3週連続DAZN週間ベスト5ゴール!に選出
2017年、毎週発表されている「DAZN週間ベスト5ゴール!」で明治安田生命J1リーグ第10節から第12節にかけて毎週選出されている選手がいるのをご存知だろうか。
その選手とは清水エスパルスの背番号8番、シーズン開幕後の3月29日に期限付き移籍で加入が発表されたチアゴ・アウベス選手だ。
来日したのが3月中旬で、その後正式に加入が決定したもののコンディション調整に時間がかかり、デビューは4月12日のYBCルヴァンカップ北海道コンサドーレ札幌戦まで待たなければ行けなかったが、リーグ戦デビューとなった4月16日の第7節大宮アルディージャ戦では、途中交代でピッチに立つと試合終了間際のの貴重な同点ゴールをアシストした。
2試合目となる第8節川崎フロンターレ戦でも、途中交代でピッチに立つと後半アディショナルタイムに左足で同点ゴールを叩き込んだ。
先発メンバー入りとなったのがリーグ戦第10節からである。5月21日時点でこの第10節から第12節まで3試合連続先発出場、3試合連続ゴール、3週連続DAZN週間ベスト5ゴール!に選出されているのだ。
清水エスパルスに必要だったストライカー
清水エスパルスは2016年はJ2で戦っていた。1年でのJ1復帰を目指し、昇格請負人とも言われる小林伸二監督を招聘したものの、シーズン序盤はJ2降格の大きな要因となった攻守のバランスの悪さを改善することに時間を擁し、勝ち点9位前後をうろうろするという厳しい結果が続いていた。
しかし、徐々に守備のバランスが改善されるようになると攻撃陣も爆発する。チームのエースである鄭大世選手が26得点でJ2得点王となり、また10番を背負い鄭大世選手とコンビを組んだ大前元紀選手は、大きな怪我で長期離脱があったもののリーグ3位となる18得点を記録した。
攻守にバランスが取れるようになった清水エスパルスは快進撃を見せ、逆転で自動昇格圏となる2位に滑り込み1年での昇格を決めた。
清水エスパルスは2017年にJ2から昇格してきた3チームの中では最も攻守のバランスが取れたクオリティの高いチームだと思われた。
しかしシーズン開幕前に大前選手が大宮アルディージャへの移籍を発表。そして清水エスパルスは大前選手に代わる選手は獲得できないまま開幕を迎える事となった。
2017年開幕後は昇格3チームの中ではいち早く第2節で初勝利を挙げた清水エスパルスだったが、攻撃陣には鄭大世選手というエースストライカー、絶対的な存在となった白崎凌兵選手もいるものの、J1で戦う為には核となる攻撃的な選手が少なくとももう1人必要な事は明確だった。
チアゴ・アウベスこれまでののキャリア
清水エスパルスに加入が決まったチアゴ・アウベス選手だが、日本ではそれほど名前を知られた存在ではなかった。
若い頃にはブラジルの名門クラブサントスに所属しており、当時のチームには現在バルセロナでプレーするネイマール選手がいた。同年代のチアゴ・アウベス選手とネイマール選手だがサントスで共にプレーした4年間、同時にピッチに立った記憶はないというほどチームでの立場は違っていたそうだ。
その後ブラジル国内の幾つかのクラブでプレーしたものの、特に目立った成績は残せておらず、2015年に韓国の浦項スティーラーズへ移籍する。大きな転機となったのが翌2016年に同じ韓国の城南FCに移籍した事からだ。それまではチャンスメイカーとしてのプレーが多かったが、城南でシーズン序盤から突然ゴールを量産するようになると、シーズン途中にサウジアラビアのアル・ヒラルFCへ移籍することとなる。
しかし、サウジアラビアのアル・ヒラルでは、再び出場機会を減らす事になる。
左利きで左足のキックの精度が高い事から、左サイドバックとしてのプレーを求められる事もあった。
そんな時にオファーを出したのが清水エスパルス。日本でのプレーは初めてとなるが、韓国で2シーズンに渡っての経験がある為、チアゴ・アウベス選手移籍を決断した。
市場価値240万ユーロの評価を受ける選手
下積み時代が長く、ヨーロッパや世界規模の大会でのプレー経験もないチアゴ・アウベス選手だが、アル・ヒラルに移籍する際にかなり高い評価を受けていた様で、ヨーロッパの移籍マーケットの情報をデータベース化したサイトtransfermarket(http://www.transfermarkt.de)ではチアゴ・アウベス選手を市場価格240万ユーロ(約3億円)と評価している。
これは、2017年5月20日現在の市場価値としてはJ1で4番目の評価となり、チアゴ・アウベス選手よりも高い評価を受けているのは、ヨーロッパでの実績が豊富なセレッソ大阪の清武弘嗣選手(500万ユーロ)、イタリアでの経験が長いサガン鳥栖のビクトル・イバルボ選手(350万ユーロ)、ヨーロッパでの経験は無いが、ブラジルの強豪クラブでの実績が豊富なヴィッセル神戸のニウトン選手(250万ユーロ)の3人しかいない。
つまり日本代表の森重真人選手、西川周作選手、山口蛍選手らや、U-20の年代までブラジル代表の中心的存在だったアデミウソン選手よりも高い評価を受けている事になるのだ。
ヨーロッパでのプレー経験が無い選手としては、異例の高さとなっている。
悪魔の左足でゴールを量産
清水エスパルスでの初練習では、試合から遠ざかっていた事によりインターバル走で音を上げるほどだったチアゴ・アウベス選手だが、時間をかけてきっちりコンディションを整え、公式戦に出場するようになると、素晴らしいプレーを連発している。
第7節大宮アルディージャ戦でリーグ戦デビューを果たすと、その試合でいきなりアシストを記録し、翌第8節川崎フロンターレ戦では試合終了間際に同点ゴールを記録した。先発となった第10節のガンバ大阪戦からは第11節のサガン鳥栖戦、第12節の浦和レッズ戦と3試合連続得点中で、5月20日現在、出場6試合で4得点2アシストと、とんでもないペースでゴールを量産している。
この4得点に共通しているのは全て左足でのゴールだということだ。10節から12節までの3得点が「DAZN週間ベスト5ゴール!」に選出されていることからもわかるように、そのゴールは全てゴールキーパーが止めようのない素晴らしいゴールなのである。さらに浦和戦でみせた信じられないほどのカーブをかけたゴールから、鳥栖戦のパワフルなゴールまでバリエーションも豊富で、対戦相手にとってまさに悪魔の左足となっている。
今Jリーグで最も注目してほしいのは、チアゴ・アウベス選手の左足だ。