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平等な日本にビッグクラブは生まれるのか、理想は3クラブ

2019 4/21 11:00Takuya Nagata
サッカーボール,ⒸSPAIA
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Jが世界基準目指し改革推進

近年、Jリーグはさらなる高みを目指し、ビッグクラブを生み出す施策を繰り出している。国際競争力を高めるのが主な理由だ。

アジア最強だと信じられていたJクラブが、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)で、軒並み敗退するシーズンが相次いだ。平等主義が板についている日本で本当に世界と太刀打ちできる真のビッグクラブは生まれるのだろうか。

黒船来航、変革に道開く

そんな時、助け舟のように現れたのが英国のメディア企業パフォーム・グループだ。Jリーグと10年で約2100億円の放映権契約を交わし、DAZN(ダゾーン)というサービスをリリースし、ファンがスマホで試合を観るようになった。

これにより、「J1優勝賞金」が1億円から3億円へ増額になった。また、新設の「理念強化配分金」は1年後に10億円、2年後に4億円、3年後には1.5億円となり、合計すると15.5億円に。各クラブには別途、「J1クラブ均等配分金」3.5億円が支払われる。

つまり、優勝するとしないで賞金に大きな差が出る。国際舞台に立つクラブに対して、これらの資金で大型補強をしてもらおうというのがJリーグの狙いだ。

経済力と人気は浦和、成績は鹿島

Jクラブの経済規模を見ると、浦和レッズの規模が日本で突出している。2017年度の営業収益では、79億7,100万円で過去最高を記録。2位のヴィッセル神戸が52億3700万円で、最下位はヴァンフォーレ甲府の17億2700円。1位と2位の間には、小さなクラブ1つ分以上の差がついている。

また、2018年の平均観客動員1位は浦和レッズの35,502人で、2位はFC東京の26,432人、最下位は長崎の11,225 人だった。こちらも小さなクラブ1つ分くらいの差がついている。

ところが、成績は鹿島アントラーズが優勝8回で圧倒。2番目に多いのが3回の横浜F・マリノス、ジュビロ磐田、サンフレッチェ広島。浦和レッズは僅かに1回と、クラブの経済規模や人気が必ずしも成績に直結していないことがわかる。

選手強化も開放、有能な人材の集約が可能に

競争力の議論が出る前に移籍を自由化したJリーグ。それはビッグクラブを生み出す要因にもなりうる。

選手とは時折、突然成長し実力が所属クラブと不釣り合いになることがある。それでも、国内ルールがあった以前は移籍金なしに移籍することができなかった。しかし、それが撤廃された現在、良い選手はどんどん有力クラブに流れるようになった。

また、DAZN(ダゾーン)の影響もある。より魅力的な試合にするために、外国籍枠を緩和した。これにより、枠を気にせず有力な外国籍選手を獲得しやすくなった。その代表的な例が、ヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタやダビド・ビジャだ。

神戸は、巨額の年俸を用意し、観客動員には好影響を及ぼしているが、必ずしも好成績には直結していない。ヴィッセル神戸は、育成等クラブの根っこからバルセロナ革命を起こそうとしている。この成果が実るのは、10年以上経ってからの可能性もある。

結果を残し続けるのがビッグクラブ、サッカー人気が必須

お金・制度・人材等、様々な方法でビッグクラブを生み出す努力がなされている。どんなに条件に恵まれていても成果に結びつかないこともあれば、やり方次第で結果を出せる場合もある。これがサッカーの難しく面白いところだ。

日本の事情を良く知らない外国人は鹿島アントラーズが相当な金満クラブだと思っていたが、常勝は大金ではなくジーコ魂によりもたらされたものだった。今、大阪ではスタジアムに革命が起こっているし、シティ・フットボール・グループと組んだ横浜F・マリノスのように、各クラブがそれぞれ工夫を凝らし進化しようとしている。

現在の欧州主要リーグを見渡すと、ドイツ、フランス、イタリアは一強、スペインは二強といった状況で、イングランドでは6クラブくらいが上位争いを演じている。1クラブの独走状態は観る者の興味を失わせるリスクもあり、2クラブでも対戦カードのレパートリーがなくなってしまう。かといって、そんなにたくさんのビッグクラブが生まれる素地は、今の日本にはまだない。

「何をもってビッグクラブとするか?」とは非常に難しい。理想は「国内や国際大会で安定して好成績を収めるクラブが3つほど生まれるぐらい」ではないだろうか。もちろん、その顔ぶれが時代と共に変わることは構わない。

Jリーグほど優勝予想が難しいリーグが他にあるだろうか。過去の成績やデータは、ほとんど参考にならない。そんななか、この戦国の世をつくり出していることは一つの成功と言えるだろう。

いかにして日本は乱世を抜け出し、ビッグクラブとして頭角を現し、世界と対峙する高みにいくのだろう。世界のビッグクラブは、日本とは桁違いの予算で動いている。追いつくためには、日本クラブサッカーの盛り上がりが必要だろう。