2016年ファーストステージチャンピオン
2015シーズンファーストステージは負け越しに終わり、セカンドステージ3試合を終えたところで監督交代となった一昨シーズン。しかし後任にクラブ史上2人目の日本人監督となる石井正忠コーチが監督に就任するとチームは6連勝と上向きに。3年ぶりのタイトルとなるナビスコカップ優勝を果たし、セカンドステージは2位と大きく順位を上げました。
そして迎えた2016年のファーストステージはリーグ最少失点を記録しステージ優勝。
鹿島アントラーズ創世記にはジーコ不在時に10番も背負った中心選手だった石井監督(当時は固定背番号ではありませんでした)は鹿島アントラーズの原点を取り戻し、激しい競争原理と、練習にも実践さながらの厳しさを持ち込んだことで、チームの勝負強さを取り戻しました。
中心選手として躍動を見せたのはカイオ。高速ドリブルを武器とするアタッカーは2015年先発の座から外れる事もありましたが、2016年はチーム内の競争を勝ち抜き再び先発機会も増やしました。
しかしセカンドステージに入り、カイオが中東に移籍するとチームは落ち込む事に。バランスを崩したチームは冷静さを欠き、また厳しい練習にも一端があったのか負傷者も増えたことで歯車は狂ってしまい、セカンドステージは11位と低迷してしまいます。
Jリーグチャンピオン
レギュラーシーズンは最悪と言ってもいい終わり方をしてしまった鹿島アントラーズ。しかしリーグ最終戦から19日間という期間が空いたことが大きく影響したのか、この中断期間でチームを確実に立て直し、まずチャンピオンシップ準決勝では不利とも言われたアウェイでの川崎フロンターレ戦で粘り強い戦いでリーグナンバーワンの攻撃力を誇る川崎フロンターレを完封し勝ち抜け。
さらに決勝ではホームでの初戦に敗れてしまうという厳しいスタートとなりながらもアウェイでの2戦目試合でも先制を許す中でもチームの全員が動揺することなく、逆転優勝の為に必要なのは2ゴール以上決めることだとチームにとって必要な事をブレずに集中して追い続けたことで、逆転でリーグチャンピオンに輝きます。
そしてさらにその強さを見せたのは開催国代表として出場したクラブワールドカップ。初戦から相手チームを圧倒する試合はありませんでしたが、ブレずに戦い続けることでアジア勢初の決勝進出だけでなく、決勝では世界トップのレアル・マドリードに対してあと一歩に迫る世界中にインパクトを残す大活躍。2017年元日に行われた天皇杯決勝にも勝利し、シーズン2冠を達成。この1ヶ月と少しは鹿島アントラーズの特徴である勝負強さを遺憾なく発揮し王者鹿島の姿を印象づけました。
鹿島アントラーズの勝負強さの秘密
鹿島アントラーズの勝負強さの元になっているのは、想定している状況の幅の広さとそれを支える選手たちによるチームの献身性。サッカーでは「自分たちのサッカーをすれば勝てる」というコメントを聞くこともよくあります。
もちろんチームが得意なことを前面に出す事は強さを発揮する方法の1つではあります。しかしそれは言い換えれば相手をあまり見ないという事にもなり得、得意なことがうまくいかないと、また理想としている展開と異なった状況に陥ると、チームが慌ててしまう事にもつながる。
チームが慌ててしまうと、得意だったプレーも少しずつ噛み合わなくなり自らバランスを崩してしまう場合も。チャンピオンシップ準決勝では試合終盤の川崎フロンターレが、決勝2戦目では優勝を目前にした浦和レッズが後半にこのようなチーム状態に陥ってしまいました。
しかし鹿島アントラーズは決して得意なことだけをしようとするチームではありません。なので、たとえ理想通りではない状況に陥ったとしてもそのほとんどの状況は想定内。選手は落ち着いて対応できるのです。
チャンピオンシップやクラブワールドカップはまさにその真髄とも言える試合で、厳しい状況に陥ったとしてもパニックに陥ることなく選手や監督がおちついて対応し続けたことで、この躍進に繋がったのでしょう。
新加入選手が続々決定
鹿島アントラーズは優勝したチームでありながらも、さらなる進化を目指し新戦力を多く獲得しています。
2017年に加入が決まっているのは、アルビレックス新潟での活躍からJリーグナンバーワンボランチとも言われるレオ・シルバ選手、ヴィッセル神戸でスピードを活かしたプレーでチャンスを量産したペドロ・ジュニオール選手の実績あるブラジル人選手だけでなく、アビスパ福岡で高速ドリブルを見せていた金森健志選手、昨年加入した三竿健斗選手の実の兄である三竿雄斗選手らのJリーグで既に注目を集めていた期待の若手選手ら、そしてさらにはブラジル代表歴も持つ23歳のアタッカー、レアンドロ選手といずれも注目の選手ばかり。
海外移籍が噂される柴崎岳選手の去就は不透明ですが、仮にチームを去ったとしても昨年以上の陣容となることは間違いありません。
チャンピオンチームでありながらも積極補強の理由
これだけの積極的な補強はチャンピオンチームとしては異例とも言える状況です。
そんな異例とも言える決断を行った理由は、現状に対する危機感。
鹿島アントラーズを22年目を迎える、鹿島アントラーズのこれまでを支えてきた強化部長鈴木満常務は現在のチームを「チャンピオンシップから天皇杯までの1ヶ月間は素晴らしい戦いを見せたがひとつサイクルが乱れるとセカンドステージのような状況に陥る可能性もある」と分析。
2016シーズンはリーグチャンピオンとなりましたが、年間勝ち点としては3位に終わっており、またレアル・マドリードとの決勝戦を経験したクラブワールドカップも、2017年大会はUAEでの開催となるため、出場するためにはアジアチャンピオンズリーグの優勝が必須。
そのためには、「チーム内の競争をもっと激しくするような補強をして、昨シーズンのように上手くいけば勝てるチームではなくて、力で勝てるチームを目指していく」必要を感じているから。
クラブワールドカップ決勝で世界トップのビッグクラブレアル・マドリード相手に善戦したことは通常ならクラブのハイライトになりえる出来事ですが、鹿島アントラーズはそれすらもチーム力をさらにアップさせるチャンスととらえ、さらなる強化を敢行しているのです。