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相手FWへの31本のパスを許した日本 カタール戦で見えた致命的な弱点

2019 2/4 11:00SPAIA編集部
日本代表,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

エース大迫のプレーは良好

日本代表は先のアジアカップで準優勝に終わった。準決勝で最大の強敵イランに勝利したことで楽観論も広がっていたが、決勝でまさかのカタールに完敗。日本はなぜカタールに敗れたのか。このカタール戦にこそ日本の弱点が凝縮されており、それはデータでも如実にあらわれていた。映像からデータを収集し、分析した。

日本の絶対的なエースはFW大迫勇也だ。彼が不在、あるいは止められてしまうと日本は攻撃がうまく機能しない。果たして彼のパフォーマンスはどうだったのか。

大迫のデータ,ⒸSPAIA

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カタール戦、大迫は23回パスを受け、そのうち相手にボールを渡してしまったのは3回。成功率は87%になる。失敗のうち1回は体を反転してシュートチャンスにつなげているので、実質的に失敗は2回と言っていいだろう(パスを受けてのトラップミス、受けた後出したパスが相手に渡ったものを失敗と定義した。なお、味方に渡せなかったもののフリーキックを獲得したものは成功とした。他選手も同様)。

イラン戦ではどうだったか。大迫は16回パスを受け、そのうち相手に渡してしまったのは4回。成功率は75%になる。プレー機会という意味では、カタール戦の方がより多くあったことになり、成功率も上だ。 他の指標でも3-0と完勝したイラン戦よりも1-3と完敗したカタール戦の方がいいデータを出している。大迫に関しては、データ上は「問題ない」という結論が導き出せる。

2列目はどうだったのか?

大迫とともに攻撃の軸となる2列目の選手についても見てみよう。日本のフォーメーションは基本的に4-2-3-1で、「3」が2列目となり、左から原口元気、南野拓実、堂安律がアジアカップでのレギュラーだった。

2列目の選手にボールが渡らない、あるいは彼らがパスミスを連発しているようだと、そこがブレーキになっていたことになる。だが、実際はそうではなかった。パス受け、パス出しの成功率はカタール戦もイラン戦も大差はない。原口に至っては、カタール戦は62分間の出場にもかかわらずイラン戦よりも多くのパスを受けている。

2列目のデータ,ⒸSPAIA

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さらに攻撃時の競り合いに関しても、遜色のないデータが出ている(日本の攻撃時、当該選手がボールを持ち、相手選手との競り合いになった場合、ドリブルで突破あるいは味方にパスを出せたものを成功と定義した)。 つまり、2列目の選手にはしっかりとボールは渡っており、そこからの展開も問題ないことが示されている。大迫含めて攻撃陣に関しては「機能していた」と結論付けてもいいはずだ。

フォーメーションのかみ合わせを修正できず

問題はどこにあるのか。1つの象徴的なデータがある。それがカタールの11番FWアクラム・アフィフに関するものだ。 この試合、キーマンになっていたのがアフィフだった。日本のフォーメーション4-2-3-1とカタールの3-5-2ではかみ合わせが悪く、アフィフが「浮いた」状態になっていた。彼が自由にプレーできてしまったことがカタールの攻勢を強めた大きな要因だったが、それはデータにも出ていた。

アフィフは実に31本のパスを受けた。これは両チームの攻撃陣では最多の数である。日本でこれを上回ったのはボランチ以下の選手たちのみ(アフィフ以外の選手は公式記録などを参考にした)。日本の攻撃も悪くなかったが、それ以上にカタールはキーマンであるFWのアフィフにボールを集め、より効果的な攻撃ができていたことを意味する。

アフィフのデータ,ⒸSPAIA

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さらに驚異的なデータがある。アフィフがパスを受けた31本のうち25本は前半だ。しかもそのうち18本はノーマークでボールを受けている。前半で2点をリードされた日本。45分間でアフィフに好き放題やられたということになる。

ちなみにアフィフは試合全体で45本(成功数:37本)のパスを出し、これも両チームの攻撃陣で最多であった。 ここに日本の弱点が凝縮されている。これだけフリーでボールをもらっている選手がいるにもかかわらず、その対応が全くできていなかった。前半途中でアフィフへの対応を改善できれば、試合展開は違ったものになっていたはずだ。なお、日本はハーフタイムにポジショニングの修正を施し、後半アフィフがノーマークでボールを受けた回数は1つと激減。しっかり対応すれば、抑えられたことの証左である。

敗れた試合では「あの場面で決めていれば」という決定力不足への指摘や、「あそこでファウル覚悟で止めていれば」という守備面の課題が聞かれることが多い。たしかにその側面も間違いではないが、「局所」での状況分析は「たられば」に過ぎない。

重要なのは全体像を把握し、構造的な欠陥を見つけることである。カタール戦、日本は相手のキーマンをフリーにした。そして、それを試合中に修正できなかった。この「修正力のなさ」こそが弱点であり課題である。ここに向き合わなければ、コパ・アメリカや次のワールドカップなどよりレベルの高い試合に勝っていくのは難しいだろう。

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