川崎・鹿島とC大阪・柏、どこで差がついたのか?
2017年シーズンのJ1・J2・J3リーグ戦が終了した。昇降格ともに終盤までもつれるドラマチックな展開になったが、長丁場のリーグ戦を戦っていく上で重要になってくるのが好不調の「波」だ。当たり前の話だが、好調の時期が続けば有利になり、不調の時期が長引けば順位はズルズルと下がる。
ここに1つのデータがある。J1・J2・J3のリーグ戦における好不調を可視化したものだ。鮮やかな赤色が好調で、黒に近い色が不調を表している。過去3試合分の勝ち点を合計しているため、3連勝が最も鮮やかな赤色、3連敗が黒色となっている。
各ディビジョンでどのような結果になったのか。J1から順に振り返ってみよう。
J1は最終節まで優勝を争い、川崎フロンターレが勝ち点72で優勝。同じ勝ち点の鹿島アントラーズは得失点差で涙を飲んだ。両チームを比べると、中盤戦までは鹿島アントラーズの方が色の濃い部分が多い。
だが、終盤でやや失速し、逆に川崎フロンターレは3連勝は少ないものの、安定して勝ち点を積み重ね、最後に追いついた。
とはいえ、両チームは同じ勝ち点。勝ち点のバラつきを表す「標準偏差(大きいほど好不調の波が大きい)」は川崎が1.82だったのに対し、鹿島は1.87。ほとんど差がない。
対照的だったのはセレッソ大阪と柏レイソルだ。両チームとも優勝争いに加わっていたが、最後は突き放された。差がついたのは波の大きさだ。
セレッソの標準偏差は2.54、柏は2.58と川崎・鹿島と比べると大きく違う。セレッソと柏は連勝を続けていた時期もあったが不調も時期も多かった。優勝争いを最後まで続けるには不調の時期を少なくして、いかに安定するかがデータでもよくわかる。
抜群の安定感だったサガン鳥栖をどう評価すべきか?
下位チームにも目を向けてみよう。14位清水エスパルス以下5チームで3連勝を記録したのはアルビレックス新潟のみ。
5チームともシーズンを通して苦しい戦いが続いた。そのうちシーズン途中で監督を交代したのはサンフレッチェ広島、新潟、大宮アルディージャ。
絶不調だった広島は7月に森保一監督が退き、ヤン・ヨンソン監督が就任。チーム状態は上向き、終盤戦はより鮮やかな赤色が多くなった。
監督交代に一定の効果があったと言えるが、逆に難しかったのは新潟。5月に呂比須ワグナー監督が就任するも不調の時期が続いた。最後は4連勝で締めたが時既に遅し。立て直しにあまりに時間がかかった。
大宮はシーズン中に二度の監督交代を断行したが、まったく調子は上がらず。かつてはシーズン終盤の「粘り」に定評があったが今季はそれもなく。標準偏差1.81と残念ながら「低く安定」してしまった。
興味深いのはサガン鳥栖だ。標準偏差1.17と全ディビジョントップの安定感を誇った。シーズンを通して大崩れすることなく、コツコツと勝ち点を稼ぎ、8位でフィニッシュ。
絶不調の時期をできるだけ少なくすることも、戦力が拮抗するJリーグで生き残っていくためには重要なことだ。
一方で、さらに上を目指すためには大型の連勝も必要。そうなると選手補強が重要になってくるが、果たして鳥栖は今季の成績をどのように評価し、来季の目標をどこに設定するのか。鳥栖の動向はJ1全体に影響を及ぼすかもしれない。
J2とJ3ではどのような傾向があったのか?
J2もJ1と似た傾向が見られる。自動昇格を決めた湘南ベルマーレとV・ファーレン長崎は標準偏差がそれぞれ1.79と2.15と安定していたのに対し、昇格したもののプレーオフに巻き込まれた名古屋グランパスは標準偏差2.50とやや波があった。
明暗が分かれたのはジェフ千葉と徳島ヴォルティス。ともに不調期も好調期もあり、波のあるシーズンだったが、最後は千葉が7連勝で終盤戦を乗り切り逆転。
プレーオフ圏内に滑り込んだ。J2は6位まで昇格の可能性があるため、もつれるケースが多い。終盤でいかに波を掴めるかも重要になってくる。
J3はJ1・J2とは違った傾向が見られた。首位のブラウブリッツ秋田の標準偏差は2.39、2位の栃木SCは2.23とやや波があったのに対し、3位のアスルクラロ沼津は1.62と安定していた。
だが、秋田は序盤で、栃木は後半戦で連勝の大きな波を作ったのに対し、沼津はやや爆発力に欠けた。
Jリーグは世界でも稀な戦力が拮抗したリーグだ。不調の時期が長引けば、順位は一気に落ちてしまう。シーズンを通してどのように勝ち点を得ていくか、中長期の戦略を立てていくことが重要なのは間違いない。
文:SPAIA編集部、監修:データスタジアム