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柏レイソル、2017年前半戦の戦術を分析しよう

2017 8/3 12:07Aki
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下部組織出身者が多い若いチーム

柏レイソルの平均年齢は、2017年開幕時点で24.2歳。これはU-23チームを持っており、必然的に若い選手が増えるガンバ大阪の23.7歳に次ぐ2番目に若い年齢であり、同じくU-23チームを持つFC東京やセレッソ大阪よりも若い選手構成となっている。
その内訳として、下部組織出身者率が53.8%となっており、2017年のJ1において最大の割合となる。J1全体の下部組織出身者率の平均が23.9%と柏レイソルの数字の半分以下であり、2番目に多いセレッソ大阪が36.6%という事を考えると、柏レイソルの下部組織出身者率がずば抜けて高い事がわかる。すなわちダントツ若い選手が多いチームということである。

柏レイソルは、下部組織から一貫した形でチームを作り上げるという方向性をはっきりと打ち出している。 この方向性は吉田達磨氏がU-15のコーチとなった2003年から進められたもので、2015年にネルシーニョ氏から吉田達磨氏がトップチームの監督に就任すると、一気に本格化する。
しかし、この改革も一筋縄ではいかなかった。
満を持して就任したはずの吉田達磨氏だったが、成績不振により2015年のシーズン終了時点で退任。ブラジル人監督を迎えるものの、この方向転換をきっかけに下部組織出身の主力選手の移籍につながり、クラブは難しい局面を迎えてしまう。
ここでクラブは再び方向転換し、下部組織で監督を務めていた下平隆宏氏を監督として就任させる。この2度目のチャレンジは現段階では成功と言って良いだろう。2017年の柏レイソルは下部組織出身選手が中心となり大きく花開こうとしている。

ハイプレスを選択した下平監督

2017年の開幕戦で柏レイソルの前線に入ったのは、ハモン・ロペス選手とディエゴ・オリヴェイラ選手の外国籍2トップだ。さらにクリスティアーノ選手が左サイドのアタッカーとして起用されている。その一方でディフェンスなどの守備的なポジションには、下部組織出身の選手がズラリと並んでいた。
柏レイソルU-18は「ボールを保持するサッカー」を志向し、世界的にもかなり評価が高いチームである。その下部組織出身の選手がボールを保持しながら前線にボールを運び、フィニッシュの部分を強力な外国籍選手の攻撃力を活かそうというチーム設計だったのだろう。

しかし、この布陣で挑んだ開幕戦にこそ勝利したものの、続く第2節からはなんと3連敗。
失点を重ねたことで下平監督は戦い方の変更を決断する。
下平監督が選択したのは”前線の高い位置からボールを奪いに行く形”いわゆるハイプレスだった。
柏レイソルのセンターバックで起用されているのは、下部組織出身の21歳の中谷進之介選手と、20歳の中山雄太選手の若い選手である。サイドバックに入るのはレノファ山口FCから加入した身長169cmの小池龍太選手と、171cmの輪湖直樹選手ということで両サイドには高さも無い。
下平監督はこの現状を踏まえ、失点を減らす為には自陣でサッカーをする時間を減らす必要があると考え、敵陣からハイプレスを行う事を選択したのだろう。

プレッシングの急先鋒、中川寛斗選手

ハイプレスサッカーを行うために前線に抜擢されたのは、下部組織出身の中川寛斗選手だ。
中川選手は、開幕戦ではベンチスタートし2016年までは中盤でプレーする機会も多く、身長155cmと最も背の低いJリーガーだ。そんな中川選手を、第4節から下平監督は最前線で起用し始める。

中川選手に求められた役割は前線からのプレッシングである。対戦相手のセンターバックに、「落ち着く暇も与えないほど精力的にプレッシャーをかけ続けること」だ。
中川選手のプレッシングの威力は、相手にとっての避難場所となるゴールキーパーにまでも襲いかかる。 ゴールキーパーまでプレッシングをかけるためには、2度追いする必要があるのだが中川選手はそれを厭わない。

