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PA付近でのプレー数から今季のJリーグを分析する

2018 9/15 07:00SPAIA編集部
サッカーボールⒸShutterstock.com
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ペナルティエリア付近でのプレー数が最も多いのは柏レイソル

SPAIAで紹介しているデータの中で、相手ゴールに最も近いプレーエリアとなるペナルティエリア付近でのプレー数。2018年のJ1では、1試合あたりペナルティエリア左が18.8回、ペナルティエリア右が20.6回、ペナルティエリア内が22.1回の合計61.5回を記録。

アタッキングサードでのプレー数が226.1回、敵陣30m以内プレー数が168.3回となっているので、アタッキングサードでのプレー数の内74.4%が敵陣30m以内で行われ、敵陣30m以内のプレー数の内36.5%がペナルティエリア付近で行われていることになる。

このデータから各チームの特徴や問題点を分析してみよう。

2018年J1リーグ第25節まででペナルティエリア付近のプレー数が最も多いのは、柏レイソルの76.2回。この数字はプレー回数なので当然ながら1試合を通じてプレー回数が増えるボール保持率の高いチームが優位になる。実際にボール保持率が最も高い58.7%を記録している横浜FMは2位の75.8回、2番目に高い57.5%の川崎Fも4位の68.4回と多い。

しかし、柏のボール保持率は50.6%と平均をやや上回る程度である。アタッキングサードプレー数は、リーグ10位の224.4回とリーグ平均を下回っているので、アタッキングサードまでボールを運ぶと、効率よくペナルティエリア付近にまで侵入していることがわかる。

これだけの数字を記録した要因となっているのが右サイドだ。ペナルティエリア右でのプレー数が31.6回とリーグ最多となっている。Jリーグを代表する右サイドアタッカー伊東純也の存在が大きいのだろう。

だが、柏の得点数はリーグ13位の30得点。シュート数はリーグ2位の14.4本を記録している一方で、枠内シュート率は29.9%とリーグ11位にとどまっており、シュートの精度に問題を抱えているようだ。また、第18節以降の後半戦だけに絞るとペナルティエリア付近プレー数が66.9回、ペナルティエリア右でのプレー数も25.9回とともに減少しているのは、監督交代と無関係ではないだろう。

柏と同じく右サイドを中心にプレー数を伸ばしているのは首位の広島だ。ペナルティエリア右では30.9回とリーグ2位。一方で左サイドは16.5回とリーグ13位の数字で、柏以上に右に偏っている。これは人数をかけて攻略する右サイドと、単独突破の多い左サイドという広島のチーム設計がよく表れている。

そして、広島の場合、枠内シュート率もリーグ2位の37.8%を記録しており、これがリーグ2位の41得点につながっているのだろう。また、ボール保持率がリーグ16位の46.1%と半分以下になっており、かなり縦に速いサッカーが繰り広げられていることがわかる。

ペナルティエリア付近でのプレー数が少ない、長崎、G大阪、清水

逆にペナルティエリア付近でのプレー数が少ないチームに目を移してみよう。

最も少ないのが52.3回の清水、次いで52.8回のG大阪、53.2回の長崎となっている。しかしこの3チームの中でも清水は、他の2チームと少し傾向が異なる。

清水は、ペナルティエリア内でのプレー数に絞るとリーグ13位の19.9回とそれほど少ないわけではない。清水のボール保持率はリーグで最も低い43.8%。アタッキングサードプレー数も179.4回でリーグ16位となっている。

そんな中、13位のペナルティエリア内プレー数を記録しているということは、ペナルティエリアの両脇はあまり使わず、少ない手数でダイレクトにペナルティエリア内にボールを運んでいるということだろう。そしてその状況が起こりやすいのはカウンターである。シュート数はリーグ14位の11.5本ながらリーグ5位タイの34得点を記録しているのはここに理由がありそうだ。

G大阪は、ボール保持率が49.8%で11番目、ミドルサードでのプレー数426.9回はリーグ5位でありながらアタッキングサードでは210.0回で12位、敵陣30m以内プレー数が154.6回で16位、そしてペナルティエリア付近プレー数が52.8回で17位とゴールに近づくほどプレー数を減らしている。ペナルティエリア内プレー数も17.3回でリーグ17位だ。

シュート数は11.7本とリーグ12位の数字でありながら枠内シュート数が3.5本でリーグ16位となっているのもロングシュートや無理なシュートが多いからだろう。25得点もリーグ17位である。

ペナルティエリア付近が53.2回の長崎に関しては、アタッキングサードでのプレー数が175回でリーグワースト。アタッキングサードまでボールを運ぶことに苦労している。

シーズン前半はそんな中でもリーグ8位タイの21得点を記録できていた。しかし、夏場に向けて中断期間にボール保持率を高めるトレーニングを行ったことで、ボール保持率自体は前半戦の45.1%から後半戦は49.9%へと改善した。アタッキングサードでのプレー数も166.6回から188.8回と増やしたものの、ペナルティエリア付近でのプレー数は53.8回から52.9回へと微減、ペナルティエリア内プレー数も17.9回から15.8回と減少している。これはボールを保持することが、相手チームに守備を固める時間を与えることにもつながってしまった結果と言える。

2018年のJ1も残り9節。ここから各チームそれぞれの目標に向けての戦いがさらに激化していくこととなる。そんな中で得点力の差は明暗を分ける1つの要因となる。得点を挙げるために、ペナルティエリア付近ではどの様な変化が生まれるのか注目していきたい。