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ベガルタ仙台が最下位と苦戦 新スタイルへの挑戦は実を結ぶか

2019 3/30 11:00中山亮
サッカー,ⒸSPAIA
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苦しむベガルタ仙台

開幕戦で浦和に引き分けて以降、3連敗で中断期間に入ったベガルタ仙台。順位も第4節終了時点で最下位と厳しいシーズンとなっている。

その要因の1つとして考えられるのが編成面だろう。野津田、板倉、中野と昨季の中心選手は期限付きで加入していた選手ばかりであった。その選手がチームを離れ、さらには大切な背番号7をつけた看板選手でもある奥埜までもがC大阪へと移籍した。

長沢、兵藤の経験ある選手や、石原崇兆、飯尾のJ2で経験を積んできた選手、さらにはスペインでの経験も豊富なJリーグ初のモザンビーク国籍選手のシマオ・マテを獲得しているが、新加入選手がチームになじむにはどうしても時間がかかる。選手の立ち位置で優位性を作り出そうとする仙台ならなおさらである。

編成面以外にも、今季は新たなサッカーにチャレンジしていることが苦戦している要因かもしれない。もちろんベースになっているのは昨季までのサッカーである。3-4-2-1もしくは3-1-4-2というフォーメーションは変わっていない。しかし、昨季終盤の8試合で1勝1分6敗と負けが込んだことからも、進化することが求められていた。

今季の仙台に見られる変化

今季の仙台で最も分かりやすい変化は、本来左WBや左SBが定位置の永戸が3バックの左に起用されていることだろう。ここは、昨季は板倉や現在怪我で離脱中の椎橋が入っていたポジションである。これにより攻撃時には2バック+左SB(永戸)の様な関係となり、永戸は高い位置へと進出する。左WBに入る関口や石原崇兆が内側へと入り、そこに左シャドウの選手も絡んだ流動的な攻撃を見せるようになっているのだ。

さらにここからの派生系として、守備的MFの1人が最終ラインに下がる4バック化も披露している。永戸ほどではないが、3バックの右に入る平岡も右SBの様なプレーも見せるようになっている。こういったプレーができるのも、守備的MFのバランス感覚に優れた兵藤と守備での強さと攻撃でシンプルなボールさばきができるシマオ・マテという2人の新戦力が入ったからだと言える。

そして、今季の仙台を見ると、昨季よりもロングボールが増えている。これは192cmのハイタワー長沢が加入したからこそできるプレーで、これにより頼れる存在である石原直樹を相手ゴールに近い位置で、前を向いてプレーできる機会を増やしたいという狙いがあるのだろう。

だが、現時点ではこれらがまだうまくかみ合っておらず、逆にデメリットが目立ってしまっている。

変化によるデメリットとは?

戦術を変えてからのデメリットとしてはっきりスタッツに表れているのは、ボール支配率とパス数の低下だ。第4節までのボール支配率は41.3%でリーグワースト2位、パス数397.0本/試合はリーグ14位となっている。

昨季までもボール支配率はそこまで高くはなかった。それでもリトリートすることで相手陣内にスペースを作り、そこで立ち位置の優位性を使ってパスをつなぐ攻撃であったため、支配率、パス数どちらもリーグ平均以上は記録していた。しかし、今季はロングボールを多用することでボールを失う回数も増えた。さらに攻撃時にフォーメーションを変化させることで、守備陣形をつくるために時間がかかっている。

ボールホルダーにアプローチをかけ、その間に守備陣形をつくるという動きは従来から高いレベルにあるため、簡単にカウンターを受けることは少ない。だが、どうしても相手がボールを持つ時間が増えてしまう。守備の時間が増えるとシャドウのポジションが低くなり前線は孤立してしまう。そうなるとボールを奪ってもロングボールという選択肢が増え、ボールを失う回数も増えるという悪循環となっている。

開幕からの4試合ではデメリットが目立つ結果となっているが、仙台が見せている変化自体は可能性を感じさせる。さらなる進化につながるものであることは間違いない。あとはどこでバランスを取るのか。6季目を迎えた渡邉監督の手腕に期待したい。

(※数字は非公式)