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日本、モロッコ、アイスランド…ロシアに美しく散った男たち 敗者の2018年W杯

2018 7/17 10:41Takuya Nagata
ワールドカップ,ロシア大会,サッカー日本代表,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

涙をのんだ31チーム

32カ国が本大会に出場した2018年ロシアワールドカップは、2018年7月16日(日本時間)フランスの優勝で幕を閉じた。神様ペレ以来となる十代でのワールドカップ決勝ゴールを決め、伝説の選手になることが予感されるキリアン・エムバペ(19歳)らにスポットライトが当たった。

一方、世界の頂点を前に31チームは涙をのんでロシアを後にした。その中には、負けながらも実にあっぱれな数々のチームや選手がいた。

サムライらしく戦った日本代表

グループHを2位通過した日本代表は、決勝トーナメント一回戦で今大会3位のベルギーと対戦。後半に2点を決め、慌てさせた。2-2で迎えた後半ロスタイムのCKで、延長戦を潔しとせず総攻撃を仕掛け、逆にカウンターから失点をし敗退した。攻め急ぎ焦った感もあるが、勝利に対しての果断は実にサムライらしいチームだった。

見事な負けっぷりのモロッコ

グループBのモロッコは、初戦のイラン戦を0-1で落とし後がなくなった状態で残りの2試合目に臨むことになった。ポルトガル戦では、相手のシュート11本に対して15本と大きく上回るも、クリスティアーノ・ロナウドに得点を許し惜しくも0-1で敗れた。

敗退が既に決定して臨んだスペイン戦では、ポールポゼッションでは劣勢に立ちながら、2度リードを奪い、スペインがロスタイムに追いつき2-2で何とかドローに持ち込む熱戦を演じた。

最終的に1分け2敗と無勝利でグループリーグ敗退したが、今大会のモロッコ代表は、観る者の心を大きく揺さぶった。試合中の戦士の表情から打って変わって、終了のホイッスルと共に崩れ落ちる選手たちには、観客席からモロッコサポーターのみならずロシアのファンからも暖かい拍手が沸いた。

挙国一致したアイスランド

グループDのアイスランドは人口僅か34万人弱の小国で、ワールドカップに出場すること自体が奇跡的ながら、初戦で優勝候補、メッシ擁するアルゼンチンに1-1の接戦。アイスランドでの同試合の視聴率は99.6%だった。

このサポーターと選手の一体感は小国ならではのものだろう。アイスランドを日本で例えるなら、ほぼ同じ人口で北国の福島県郡山市選抜といったイメージだ。アイスランドの応援、バイキングクラップは、地元ロシアファンにも伝播した。今後、この応援方法を行うクラブチームも出てくるかもしれない。

敗退もW杯の歴史つくった韓国

グループFは、前回大会王者のドイツに対して、相手の倍となるシュートの雨を浴びながら耐えに耐え、ロスタイムに2点を決めて勝利した韓国の執念が印象的だった。ドイツのグループリーグ敗退を決定する勝利で、敗退しながらも、ワールドカップ史に大きな足跡を残した。

同じくグループFのメキシコは1-0でドイツを下し、ドイツを差し置いてグループリーグを突破した。「代表チームはこうやってつくるんだ」というような完成度の高さで、決勝トーナメント一回戦でブラジルと対戦し敗れたが、ベスト8へと進出する可能性は十分にあった。

試合終了前に号泣したウルグアイDFヒメネス

強敵ポルトガルを倒し、準々決勝に進出したウルグアイは、フランスの総合力に圧倒され挽回ならず0-2で敗れた。そこでこともあろうに、ロスタイムが5分も残っている時点で、ウルグアイDFホセ・ヒメネスがむせび泣き始めたのだ。アトレティコ・マドリードという世界有数のクラブで修羅場を潜り抜けてきた超一流選手のすることとは到底思えない試合を諦めたかのような光景。

体は必死に戦っているが、涙腺が決壊してしまった。ワールドカップの大きさ故にどうしても感情が抑えられなくなってしまったのだろう。泣いても笑っても4年に一度。この大舞台にかける選手の思いは並々ならぬものがある。

世界のサッカーはここで節目を迎え、引退し第二の人生を歩む者、この経験を糧に4年後を目指す者、選択はそれぞれだ。各地域で再び長く苦しい予選が始まり、そして四年後にまた新たな物語が紡ぎ出される。