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ボール奪取回数から振り返る2017年のJリーグ

2018 2/6 15:29Aki
サッカー
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2017年J1リーグ戦ボール奪取数ランキング

ハリルホジッチ日本代表監督が何度も口にする「デュエル」は、相手にボールを奪われたら奪い返すという戦い方だ。サッカーではボールを保持しなければ、攻撃することができない。ボール奪取数はチームの戦い方やスタイルを表す目安となるデータとなるのだ。ボール奪取数から2017年のJ1を振りかえってみよう。

1位 鹿島アントラーズ 73.3回
2位 柏レイソル 70.8回
3位 セレッソ大阪 70.5回
4位 ヴァンフォーレ甲府 69.7回
5位 清水エスパルス 69.6回
6位 ベガルタ仙台 69.4回
7位 ガンバ大阪 69.2回
8位 アルビレックス新潟 69.2回
9位 ヴィッセル神戸 67.1回
10位 川崎フロンターレ 66.9回
11位 FC東京 65.6回
12位 北海道コンサドーレ札幌 65.5回
13位 浦和レッズ 65.4回
14位 サガン鳥栖 65.4回
15位 大宮アルディージャ 65.1回
16位 サンフレッチェ広島 64.8回
17位 横浜F・マリノス 64.5回
18位 ジュビロ磐田 61.9回
リーグ平均:67.4回
※1試合平均

ボール奪取回数上位にはリーグ戦上位のチームが並ぶも

目につくのが、ボール奪取回数上位にはリーグ戦上位のチームが並ぶことだ。ボール奪取回数最多の鹿島アントラーズはリーグ戦で2位、2番目に多い柏レイソルは4位、3番目に多いセレッソ大阪は3位といずれも上位躍進チームばかりだ。

しかし、優勝した川崎フロンターレのボール奪取回数は、リーグ平均67.4回よりも少ない66.9回、順位も10位である。ボール奪取回数こそ少ないものの、川崎フロンターレには、リーグ2位となる56.2%のボールポゼッション率や、リーグトップとなるパス数(649本)、パス成功数(631本)、パス成功率(97.23%)がある。

つまり川崎フロンターレはボールを保持している時間が長く、ボールを失う回数も少ないため、ボールを奪い返す機会自体が少ないということだ。 これは前監督の風間八宏氏が就任時に語った

ボールを失わなければ何も起きない

出典:Jリーグ.jp

を体現していると言えるだろう。

川崎フロンターレと同じ傾向にあるのは、ポゼッション率1位の浦和レッズだ。このチームもボールを保持する時間を長くすることで、ボールを奪い返す機会自体を少なくしている。

高い位置からボールを奪い返す鹿島アントラーズ

ボール奪取回数最多となった鹿島アントラーズも、ボールポゼッションが53.6%リーグ3位と、ボール保持時間が長いチームである。 しかし、総パス数は5位(511本)、パス成功数も5位(486本)、パス成功率も95.11%で4位と傑出した数字ではない。このボール奪取回数とボールポゼッションが共に高くなる理由は、ボールを奪い返す場所にある。

ボールを奪い返す場所には、敵陣、自陣敵陣側、自陣中央エリア、自陣ゴール前と4つのエリアがあり、鹿島アントラーズは、敵陣でのボール奪取回数が多いのだ。その数16.1回/試合とリーグ1位。 自陣敵陣側(18.3回/試合)自陣中央エリア(21.5回/試合)もリーグ2位であり、ボールを高い位置で奪い返しているのだ。つまり高い位置でボールを奪い返すことで、相手のボール保持時間を短くしているのだ。

敵陣(15.7回/試合)でリーグ3位。自陣敵陣側(19.2回/試合)でリーグ1位のデータを持つ柏レイソルも同傾向であると言える。

全く異なる傾向をみせたセレッソ大阪

鹿島アントラーズ、柏レイソルと全く異なる傾向をみせたのが、ボール奪取回数3位のセレッソ大阪だ。ボールポゼッション率は49.0%と平均以下であり、ボールを持っている時間よりもボールを持たれている時間の方が長い。 セレッソ大阪のボール奪取回数は、敵陣(15.2回/試合)リーグ5位。自陣敵陣側(15.5回/試合)リーグ11位。自陣中央エリア(21.9回/試合)リーグ1位。 自陣ゴール前(17.9回/試合)リーグ12位となっており、自陣中央エリアでのボール奪取回数がずば抜けて高くなっている。

セレッソ大阪は自陣で守備ブロックを作ることで守っており、高い位置からもボールを奪いに行くが、そこでボールが奪えないと素早く自陣で自分のポジションに戻る。この使い分けが上手くいっていた。 インターセプト数も、リーグ最多3.1回/試合。個人別データでも山口蛍選手がリーグ最多の30回、柿谷曜一朗選手がリーグ2位の18回を記録するなど、セレッソ大阪では精度の高い守備が機能していたのだ。

アジアの舞台へ挑む4チーム

ボール奪取回数を中心に川崎フロンターレ、鹿島アントラーズ、セレッソ大阪、柏レイソルの4チームのチームスタイルを紹介した。これらの4チームは監督も留任し、2018年はJリーグを代表しAFCチャンピオンズリーグに出場する。 Jリーグで結果を残したチームスタイルで、アジアの舞台でも結果を残すことができるのだろうか。2018年のJリーグでも最も注目が集まるチームといえるだろう。