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イニエスタ参戦のJリーグ 超一流選手の次に求められるもの

2018 5/25 07:00SPAIA編集部
サッカー,ⒸShutterstock.com
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Jリーグに欠けているもの

バルセロナを退団したイニエスタがJリーグのヴィッセル神戸と今夏の加入で合意した。多額の資金を投入して世界最高峰の選手を手に入れた神戸。複数年契約で推定年俸は33億円超と報道され、ビッグネームの参戦に日本中が沸き立っている。

Jリーグに所属する海外の代表選手が増え、ついに超一流選手の加入が実現。しかし、欧州のリーグにあってJリーグにないものがある。それはビッグクラブだ。

ビッグクラブとは

「ビッグクラブ」という厳密な基準はないが、人気、実力、知名度、資金力を備え連覇を成し遂げるチームが自然と「ビッグクラブ」と呼ばれる傾向にあるようだ。特に欧州のバルセロナ、レアルマドリード、バイエルンミュンヘンなどは誰もが認めるビッグクラブである。

「Jリーグでビッグクラブは?」と聞かれて思い当たるクラブ名はあるだろうか。優勝回数では鹿島アントラーズがそれにあたる。他のチームと比べて頭一つ抜き出てはいるが、ビッグクラブと答えるには少し物足りない感じがする。

浦和レッズを推す人もいる。確かに人気、知名度ともに高く資金力もある。しかし浦和は一度しかJリーグを制覇したことがなく、ビッグクラブと呼ぶのは難しい。

野球でいえば読売ジャイアンツや、最近でいうと福岡ソフトバンクホークスのような優勝を義務付けられ、常にリーグの中心にいるチーム。良い悪いは別として日本のサッカーにはそういったクラブが存在しない。

各国のビッグクラブと優勝状況

Jリーグが発足した1993年以降の、各国主要リーグで優勝したクラブの数を見てみよう。イングランドは6クラブ、イタリアは5クラブ、スペインは5クラブ、ドイツは6クラブ、オランダは5クラブ、フランスは10クラブ。ちなみに日本も10クラブになる。

強大なクラブが君臨するリーグでは、優勝クラブ数が少なくなる。マンチェスター・ユナイテッドは紛れもないビッグクラブで、25年間で12回も優勝している。イタリアではユベントスが6連覇を果たし、王国を築き上げることに成功した。
スペインでは5クラブが優勝しているが、バルセロナとレアルマドリード以外の3クラブは二大ビッグクラブの間隙を突いての優勝だ。ドイツではバイエルンミュンヘンの独壇場という状況が続き、オランダではPSVとアヤックスが優勝の大半を分け合っている。

フランスはオリンピック・リヨンが7連覇を果たした後、各クラブが群雄割拠し日本と似たような状況になる。カタールのQSIが巨額の資金をつぎ込んだ結果、パリ・サンジェルマンがビッグクラブとなった。

それではビッグクラブが弱小クラブを蹂躙しているかと言うと、そうではない。強大なクラブは徹底的にマーク、研究され包囲網をしかれてしまう。ヨーロッパでは絶対王者的ビッグクラブが存在することで、その打倒を目標に他のチームは切磋琢磨しているのだ。

ビッグクラブが他チームを牽引する

まだ存在していないもののJリーグでも絶対王者が誕生してもおかしくない状況ができつつある。それは2017年から始まった分配金の見直しだ。上位クラブに手厚く、下位クラブに少ない分配金が与えられる。
これにより予想されるのがビッグクラブの誕生。資金があれば有力選手を集めることができ、強化されたチームで翌シーズンも上位に入る。分配金でさらに強化し、その翌シーズンも……という流れも夢ではない。

そうしてビッグクラブができれば海外から移籍も増え、注目も集まる。そうなれば、さらに資金を集めて海外の有望選手を引き入れることも夢ではない。他のクラブが強大な敵をいかに打倒するかという明確な目標も持つことでJリーグ全体のレベルが上がり、日本代表の強化につながる可能性がある。

今Jリーグで一番大きな動きを見せているのがヴィッセル神戸だ。楽天がバルセロナのスポンサーということもあり、パイプを太くしつつある。また三浦淳寛氏をスポーツダイレクター(SD)に迎え入れ、バルセロナのサッカーを模倣しようとしているのだ。バルセロナを退団したイニエスタとの契約合意もその一環だろう。

スポーツが公平性の上に成り立つという考えからすると、分配金が不平等であることに意見が出ることは仕方ない。それぞれの立場から見れば、強化の可能性にかけて不平等な環境を作ることと、公平に資金や選手という限られた資源をクラブで分け合うこと、そのどちらにもメリット・デメリットがあるからだ。

ただ、Jリーグはレベル向上を目指して分配金の傾斜配分へと大きく舵を切った。イニエスタを獲得した神戸が急先鋒となってビッグクラブへの道を歩むのか、さらにそれに続くクラブが現れるのか。発足から25年を迎えたJリーグは、いま転換期を迎えている。