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名古屋、鳥栖は補強。G大阪は監督交代で巻き返しへ J1前半戦データから見る残留争い

2018 7/30 17:48SPAIA編集部
サッカーボールⒸShutterstock.com
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熾烈な残留争い

今季のJ1残留争いをしている面々が昨季とは大きく顔ぶれが代わっている。

前半戦終了時点で18位の名古屋や15位の長崎は今季の昇格組だとしても、降格圏となる17位の鳥栖は昨季8位。入れ替え戦圏内となる16位のG大阪は昨季の10位だった。

驚くべきは長崎のすぐ上、12位、13位、14位にいる浦和、横浜FM、柏の3チーム。この3チームにいたっては昨季7位、5位、4位と上位争いに加わっていたチームだ。

降格圏のすぐ上にいるチームは本来力のあるチーム、現在入れ替え戦となる16位以下のG大阪、鳥栖、名古屋の3チームは気が気でないだろう。

この3チームの前半を振り返ると共通しているのは得点力不足だということ。3チーム共に17試合で15得点はリーグワーストである。

最少得点、最多失点の名古屋グランパス

その中でも最下位18位と苦しむ名古屋は失点数も33とこちらもワースト。得点が最少、失点が最多とあれば当然この順位になってしまう。

ただし攻撃ができていないわけではない。パス数はリーグ3位の624.5本/試合。アタッキングサードプレー数も264.1回/試合でリーグ3位。ボール支配率も53%でリーグ4位の成績を残しているのだ。

しかしこれだけボールを敵陣に運ぶことができていながらもシュート数はリーグ17位となる10.5本/試合しか記録できていない。つまりボールを運んでからの先が整備されていない状態だ。

J1,名古屋グランパス,2018年,前半戦スタッツ

ⒸSPAIA

これを表しているのがペナルティエリア付近でのプレー数。アタッキングサードではリーグ3位のプレー数があるのに対し、ペナルティエリア付近のプレー数はリーグ13位と一気に減少。またその内訳をみるとペナルティエリア左ではリーグ6位の20.9回/試合があるのに対し、ペナルティエリア右はリーグワースト、ペナルティエリア内もリーグ15位と偏りがある。

また一方でこれだけ敵陣に迫りながらもボールを失った時の対応、敵陣でのタックル数はわずか4.5回/試合とリーグ17位。さらにチーム全体のタックル数自体もリーグワースト。つまり攻め込むもののペナルティエリア近くには侵入できず、さらにそこでボールを失うと一気に自陣ゴール前までボールを運ばれてしまっているのが現状だ。

ここまでリーグ3位となる3.5回/試合のセーブ数を記録しているGKランゲラックがいなければ失点数はさらに厳しい状態になっていただろう。

ただし名古屋はこの状況を踏まえて夏の移籍期間に、日本代表経験もある丸山をはじめ中谷、金井、さらには守備的MFのエドゥアルド・ネットと実績十分の即戦力を次々と獲得。 後半戦の巻き返しを図っている。

FW怪我人続出で苦しむサガン鳥栖

同じく降格圏となる17位に沈んでいる鳥栖。失点数はリーグ11位タイの23。タックル数は21.6回/試合でリーグ7位。敵陣でのタックルに関しては6.9回/試合とリーグ3位の成績だ。つまり鳥栖の場合は純粋に攻撃面に課題がある。

しかしシュート数こそ12.2回/試合でリーグ11位だが、ペナルティエリア付近のプレー数では67.5回/試合とリーグ5位の成績を記録。攻撃面でもスタッツ上は悪くないのだ。

鳥栖がここまで苦しんでいるのはやはり前線の選手に怪我人が続出してしまったことだろう。今季FWの軸となるはずだったイバルボと趙東建の2人が共に怪我で半分以下の時間しかプレーできていない。東京五輪でもエースとして期待されている田川はここまで16試合に出場しているものの19歳の選手に1人でチームを支えろというのは流石に酷だ。

J1,サガン鳥栖,2018年,前半戦スタッツ

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ただし、これだけ問題点がはっきりしているとチームの対応も早かった。

まず6月に期限付き移籍で韓国でプレーしていたかつてのエース豊田を呼び戻すと、7月10日にはワールドクラスのストライカー、フェルナンド・トーレスを獲得。さらに7月24日には鹿島から金崎の獲得も発表した。イバルボと趙東建は今季中に間に合わない公算が高いが、この3人はJリーグでもトップクラスのストライカーだ。

強力な攻撃陣を揃えた鳥栖が後半戦の台風の目になる可能性は十分ある。

下位3チームで唯一監督を代えたガンバ大阪

16位に沈んでいるのはG大阪。失点数25は13位。これを支えているのはリーグ2位の4.1回/試合のセーブ数を記録している日本代表GK東口。もし彼がいなければさらに厳しい状況になっていただろう。

G大阪の守備のデータを見ると、タックル数は20.9回/試合で10位、敵陣でのタックル数も6.2回/試合で9位とそこまで低くない。これだけの数字を記録しながらも13位の失点数、GKがリーグ2位のセーブ数を記録しているということは、自陣での守備に問題があるということになる。実際に被シュート数16.5本/試合はリーグワーストである。

攻撃面ではミドルサードでのプレー数はリーグ6位の432.8回/試合を記録しているものの、アタッキングサードではリーグ211.6回と減少。敵陣30m以内は156.1回。ペナルティエリア内でのプレー数はリーグワーストの16.2回/試合と相手ゴールに近づくにつれて数字が悪くなっている。

G大阪はこの状態を改善するために他2チームとは異なる方法、監督交代を選択した。もちろん監督交代もチームを改善するための大きな選択肢の1つである。

J1,ガンバ大阪,2018年,前半戦スタッツ

ⒸSPAIA

しかし不安を感じさせるのはそのタイミング。ワールドカップによる中断が開け17節を終えた時点で監督を交代させたのだ。これにより中断期間の2ヶ月が無駄になる可能性が出てくる。

第17節終了時点での補強はなし。下の順位の2チームと比べると出遅れてしまった感がある。

新監督に就任した宮本監督も、U-23チームを率いたいたもののトップチームの監督経験はなし。チーム内部をよく知っているため劇的に改善させる可能性もあるが、少しギャンブル的な要素が強すぎる印象も受ける。

G大阪は戦力補強も含め、迅速に宮本新監督を支える体制づくりを行う必要があるだろう。