ハンドの反則とならないものとして明文化されたのは下記の4項目。
「競技者自身の頭または体(足を含む)から直接触れる」
「近くにいた別の競技者の頭または体(足を含む)から直接触れる」
「手や腕は体の近くにあるが、手や腕を用いて競技者の体を不自然に大きくしていない」
「競技者が倒れ、体を支えるための手や腕が体と地面の間にある。ただし、体から横または縦方向に伸ばされていない」
体を不自然に大きくせず、手や腕が肩の位置以下の高さであれば、偶発的にボールが手や腕にあたったとしても反則とならない。
そしてスライディングなどをしたときについた手や腕ににボールがあたったとしても反則ではないのである。
これまでのルールでは「意図」が判定の基準となっていたことで、難しいジャッジを下す場面もあったハンド。今回のルール改正ではかなり基準が整理された。
判定に対するストレスを軽減する意味でも、覚えておきたいところである。