ハイプレスの目的は、相手選手から時間とスペースを奪うこと。
中川選手のところで直接ボールを奪い返す事は少ないのだが、時間とスペースを奪われた相手選手は落ち着いてボールを繋ぐことができなくなり、苦し紛れのロングボールが増える。
苦し紛れのロングボールであれば、若いディフェンス陣にとっても対応はそれほど難しくはなく、ボールを奪い返す事ができるのだ。
これはデータにも顕著にあらわれており、2017年第14節終了時点で、柏レイソルの1試合平均の攻撃回数が、ーグ1位の136.5回。攻撃回数がリーグ最多であるいという事はボールを奪い返す回数がリーグで最多という事でもある。

実際に上位対決となった第14節の浦和レッズ戦では、中川選手のプレッシングをきっかけに、前線でコンビを組むクリスティアーノ選手も連動してプレッシングをかけることで、ポゼッション率をほぼイーブンの状況に持っていく事に成功している。
浦和レッズは、ゴールキーパーの西川周作選手を使ってボールを保持することが最も上手い、リーグナンバーワンのポゼッション率を誇るチームにも関わらず、である。

開花しつつあるゲームメイカー、手塚康平選手

ハイプレスサッカーといえば、攻撃の定番はショートカウンターだろう。 がしかし、柏レイソルにそれは当てはまらない。柏レイソルは決して攻め急がないのだ。
柏レイソルは、2017年第14節終了時点のデータから見ると、パス本数がリーグ6位、ポゼッション率もリーグ7位と、リーグ平均以上の数字を記録している。 これは攻撃回数の多さから考えると異例の数字だ。この数字から、柏レイソルがボールを保持しての攻撃を志向していることがわかる。

この攻撃で躍動しているのは、下部組織出身の守備的なポジションにいる若手選手。 その中でもブレイクの兆しを見せているのが、左のボランチに入っている手塚康平選手だ。
手塚選手がニュージーランドのネオハンガを経由しトップチームに加入したのは2016年。 しかしこの年はケガに悩まされ出場機会は無く、今季も開幕直後はベンチとベンチ外を繰り返していた。
手塚選手のトップチームデビュー戦となったのは3月15日のルヴァンカップ。 この試合でいきなり初ゴールを記録すると、リーグ戦再開後の第5節、サンフレッチェ広島戦で先発に抜擢。ここから柏レイソルの快進撃が始まっている。

手塚選手の最大の特徴はポジショニングとパスで味方に時間とスペースを与える事だ 時にはセンターバックの間に下がって攻撃の起点となり、また中盤でボールが手塚選手を経由することで、前線の選手は攻撃をスムーズに行う事ができるようになっている。

シュートストッパー、中村航輔

ハイプレスを行うという事は、必然的に最終ラインの背後に大きなスペースを空ける。 もちろんそこを使わせない為にプレッシングを行うのだが、そのプレッシングが弱まった時や、アクシデントがおこれば、簡単に最終ラインを突破される事も起こり得る。

そんな緊急事態に輝きを見せているのが背番号23番の守護神、中村航輔選手。 日本代表にも選出された中村選手は、シュートストップでは現在Jリーグナンバーワンと言ってもいいだろう。
22歳の中村選手ももちろん柏レイソルU-18出身。トップチームに昇格した当初は現在京都サンガFCでプレーする菅野孝憲選手がおりプレー機会は得られなかったが、2015年に期限付き移籍をしたアビスパ福岡で出場機会を掴むと大ブレイク。
柏レイソルに復帰した2016年に菅野選手に代わりポジションを掴むと安定感も増してきている。

下部組織出身者が多く、チームの戦い方が整備されている柏レイソルは2017年のJリーグで最も注目を集めるチームと言えそうだ。