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G大阪のアグレッシブなスタイルに落とし穴 消耗戦に耐え切れず勝負どころで失点頻発

2019 5/3 15:00中山亮
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アグレッシブなG大阪スタイル

「後半45分で見せたテンションを最初から見せれば、多分90分は持たない」

1-1の引き分けで終えたJ1第8節大分トリニータ戦終了後の宮本監督のコメントが現在のガンバ大阪を端的に表している。

約1/4に当たる第9節を終えて2勝1分6敗の15位。降格圏にこそ位置していないが昨季に続き今季も開幕から厳しい戦いが続く。

「ボールを保持しながら相手を圧倒し、アグレッシブにゴールを奪う」今季の新体制発表会で発表されたこのスタイルこそ今季のG大阪が目指す方向性だ。

そして第9節までのスタッツを見るとボール支配率こそ51.4%と平均を少し上回る程度となっているが、アタッキングサードプレー数は285.7回/試合でリーグ4位、敵陣30mプレー数も212.3回/試合でリーグ5位と高い位置でのプレーが多く、前方パス数も187.8本/試合でリーグ5位、シュート数14本/試合もリーグ6位。

すばやく攻め込み、敵陣でボールを保持しながらアグレッシブにゴールを目指そうとしていることが数字にも表れている。

このスタイルは、貪欲にゴールを狙うファン・ウィジョ、スピードアップした戦術の中でも技術を発揮できるアデミウソン、テクニックとハードワークを兼ね備えた倉田、小野瀬らからなるアタッカー陣とフィットするものなのだろう。 オフシーズンに韓国代表の活動もありハードな日程を過ごしたファン・ウィジョはまだ調子を上げきれていないが、第9節終了時点でリーグ4位の14得点は立派な数字だ。

消耗戦にてこずる中盤センター

一方で9試合でリーグワーストタイとなる19失点を許している。得点は奪えているが、それ以上に失点も重ねている状況だ。これはアグレッシブに戦うガンバ大阪のスタイルとは無関係ではない。

敵陣でボールを支配しようとするアグレッシブなガンバ大阪のスタイルは、言い換えると強度の高い状態がハイテンポで続くサッカーである。

そのためどうしても消耗戦となる傾向がある。西野監督時代からG大阪は得点も多いが、失点も多いという状況が続いているのはクラブとしてこのスタイルを目指しているからだろう。

しかし、消耗戦に耐えられるうちはいいが、耐えられなくなってくると途端に勝負どころでの失点が多くなってくる。G大阪の19失点のうち31分から前半終了までの失点が5、76分から試合終了までの失点が7と、どちらもリーグワーストである。最も消耗が激しくなる前半・後半の終了間際での失点が突出している。

消耗戦で特に厳しくなっているのが中盤のセンターだろう。10年近く遠藤や今野が中心となったまま変わっていない。もちろん2人のクオリティは今でもすばらしい。しかし、さすがにこれだけのベテラン選手に消耗戦を戦わせるというのは酷である。

2人に次いで出場機会が多いのは、まだ20歳の若手である。代わるだけのクオリティを発揮できていないのが現状だ。

大分戦では前半を5バックで耐える策に

この状況を表したのが冒頭で書いた宮本監督のコメント「後半45分で見せたテンションを最初から見せていれば、多分90分は持たない」である。

大分戦ではメンバーを入れ替える形で今季初めて3バックの布陣でスタートし、前半45分間は5-4-1の形で自陣のスペースを埋める戦い方を選択した。ボールは完全に大分に支配されたが、前半を0-0で進め、後半45分で勝負を仕掛ける狙いだったのだろう。実際には前半に失点してしまったのでプラン通りとはいかなかったが、後半は従来のアグレッシブなスタイルに変更し得点を奪い、1-1の同点に持ち込んだ。

宮本監督は「前半もったいないというところは、失点の部分はもったいないと思います。ただ、その45分(前半)がもったいないとは思わないです。」と、試合全体としては手応えを感じている。

しかし、この作戦は相手が大分だったこと、そしてG大阪が初めて見せた戦い方だからこそハマったという部分もあるため奇策に過ぎない。

現に9節のベガルタ仙台では、前半に攻め込まれながらも先制したが、その後に2点を奪われ逆転負けを喫した。

5月に入りこれから気温がどんどん上がっていくと強度の高いプレーを続けることがいよいよ厳しくなる。今がG大阪の大きな分かれ目となるかもしれない。