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いまさら聞けないJリーグ秋春制移行 いつから?なにが変わる?なぜ変える?メリットは?デメリットは?

2025 10/29 15:35SPAIA編集部
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『秋春制』移行の狙いをおさらい

秋春制移行の2026-27シーズンのJリーグ開催期間が決定した。30年続いたカレンダーを捨て、リーグは新時代を迎えようとしている。

しかし、なぜ今、30年続いたカレンダーを捨て、大きな痛みを伴う可能性のある改革に踏み切るのか。秋春制移行の目的はただ一つ、Jリーグを「世界と戦う舞台」へと変革するためだ。

日本のサッカーを次のステージへ進めるための、避けては通れないこの戦略について、変更点やメリット・デメリットなど、いまさら聞きにくいアレコレについて改めてまとめた。

【いつから? なにが変わる?】新カレンダーの姿

移行がスタートするのは、2026-27シーズンからだ。我々が慣れ親しんだ「2月3週頃に開幕し、12月1週頃に閉幕する」というカレンダー は、2025年シーズンが最後となる。

2026年からは「8月上旬に開幕し、翌年6月上旬頃に閉幕する」スケジュールとなる 。最も暑い時期の前半となる6月、7月は、選手がコンディションを整える「シーズンオフ」となる。そして、これまでオフだった冬が、新たな戦いの舞台となる。降雪期間は「ウィンターブレーク」が設けられ 、具体的には12月2週頃までリーグ戦を実施し、約2ヶ月の中断期間を経て、2月3週頃に再開するプランだ 。

【なぜ変える?】世界から取り残されるな! Jが抱える3つの課題

1993年5月15日に開幕したJリーグは、この30年で10クラブから60クラブへと飛躍的に拡大し、日本代表も世界と戦えるチームへと成長した。ACL優勝という栄誉も手にした。

だが、その裏で「世界との差」は拡がる一方だった。衝撃的なデータがある。1994-95シーズンあたり、Jリーグのクラブ売上合計はイングランド・プレミアリーグとほぼ同等の約500億円規模だった。しかし2022年、Jリーグ58クラブの合計が1,375億円であるのに対し、プレミアリーグ(20クラブ)は約8,300億円と、天文学的な差をつけられている。海外のトップクラブの平均売上は600億円を超えるが、Jリーグのトップ5クラブでさえ平均68億円に過ぎない。

この絶望的な現状を打破し、「次の10年」で「アジアで勝ち、世界と戦うJリーグ」を実現し、究極の目標である「W杯優勝」へつなげるため、リーグは3つの巨大な「壁」の破壊を決断した。

課題1:ACLとの「ズレ」
アジアの頂点を決めるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)が、2023年から秋春制へ移行した。これにより、春秋制のJクラブは、シーズンをまたいで重要なトーナメントを戦うという致命的な不利を背負うことになった。さらに2025年からはクラブW杯が32チームに拡大。その出場権はACLの成績で決まるため、アジアで勝てなければ、世界と戦う土俵にすら上がれないのだ。

課題2:欧州移籍マーケットとの「ズレ」
世界の移籍マーケットは、欧州シーズンの開幕前である「夏」が最大で、その規模は冬の約5倍(夏1兆300億円vs冬2,200億円)にもなる。だが、その「夏」はJリーグのシーズン真っ只中。結果、有力選手がシーズン途中で引き抜かれ、チーム力は低下。さらに、クラブは選手価値を最大化できていなかった。モデルケースによれば、J1から欧州中堅リーグへ移籍金1億円で渡った選手が、わずか1~2年でその価値を20億円に高騰させる例もある。Jリーグ全体での年間海外移籍金売上がわずか15~25億円程度という現状は、あまりにも「もったいない」の一言に尽きる。

課題3:猛暑による「パフォーマンス低下」
日本の夏は、もはやアスリートの限界を超えている。6月から9月の猛暑期において、選手の生命線である「ハイインテンシティ(高強度)走行距離」は顕著に低下する。Jリーグのパフォーマンスは、開幕から上昇し、夏場(8月)に-19.1%という底を打つ「谷型カーブ」を描く。一方、欧州5大リーグは開幕からコンディションを上げ続ける「山型カーブ」だ。これでは、世界基準のプレーなど望むべくもない。

【メリットは?】目指すは「世界基準」の好循環

シーズン移行は、これら3つの課題を一気に解決する「特効薬」だ。

最大のメリットは、選手のパフォーマンスカーブを、消耗する「谷型」から成長する「山型」へと根本的に変化させることにある 。コンディション低下をひたすら「耐える」シーズンから、アスリートとして「高みに挑戦していく」シーズンへ 。『Jリーグでプレーすれば世界基準のプレーができ、アスリートとして成長できる』。その環境を実現させることが、移行の核心だ。

具体的には、3つの大きな効果が期待される。

1.ACLシーズンとの一致:シーズンをまたぐ不利が消え、万全の体制でアジアの頂点、そしてクラブW杯での躍進を目指せる。莫大な国際大会の賞金獲得も現実味を帯びる。
2.欧州移籍マーケットとの一致:シーズンオフ(夏)に選手を移籍させられるため、移籍金収益の爆発的な拡大が期待できる。有力選手のシーズン途中離脱という悪夢からも解放される。
3.猛暑での試合数減少:あの過酷な夏場(6-7月)がオフになる。選手のコンディションは守られ、プレーの質は飛躍的に高まるだろう。

「フットボール水準の向上」と「移籍金収益の拡大」が両立し、それが「ファン・サポーターの熱狂」と「リーグ売上の拡大」につながる。この黄金の好循環こそ、Jリーグが描く未来図だ。

【デメリット(課題)は?】「雪国」問題への対応

もちろん、この大改革にリスクはない。最大の懸念は、言うまでもなく「降雪地域」のクラブへの影響だ。移行後は12月2週頃まで試合があり、2月3週頃から再開する。雪との戦いは避けられない。実際の日程シミュレーションでは、札幌、新潟、山形、岩手といった降雪地域のクラブが、ウィンターブレークを挟んでアウェイ連戦を強いられる可能性が示されている。

この深刻な課題に対し、Jリーグは万全の支援策を講じる構えだ。具体的には、ウィンターブレーク中のキャンプ費用や、やむを得ず『ホームタウン外でキャンプを行いながら試合をする際』の「キャンプ費用」を支援する。さらに、練習環境を確保するための「エアドーム」の整備や、スタジアムの降雪・暑熱対応といった「施設整備」も強力にバックアップする方針だ。

30周年を迎えたJリーグ。次の30年に向けて、「日本サッカーの水準向上」という開幕当初からの理念を実現するために下された、未来への「賭け」とも言える決断だ。この変革の先に、我々が夢見る「世界一のリーグ」の姿があると信じたい。

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