日本代表にずらりと並ぶ元大分トリニータの選手
大分県をホームタウンとする大分トリニータは、1999年に始まったJ2に初年度から参加。2003年には名将小林伸二氏のもとJ1昇格。2008年にはヤマザキナビスコカップ(当時)に優勝し、九州勢初のタイトルを獲得します。中心になったのは下部組織出身の西川周作選手、清武弘嗣選手、東慶悟選手、梅崎司選手や森重真人選手、金崎夢生選手らの若手選手。
現在も日本代表の中心選手として活躍している西川選手、清武選手、森重選手、金崎選手やJ1のチームで活躍する東選手や梅崎選手は、みんな大分トリニータ出身の選手です。
チームに暗雲が立ち込めた2009年から2015年のJ3降格
チームにとって大きな分岐点となったのは2009年でした。シーズン中に発覚した経営問題により翌年以降次々と中心選手を放出。西川選手、清武選手、東選手、梅崎選手、森重選手、金崎選手らはここでチームを去ることになります。
中心選手を失ったことで2010年にはJ2降格となり、2012年にJ2で6位に終わりながらJ1昇格プレーオフでの劇的な勝利でJ1昇格を達成するものの、2013年はホーム未勝利のまま再びJ2降格。そしてさらに選手を放出することになり、2015年には入れ替え戦の末にJ3降格が決定。J1を経験したことのあるチームとしては史上初となるJ3降格でした。
苦しい状況で迎えることとなったJ3
チームは1年でのJ2復帰を至上命題に2015年を戦った全選手に契約延長のオファーを出したものの、J3降格という現実は厳しい結果となり、主力選手の大半がチームを移籍。13人もの選手が退団することとなります。
チームは何とかJ1やJ2のチームなどから期限付き移籍を含め9人を加入させ、さらに下部組織からも3人を昇格させますが、チームの陣容としては当初思い描いていたものに達することはできなかったというところが現実でした。
クラブのOB片野坂知宏氏が監督に就任
この危機に、クラブに恩返しをしたいと帰還したのは、クラブOBで、西野朗監督、ペトロヴィッチ監督、森保一監督、長谷川健太監督とJリーグを代表する名将の下でコーチを務めてきた片野坂知宏氏でした。片野坂知宏氏は監督としてのキャリアは初めてながらも、2012年~2014年まで3年連続でリーグ優勝を達成したコーチ。今季の大分トリニータにとって片野坂監督の存在は大きなものでした。
片野坂監督が徹底したのは「順位に一喜一憂せず目の前の試合に集中し、最大値を出し続けること」。戦術の徹底に時間は要しましたが、これまでの実績ではなく練習でのパフォーマンスを重視し、選手の士気を高め、若手が多いチームに競争心を植え付けることに成功しました。
成長を遂げた若手選手たち
片野坂監督は開幕戦でルーキーの岩田選手や吉平選手を抜擢。昨シーズンは2試合しか出場がなかった2年目の福森選手もシーズン序盤にチャンスを掴むとその後はレギュラーに定着。昨季チャンスを与えられ残留した松本選手や鈴木選手らも着実にチームの中心選手としてポジションを掴みます。
シーズン序盤は連携ミスによる失点や決定力不足で10位にまで順位を落とす苦境に陥りますが、片野坂監督は信念を曲げることなく継続することでチームの完成度を高めると、シーズン中盤以降はチームに一体感が生まれ、勝ち点を積み重ねることに。
残り11試合の時点でも首位栃木との勝ち点差は9という厳しい状況でしたが、失点が減り攻撃の形を増やしたチームは最終盤で5連勝し、逆転優勝につなげます。
来季の展望
経験豊富でチームの精神的支柱である元日本代表の高松選手が引退を発表するなど、来季への不安要素はありますが、片野坂監督が積み上げた今季は来季に向けて大きな財産になるはずです。
もちろん、J3からJ2に昇格することで対戦相手も強くなるので、今季終盤のような快進撃は難しいかもしれませんが、今季見せたように片野坂監督は決してブレないはず。
今季見せた監督を筆頭にクラブ、スタッフの一貫したビジョンによって、再びJ1昇格を目指して着実に進歩していくことが期待されます。
まとめ
まさかのJ3で戦うことになった大分トリニータの2016年をまとめてみました。
おそらくこのJ3は予想外の結果だったと思いますが、今季の経験は大分トリニータにとって大きな財産となるはず。
大分トリニータの2017年に注目です。