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今最も注目すべき若手、U-20日本代表・ガンバ大阪、堂安律選手

2017 6/30 12:56Aki
doan ritsu/堂安律選手
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『ESPN』が選ぶ「U-20ワールドカップで見るべき10人」

2017年5月20日から始まったFIFAU-20ワールドカップを目前に、海外メディア『ESPN』はU-20ワールドカップで注目すべき10人という記事を発表した。
選ばれているのは、フランス代表として出場するイサ・ディオップ選手やリヴァプールFCが保有権を持っているアメリカ代表ブルックス・レノン選手など。そしてその中で、日本代表として出場するガンバ大阪の堂安律選手も選ばれた。
堂安選手は世界のメディアにとって、この世代で最も注目を集める選手の1人であるという事だ。 そこでは堂安選手について下記の様に書かれている。

昨年AFCU-19選手権でMVPを受賞した18歳のキャリアは上昇中、ガンバ大阪で両サイドのレギュラーとなってきている。
日本代表では右ウイングとしてプレーする可能性が高い堂安選手のストロングポイントは左足から繰り出されるシルキータッチ。その左足を使ったロングレンジのシュートやスルーパスで瞬時にゲームを動かす事ができる。
堂安選手はフィジカルよりも技術に特徴があるが、スピードで20ヤードを制圧し、中央に入ってゲームを動かす。

出典: ESPN FC

中学年代から既に注目を集めていた堂安律選手

兵庫県や大阪府などの関西地方にみられるそうだが、全国的にもかなり珍しい姓を持つ堂安律選手は兵庫県尼崎市出身である。3歳年上の兄である堂安憂選手は長野県の創造学園高等学校で全国高校サッカー選手権や高校総体にも出場しており、2017年現在びわこ成蹊スポーツ大学でプレーしている。
堂安律選手は中学入学時にガンバ大阪ジュニアユースに加入すると、現在はガンバ大阪はもちろんU-20日本代表のチームメイトである市丸瑞希選手、髙木彰人選手らと共に、2012年に高円宮杯第24回全日本ユース(U-15)選手権大会、JFAプレミアカップ2012 、日本クラブユースサッカー選手権(U-15)大会を制し、史上初となるU-15年代全国3冠を達成。全国的に注目を集める選手となった。
高校に入りガンバ大阪ユースに昇格すると、高校2年生でトップチームに2種登録となり、トップチームに帯同するなど、先輩にあたる宇佐美貴史選手とほぼ同じタイミングでトップチームデビューを果たした。

複雑な思いを抱えていた2016年

トップチームに昇格を果たした堂安選手は、宇佐美選手や井手口陽介選手、さらには家長昭博選手、新井場徹選手、稲本潤一選手など、これまで飛び級でトップチームに昇格を果たした先輩たちのように、トップチームでのプレーができると考えていた。しかし、実際に戦いの場となったのは、この年より設立されたガンバ大阪U-23となり、堂安選手自身は複雑な思いを抱えていたようだが、攻撃的ミッドフィルダーとして10得点を記録する。
U-15日本代表から年代別日本代表選手の常連となっていた代表チームでは、AFC U-19選手権2016で大活躍をみせた。大会初優勝の立役者となり、MVPにも選出される。また、日本人選手としては5人目となる、アジア年間最優秀ユース選手賞も獲得する。
ただ、トップチームでの出場は途中出場3試合に終わった事が堂安選手にとって納得がいかず、複雑な思いを抱えていた。そしてトップチームの監督である長谷川健太監督に自分の問題点を直接質問したのだ。

長谷川監督に要求されたのはプレーのバリエーションを増やす事

長谷川監督から説明されたトップチームで起用されない理由は、プレーのバリエーションが少ない事だった。そしてその中でも特に、裏への飛び出しについて改善を求められた。
堂安選手は、トップチームに初めて合流した16歳の時から、足元でボールを受けてからのプレーはずば抜けていた。それはトップチームでデビューする前に行われていたセレッソ大阪との練習試合からそうで、その練習試合に出場していた関口訓充選手、酒本憲幸選手、現在オーストラリアのウェスタン・シドニー・ワンダラーズFCでプレーする楠神順平選手や、現松本山雅FCの安藤淳選手と相対しても鋭いプレーを見せていた。
しかし、時間の経過共にそのプレースタイルが相手に知られると、徐々に目立たなくなっていたのだ。 長谷川監督はその問題を解消する為にプレーバリエーションを増やすこと、そしてその手段として、裏への飛び出しを徹底することを求めた。
堂安選手にとって恵まれていたのは、2016年のトップチームにはプレーバリエーションを増やすために最高のお手本となりえる阿部浩之選手、大森晃太郎選手という同じポジションの選手がいた事である。特に堂安選手と同じ右サイドハーフで絶対的な存在だった阿部選手は、攻守においてプレーバリエーションが豊富な選手であったことで、堂安選手は阿部選手のプレーに注目し参考にした。

本格的にブレイクの兆しを見せる2017年

阿部選手が川崎フロンターレへ、大森選手がヴィッセル神戸へと移籍した2017年。堂安選手はトップチームで徐々に出番を増やし始め、2017年4月21日、J1リーグ第8節大宮アルディージャ戦でJ1のリーグ戦で先発デビューを果たした。そしてこの試合で2得点を決めると、続く4月25日のAFCチャンピオンズリーグアデレード・ユナイテッドFC戦でも先発し1得点、さらに4月30日J1リーグ第9節横浜F・マリノス戦でも先発し1得点。この得点がこの試合の決勝点となった。
この横浜F・マリノス戦の得点は技術的にはフリーの状態で蹴り込むだけという簡単なものだったが、スペースに走り込んだからこそ産まれた得点である。それまでの堂安選手に見られない、長谷川監督が求めた形で奪った得点だった。
堂安選手にとってこの得点は大きな自信になっている事は間違いない。 2017年に入って堂安選手の試合前後の発言には「入っていく」や「出ていく」といった、ボールを持っていない時の動きについての言葉が増えている。