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FC東京と広島がワンツー、ボール保持率の低いチームが上位に並ぶJリーグ序盤

2019 4/13 07:00中山亮
サッカーボール,ⒸSPAIA
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ボール保持にこだわらないチーム

2019年のJ1リーグも第6節を消化。チームも徐々に新しい監督や選手に馴染み、次なるチャレンジに挑み始めたころだ。

順位表では、首位にサンフレッチェ広島、2位FC東京、3位名古屋グランパス、4位大分トリニータとなっており、広島と東京は未だ無敗。昨季、広島は第6節で既に首位におり、第6節終了時点で4位だった東京は第9節終了時点で2位に立っていた。つまり、現在の上位2チームは昨季の前半戦でも上位だったということになる。

広島と東京には「ボール保持にこだわらない」という共通点があり、広島の第6節までのボール支配率は43.3%で東京が44.8%。ボール支配率が相手より上回った試合が2試合ずつ、30%代の試合も共に3試合ずつある。にもかかわらず無敗ということは、あきらかにボール保持にこだわっていないチームだといえる。

ポゼッションスタイルが多いからこそ輝く広島・東京

ボールを保持するポゼッションスタイルが人気の日本。ディープななサッカーファンとなれば話は変わってくるが、全体的に「攻撃的なパスサッカー」が好きな人が多い。日本代表もボールを保持するサッカーを好む傾向にあり、Jリーグでもボール保持を志向するチームの方が多い。これは「良い」「悪い」では無く、単に「好き」「嫌い」の問題だ。

相手がいることなので結果的にそうならないこともあるが、ほとんどのチームはボールを持ってパスを繋ぐサッカーをしようとする。そして、当然ながらボール保持を志向するチーム同士の試合で優勢となるのは、ボール保持率の高いチームなのだ。

実際の試合では、チームのストロングポイントを発揮するために優位に運ぼうと、まず相手よりもボール保持率を高めることができるかどうかという戦いが繰り広げられる。まれに、ストロングポイントを発揮しやすい状態になったとしても、J2から昇格してきたばかりのチームや主力がけがなどで離脱しているチームは戦力的な問題から押し切られてしまうこともあるが。

しかし、「ボール保持にこだわらない」広島や東京の場合は全く考え方が異なる。ボール保持率が相手より低くなることに何の問題も感じておらず、むしろボール保持率が低い状況でこそストロングポイントが発揮できるようにチームが組み立てられている。相手がボール保持率を高めようとする試合ほど、ストロングポイントが発揮しやすい状態を簡単につくることができるのだ。

ポゼッション志向のチームが多い昨今の状況では、対策が完璧には立てられない序盤で広島と東京が今季も上位に位置しているのは当然で、強さの理由にも頷ける。

ボール保持にこだわらないチームにとって立ちはだかるのが気候の問題

ボール保持にこだわらないサッカーで2シーズン連続、シーズン序盤で上位に立つ広島と東京。だが、昨季優勝したのはボールを保持するポゼッションスタイルの川崎フロンターレだった。

振り返るとJリーグで優勝しているのはボールを保持するチームがほとんどで、2017年も川崎、2016年はボール保持率が50%を超える鹿島アントラーズ、2015年は当時ポゼッションスタイルだった広島が優勝している。

昨季の広島と東京をみてもわかるが、シーズン後半戦になるとこれらのチームは失速する。これには日本の気候が関係しており、春の涼しい時期には要となる攻守の切り替えスピードを十分発揮できるが、夏の暑い時期になるとどうしても鈍ってしまう。

今季は序盤戦で大きな貯金を作っておくのか、それとも時間帯によってボール保持の戦い方を取り入れるのか、一体どの様にして乗り切るのだろう。好調でスタートを切った両チームのこれからの戦い方に注目したい。