序盤戦の成果と課題
シーズンのおよそ1/4を終えた第9節時点で3勝2分4敗。2015年以来4年ぶりのJ1を戦う松本山雅、2015年は第9節終了時点で2勝2分5敗だったことを考えると1勝だけだが上回っている。前回は最終的に7勝7分20敗で16位。当時16位は自動降格だったが、現在はプレーオフもある。
松本山雅の健闘を支えているのは堅守。平均失点はリーグ平均1.8を下回る平均1。複数失点も川崎F戦、FC東京戦の2度しかなく、得点を奪うことができれば少なくとも勝ち点1は取れる状態である。
しかし攻撃の方は少し心配な状態。6得点はリーグで3番目に少なく、1試合平均1点に満たない。
松本山雅のスタイル
リーグ平均のパス数494.3本/試合に対して200本近く少ない302.9本/試合。ボール支配率39.6%。この数字からわかるように松本のサッカーは、奪ったボールを手数をかけずに最前線へ送り込んでいくスタイルだ。
もちろんロングボールなので成功率は低い。しかし、松本が求めているのは何度前線にボールを届けることができるかであり、そこから何度チャンスを作ることができるか。精度の低さを数で補う。
そのために前線には190cmのレアンドロ・ペレイラや国内ナンバーワンのスピードスター前田大然を置いている。そして必然的にボールを失う回数が増えるので、後ろは5バックでカバーそのためタックル数はリーグトップの25.7回/試合を記録している。
ロングボールを武器に攻守において粘り強く高いインテンシティを持って戦うことが松本のスタイルなのだ。
完敗に終わった第9節FC東京戦
しかし、第9節のFC東京戦では強みをほとんど発揮できないまま敗戦となった。
FC東京は現在首位、もちろん強い。ただ、昨季序盤戦で4連勝中のFC東京を破ったのはロングボールを効果的に使う尹晶煥率いるC大阪だったことを考えると、ロングボールに強みがある松本は善戦できるのではないかという予想もあった。
なぜなら、ロングボールでFC東京の強みである前線からのプレッシングを回避できるかもしれないと考えられたからだ。
実際の試合では、久保建英にかなり手を焼いたものの松本の守備は健闘していた。ボールを持たれても、粘り強い守備で対応した。しかし、ボールを奪ってもそこから前線にボールを届けることができない。
FC東京に攻守の切り替え速度で完全に上回られてしまい、ロングボールを満足に蹴らせてもらえなかった。それに、奪ったボールを攻撃へとつなげようとしたところですぐさまボールを奪い返されてしまっていたのである。
この日喫した2失点共にボールを奪い、攻撃に出ようとしたところで再びボールを奪い返されたところから始まっていた。
松本の強みである高いインテンシティを発揮できず、逆にFC東京のインテンシティに飲み込まれてしまったのだ。
さらに突き詰めたい松本スタイル
首位FC東京相手とはいえ、堅守さを武器に戦ってきた松本にとっては、強みで上回られてしまったことは痛手だ。J1での予算規模は下から数えたほうが早く、個の能力で上回ることが難しいチームであるからこそ、悲願のJ1残留のためには対策が必要となるだろう。
夏場になるとボール非保持型のチームは疲労の蓄積が早くなり、厳しい戦いを要求される。そんな夏場に備える意味でも、今のうちに松本のスタイルをさらに徹底させたいところだ。
※記事中の成績は第9節終了時点