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浦和、安定感を欠くも勝負強く上位浮上 得失点差1で5勝2分2敗の5位

2019 5/2 15:00中山亮
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苦しいスタートも上位に浮上した浦和レッズ

浦和レッズが順位を5位まで上げてきた。シーズンのおよそ1/4にあたる第9節終了時点のスタッツをみると、ボール保持率48.1%。シュート数もリーグ平均の12.4本/試合を下回る10.6本。アタッキングサードプレー数、敵陣30mプレー数、ペナルティエリア内プレー数、パス数、ドリブル数、スルーパス数、クロス数と攻撃的な項目は軒並みリーグ平均を下回る結果を残している。

8得点7失点と得失点差でもわずかに得点が1を上回るに過ぎないのだが、すでに5勝を挙げている。

今季の試合を見る限り今季序盤の浦和はかなり苦戦していた。

そもそも今季開幕前には、横浜FMから山中亮輔、C大阪から杉本健勇という2人の日本代表選手に加え、柏からはロンドンオリンピック代表だった鈴木大輔などを獲得。さらにポルトガルの名門FCポルトからエヴェルトンを期限付き移籍で獲得したように久々に大型補強を敢行した。

昨季は後半戦で巻き返したものの5位に終わったことから、2シーズン目となるオリヴェイラ体制に万全のバックアップ体制を作り上げた。

しかし開幕直前のゼロックススーパーカップで川崎Fに完敗を喫すると、開幕戦となる仙台戦はスコアレスドロー。第2節の札幌戦では完敗を喫し、いざふたを開けてみると、勝てないどころか敵陣にボールを運ぶことすらままならない試合が続いていた。

ACLブリーラム戦、Jリーグ第3節の松本山雅戦でようやく勝利を挙げたものの、試合内容としては低調なもの。

オリヴェイラ監督は、長年浦和を率いたミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現札幌監督)の様に自らが理想とする戦術に選手を当てはめたり、落とし込んだりするタイプではなく、手持ちの戦力の最大能力を引き出すことを第一にチームを率いるタイプの監督だ。

そんなオリヴェイラ監督が、メンバーも布陣も試合ごとに変えていたのはその苦悩の表れだろう。最適解が見つからないのだ。

清水戦でも苦しみながら勝利

そんな浦和だが第9節の清水戦で勝利し3連勝、順位も5位にまで上げた。しかし、この清水戦も含めて未だチームの最適解が見つかったわけではない。

実際にこの試合でも、ボール保持率53%。パス数でも清水の566本に対して705本と上回ったのだが、ボールを保持していたのはほとんど低い位置。プレーエリアの比率でも、ディフェンシブサード35.5%、ミドルサード46.4%、アタッキングサード18.1%となっていたようにアタッキングサードのプレー比率がかなり低い。ペナルティエリア内でのプレー数も15回にとどまっている。

これが例えば相手にボールを持たせ、カウンターを狙っていたというなら納得のできる数字である。しかしこの試合のボール保持率で上回っていたのは浦和。もちろん大分のように戦術的狙いがあったわけでもない。要するに、ボールは持っていたが攻め込むことができていなかったのだ。

しかし、最終的に勝ったのは浦和。試合終盤にCKのこぼれ球からマウリシオが決め、さらに試合終了間際に興梠が追加点を決め2-0。苦しい内容だったが勝ち切ったのだ。

浦和、勝負強く5勝

清水戦のように低調なパフォーマンスだったにもかかわらず勝ち切ったのはこの試合が初めてではない。

今季2勝目となった第4節のC大阪戦ではC大阪に完全に試合をコントロールされ、さらにソウザのFKで先制を許した。しかし76分に入ったばかりの山中のFKに興梠が頭で合わせて同点に追いつくと、82分にはこちらも途中出場のマルティノスがペナルティエリア内で倒されPK。これを杉本が決め2-1で逆転勝利した。

試合の流れはC大阪がつかんでいたが、2度のセットプレーで浦和が逆転勝利を飾ったのだ。

このC大阪戦以降は、第6節の横浜FM戦で完敗を喫したものの、第5節のFC東京戦では試合終了間際に森脇のゴールで同点に追いつき、第7節のG大阪戦でも試合終盤のセットプレーで1-0の勝利。第8節の神戸戦ではボール保持率29%と全くボールを保持することができなかったが興梠のPKで1-0。安定感を欠き、試合内容も決して良いとは言えない中で勝負強さを見せている。

しかし、それだけでは、いかに強豪浦和とは言え、残り25節を戦い抜くことはできない。このまま上位を目指すためにも、一刻も早く最適解を見つけ安定感を取り戻す必要がある。

そんな中、昨季途中離脱するまでのわずか9試合で6得点を決めたファブリシオの復帰が近いことが明言された。ファブリシオが浦和の最適解へのラストピースとなる可能性も十分ある。無類の勝負強さに安定感を加えて浦和の大爆発を見せられるか。