磐田の得点の多くに絡んだ中村俊輔
昨シーズン、ジュビロ磐田はリーグ戦6位と躍進を遂げ、周囲を驚かせた。J1復帰初年度の2016年は最終節まで降格の可能性を残すなど大苦戦。
何とか13位で残留を決めたものの、目標だった勝ち点40には到達できず。トップカテゴリーの力をまざまざと見せつけられる格好となった。
そんなチームが、翌年には上位争いを繰り広げた。30失点はリーグ最少である。
守護神カミンスキー、ディフェンスリーダーの大井健太郎ら守備陣の奮闘もあり、磐田は大崩れしない組織力を手にした。
既存戦力の成長はもちろんだが、新加入選手たちの存在も忘れてはいけない。高橋祥平は強さ、スピード、技術を兼ね備えたセンターバックで、守備力向上に一役買った。
ウズベキスタン代表のムサエフは豊富な運動量と対人の強さを武器に、攻守両面で力を示している。さらに日本代表経験のある川又堅碁は最前線で質の高いプレーを見せ、14得点記録。リーグ戦終了後には追加招集ながらハリルジャパンに名を連ねた。
そして、中村俊輔である。新戦力が軒並みフィットする中、天才レフティーも勝利に直結するパフォーマンスでチームを上位争いへと導いた。
巧みなキープ力で時間を作り、相手の選択を予測するポジショニングで守備面にも貢献。進んで身体を投げ出すなど戦う姿勢も示した。
様々な形でチームの力となったが、最大の魅力は魔法のようなキックだろう。39歳になっても錆びつくことのない左足で、磐田の得点の多くに絡んでいる。
国内屈指のキッカーが相手に与える脅威
※起点:5プレー以内にゴールしたもの
2016年、磐田はリーグ戦での得点が『37』にとどまった。一方で2017年は『50』となった。
堅守速攻のスタイルに川又、アダイウトンの強力コンビがうまくハマったのは事実だが、中村俊輔によるセットプレーが得点チャンスを飛躍的に増加させた。
第3節、第27節の大宮アルディージャ戦で直接FKを沈め、第29節・清水エスパルスとの『静岡ダービー』では直接CKから得点を奪った。夏場以降はアシスト数も伸び、中村俊輔がFKとCKでゴールに関与した回数は15回にのぼる。
セットプレーからの得点の合計が2016年は『8』、2017年は『19』と、前年から2倍以上増えた。松浦拓弥や上田康太も直接FKを叩き込んでおり、すべてが10番によるものではない。だが、ほとんどに関わっていることに変わりはなく、中村俊輔のキックが得点増を実現したのは間違いない。
なかなか得点チャンスを掴めない展開でも、セットプレーが武器としてあることで“一発”への期待感が生まれる。ましてやキッカーが国内屈指の選手であれば尚更だ。
さらに、相手も不用意なファウルを与えないよう注意を払う。笛を吹かれるのを恐れて強く当たれなくなる状況が生まれるのだ。マークが緩くなれば磐田の選手はそれだけ自由になれる。
中村俊輔の存在自体が相手の脅威となり、味方はプレーしやすいシチュエーションを享受する。昨シーズンは、そんな好循環すら生まれていた。
データからもわかるように、サックスブルーの10番は多彩なキックで多くのゴールを導き出した。そして今シーズン、磐田はトップ5入りを目指すことになる。
大きなチャレンジとなる中、目標達成のためにも中村俊輔の左足は不可欠な要素となる。
文:SPAIA編集部、監修:データスタジアム