世界的名将・ベンゲル
アーセナルで長年、監督を務めるなど世界的にも有名なベンゲルが、グランパスの監督だったということは本当にすごいことだ。彼が就任する前、ストイコビッチや小倉隆史など名プレーヤーがいながらも最下位に沈んでいたチームを見事に立て直し、天皇杯優勝に導いた。
彼の方針は、選手の長所を活かすこと。短所を補うのではなく、個々の長所が活きる戦術やチームワークを築くことに取り組んだ。
また、世界的に有名な監督が来たことは選手の精神面にも有益だったに違いない。勝つためのチームをゼネラルマネージャーとして奔走して作り上げたベンゲルが残した功績は、今後も受け継がれていくだろう。
守備の意識を植え付けた名将・ベルデニック
降格候補の筆頭と言われていたジェフを2位にした実績を買って、グランパスが引き抜いたのがベルデニックだ。突然の解任劇で悔しい思いをしたサポーターもいただろうが、彼がグランパスを指揮していたころに残したものは「守備の意識と約束事」だ。
それまで、どちらかといえば攻撃的なサッカーを好んでいたグランパスに、しっかりとした守備意識を根付かせたのがベルデニックと言える。
かといって攻撃を疎かにするわけではなく、少ないタッチでゴールに迫るプレースタイルはサポーターを興奮させた。監督として残したい選手を残さなかったフロントとの溝が深まって退団となったため、サポーターは悔しい思いをしたものだ。
選手でも監督でもストイコビッチ
「ピクシー」の愛称で親しまれたストイコビッチは選手として大人気だったが、監督としても大人気だった。任期中、クラブ史上初のJリーグ優勝、アジアチャンピオンズリーグでベスト4など、グランパスの歴史の中でもとりわけ輝かしい成績を収めた監督だ。
中でも2010年は、サイドを活用したスピーディーな攻撃で勝利を奪い続け、最多勝点、最速優勝の記録をつくった。彼の起用方針はスタメンを固定するというもので、比較的不動のメンバーで試合に臨み連携を強めたことが特長だ。
現役時代からグランパスのスターだった人物が、監督として戻った上、優勝までしたのだから、グランパスに残したものはとてつもなく大きい。
規律を重んじたジョアン・カルロス
グランパスにとって衝撃的だった監督は、ジョアン・カルロスだった。そのとき、主力3選手を放出するという決断が下された。日本代表級の選手たちの放出は、全国に衝撃を与えた。フロントは3選手ではなく、カルロス監督をとった。
この行為によって、選手やサポーターから反グランパスフロントの動きが出たのは事実なのだが、監督としては「チームを守るための判断」として放出を選んだという。プロとして、規律を重んじる意識を植え付けたのはカルロスの実績といえるかもしれない。
かわいそうな面もあった西野明
日本人の名将の一人とも言われる西野明がグランパスに残したのは、実績ではなく意識だ。前任のストイコビッチ監督はスタメン固定で臨むことが多く、その分若手が育っていなかった中で、監督を引き継いだ西野は任期中に目を見張るほどの成績を残すことはできなかった。
監督のレベルに選手がついていけなかったとも言えるかもしれない。求める意識やプレーに答えてもらえないうちに、ストイコビッチけが人が出て、なんとかやりくりするしかなかい状況に陥った。
それでも、今シーズンのキャプテンを務める田口は、西野が育てた一人で、任期中に播いた種がようやく芽吹いたと言ってもいいかもしれない。