序盤ペースを握ったのは札幌
今季のJ1でシュート数1位と2位の対戦となった川崎フロンターレ対北海道コンサドーレ札幌の一戦は川崎Fが7-0で勝利と思わぬ結果に終わった。明暗を分けたのは何だったのか。
川崎Fの鬼木監督が試合後の会見で「何点取られてもおかしくないような入り」と評したように立ち上がりからチャンスを作ったのは札幌だった。
今季の札幌のスタイルが表すようにアタッキングサードで手数をかけることは少なかった。
ミドルサード、ディフェンシブサードからダイレクトにアタッキングサードにボールを入れ、フィニッシュまで持っていく。この形でこの試合では右シャドウで先発した荒野が2度チャンスを迎え、さらに川崎Fのビルドアップミスからチャナティップがシュートと、15分までに決定的なチャンスを少なくとも3回つくっていた。
結果的に、ここでノーゴールに終わったことが、札幌にとっての悪夢のような試合展開につながってしまった。
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川崎Fが狙った札幌のビルドアップ
ここまでの試合の流れを考えると川崎Fの先制点は突然だった。
川崎Fの攻撃を札幌が止めボールを奪い返したところで、中村憲剛が強襲。自陣ペナルティエリアのすぐ外で宮澤が中村憲剛にボールを奪われると、家長に繋がり先制点を許す。痛恨のボールロストだった。
この2分後、今度は札幌のビルドアップの場面で深井が家長にボールを奪われショートカウンター。最後は中村憲剛が決め川崎Fがリードを2点に広げる。
さらにこの2点目の直後にも、札幌のビルドアップで下がってきたチャナティップにボールを回したところで大島にボールを奪い返されカウンター。ここでは失点にはならなかったが、5分経たない間に3度ボールを奪われている。
この試合、川崎は札幌のビルドアップをターゲットにしていたのだ。
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川崎戦前までの札幌の後半戦通算パス数はリーグ7位。リーグでダントツのパス数を記録している川崎Fには劣るものの1試合少ないことを考えれば決して少なくは無い。
そしてエリア別パス数を見ると、ディフェンシブサードで3位、ミドルサードで10位、アタッキングサードでは13位と前に行くほど順位が下がっていく。
つまり札幌はビルドアップに手数をかけ、前線に長いボールを一気に入れるというスタイルを取っていたのだ。
川崎Fがディフェンシブサードで13位、ミドルサードで1位、アタッキングサードで1位と高い位置に行けば行くほどパス数を増やしているのとは対照的である。
最も手数をかける場所というのは、相手にとって最もボールを奪うチャンスのある場所でもある。
40分に札幌のGKク・ソンユンからキム・ミンテにボールが出たところを今度は下田に奪われ再びショートカウンター。これを阿部に決められ3-0と川崎Fがさらにリードを広げた。
川崎Fの後半戦でのアタッキングサードタックル数は最下位の1.1回だったのだが、この試合ではアタッキングサードでのタックル数5回を記録。敵陣でのタックル数も9回を記録しており、普段よりも高い位置でボールを奪いにっいっていたことがわかる。
川崎Fに何度も高い位置でボールを奪い返されたことで、札幌は完全に混乱に陥り44分にはGKク・ソンユンがなんでもない場面でキックミスをするなど、さらなるピンチを迎えていた。
試合を決めた4点目
札幌は1失点目、3失点目の原因となった宮澤とキム・ミンテの2人をハーフタイムで下げるという荒療治を行い後半の立ち上がりからペースを上げるが、54分に再びビルドアップ中に深井がボールを奪われ登里にシュートを放たれると、57分にはカウンターから下田に決められ4失点。
この失点はビルドアップを狙われたものではなかったが、人数をかけて攻めた後にカウンターを食らった。一旦は防いだのだが、その後川崎Fは下田が1人上がっていったのに対して、札幌の選手は誰も戻れなかった。
前半の3失点を何とか取り返そうとしていた札幌だったが、この失点で勢いを失ってしまう。
そのわずか1分後。キックオフで下げたボールを受けた石川が小林にボールを奪われ5失点目。86分には知念、アディショナルタイムにはこの試合がプロデビュー戦となった田中碧にもゴールを許し7失点の零敗となってしまった。
しかも得点者が全員異なるというJ1では2012年の鹿島以来2度目の記録。この時の鹿島の対戦相手も札幌だった。
札幌は試合を通じてパス本数が559本。ボール保持率は51%と川崎Fと遜色ない数字を記録したのだが、シュート数は川崎が26本を記録したのに対し、札幌は6本に抑えられてしまった。
序盤のチャンスで得点できていれば、勢いに乗って川崎Fを押し込むことが出来たかもしれないが、途中から攻撃の出だしをひたすら抑えられ、自分たちのサッカーを封じられたのが致命的だった。