セーブ力並みに求められるボールをつなぐ力
2018年のJリーグで注目を集めたポジションの1つがゴールキーパー(GK)ではないだろうか。
きっかけとなったのは横浜FMが取った新戦術。DFラインを高く上げ、GKが背後の広大なスペースをカバー。長いボールをほとんど蹴らずに、近い味方にショートパスを出す。
横浜FMのGK飯倉のスタッツはまるでフィールドプレイヤーのようだと注目が集まった。
チームの最後の砦として唯一手を使用することができるポジションのGKに最も求められている能力は今も昔もセーブ力であることは間違いない。
しかし近年ではチームによってはセーブ力に並ぶほど求められているのがボールを繋ぐ能力。ボールを保持することをベースにしているチームでは、GKをビルドアップの起点とする戦い方を取るチームも増えてきている。
そこで2018年J1各チームのGKのフィード能力についてのデータに注目してみよう。
GKからのフィード成功率No1は横浜FM
ゴールキックを含むGKからのフィードで成功率No1を記録したのは、飯倉がフルタイム出場を記録した横浜FM。成功率は91.7%。フィード成功数499も最多となっている。
2番手はク・ソンユン選手がフルタイム出場を記録した北海道コンサドーレ札幌。成功率は84.8%でこの2チームの成功率が突出した数字になっている。
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一方成功率が最も低いのはFC東京で52.0%。他にもV・ファーレン長崎、湘南ベルマーレ、ジュビロ磐田、サガン鳥栖、セレッソ大阪は50%台。2本に1本近くは相手ボールになっているということなので少しさみしい結果と言えるだろう。
高い成功率のベースとなっているのは
横浜FMと札幌が高い成功率となっているが、この2チームに共通しているのはショート〜ミドルのフィードやゴールキック、スローが多いということだろう。当然短いパスの方が通りやすい。
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ゴールキックからのショートパスが2桁となっているのはこの2チームだけである(横浜FM14、札幌12)。
そしてさらにゴールキックからのロングキックも本数は多くないのだが成功率は横浜FMが83.5%、札幌が73.7%とかなり高い数値に。これも短いフィードをベースにしていることで、対戦相手がショートパスを警戒して前がかりになっているからだ。
横浜FMと札幌の両チームは、まさにGKがビルドアップの起点として攻撃を組み立てていた。
GKからのロングキックを大きな武器としていたC大阪
GKからのフィード成功率が50%台と少しさみしい結果となっていたチームの1つにキム・ジンヒョンがフルタイム出場を記録したC大阪がある。
C大阪のGKからのロングフィード数219はリーグ平均140.6回を70回近く上回るリーグ最多で、成功数118回ももちろんリーグ最多。成功数のリーグ平均が72.2回で40回以上上回っている。
成功率は53.9%なので決して高くは無いのだが、逆に言えば2本に1本以上の割合でたった1本のパスで一気に前線にボールを届けることに成功しているとも言える。
キム・ジンヒョンは決してキックが下手な選手ではない。しかしC大阪はビルドアップでDFラインにプレッシャーをかけられた場合、GKにバックパスをしGKがロングキックを蹴るという形が頻繁に見られる。横浜FMや札幌が取った方法とは対象的なやり方だが、これも1つの戦術である。
成功率としてはさみしい結果となっていたが、質は決して低くはない。チームにとって大きな武器となっていたと言えるだろう。