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柏レイソルに何が起こっているのか? 順位転落の厳しい現状を検証

2018 8/15 07:00SPAIA編集部
柏レイソルスタッツ比較表
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監督交代後から無得点試合が増加

下平前監督が率いた第14節までと、加藤新監督が率いる第15節〜第21節の数字を比較すると、得点数は下平前監督期が1試合あたり1.1得点、加藤監督期が1.0と大きな変化は無いが、失点数では1.2失点から2.1失点と大きく悪化させている。

これだけ見ると、低迷の大きな原因はディフェンスに問題がありそうに思えるが、この失点数が大きく増える原因となっているのは、第17節の鹿島アントラーズ戦で6失点を喫しているため。この鹿島戦を除くと1.5失点となり――もちろんこの数字は決して褒められたものではなく、ここにも問題はあるが、1試合あたり2失点ほどの致命的な要因とは言い難い。

一方で1試合あたりの得点数だけを見ると、監督交代後も大きな変化が無いと思われるが、試合毎に見ると得点を奪ったのは7試合中半分以下となる3試合のみ。この3試合で複数得点を決めているため、平均としては大きな変化が無いように見える。しかし、半分以上の4試合は無得点に終わっていることを考えると、攻撃面にも問題を抱えていることがわかる。下平前監督が率いた14試合では無得点試合は3試合しかなかった。

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ⒸSPAIA

攻撃面での変化

攻撃面の数字の変化をもう少し細かく見てみよう。

シュート数は1試合あたり13.7本から17.4本と大きく増加。しかし枠内シュート数は4.4本から4.0本と減少している。

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またプレーエリア毎のプレー数・比率を見ると、アタッキングサードでのプレー比率は24.3%から26.9%と増加しているが、プレー数自体は230.9回から221.1回と減少。ここから加藤監督就任後の柏は手数をかけずに前線にボールを送るようになり、その分シュート数も増えた。しかし、手数をかけていない分、相手を崩しきれていない中でのシュートも増えたため、枠内シュート数は減ったといえるだろう。

さらに、攻撃が縦に速くなったことがパス数551.1本から508.1本と減少していることからもわかる。ボール保持率も51.5%から49.7%と下げている。

そして最も変化を感じさせるのがクロス数。

クロス数は17.5本から23.9本と大きく増加。また成功率も22.0%から26.3%と伸ばしている。その一方でスルーパスは20.1本から19.3本と減少。成功率も50.0%から43.8%と下げている。

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チームにフィットしているとは言えない戦い方

手数をかけない縦に速いクロスを中心とした攻撃となった柏だが、縦に速い攻撃で今季FC東京が躍進を見せているように、この攻撃の形自体にもちろん問題は無い。しかし攻撃面で問題が出ているのは、その戦い方がチームにフィットしきれていないということだろう。昨季を含め下平前監督期は自陣からボールを繋ぐサッカーを行ってきたが、そのメンバーが現在もほとんど変わっていないからだ。

そのため、実際の試合を見ると縦に速いサッカーを志向しているというよりも、単にビルドアップが上手くいかず、縦に蹴るしか無いように見える。となるとボールを失う回数が増える。そしてボールを失う場所も安定していない。

その結果、下平前監督期の特徴でもあった前線からのプレッシングが低下。実際に敵陣でのタックル数が1試合あたり6.0回から5.1回と減少しており、敵陣でのタックル割合も30.1%から27.9%と少なくなっている。そして自陣にまでボールを運ばれる回数も増え、被シュート数も11.9本から15.0本と増加しているのだ。

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この被シュート数15.0本は、今季前半戦の記録で見ればリーグワースト2位の水準である。

第21節終了時点での勝ち点は23。入れ替え戦となる16位V・ファーレン長崎との勝ち点差が2。降格圏となる17位ガンバ大阪との勝ち点差が3。1試合で入れ替わってしまう差でしかない。

ここからは週2回の連戦が続く厳しい日程となるが、できるだけ早く戦い方をチームにフィットさせることが必要になりそうだ。