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ドイツのポゼッション平均65%以上でも勝率33% 敗退の原因はポゼッションサッカー?

2018 7/12 16:43SPAIA編集部
ワールドカップサッカーボール,ⒸShutterstock.com
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ポゼッションサッカーについて

「支配率」という意味のポゼッション。昨今サッカーではパス回しをし、ボールをキープするポゼッションサッカーが「美しく理想」とされていた。そのため、2010年前後からパス成功率、パス回数、ボールポゼッションを重要視し、スタッツに表すことが主流になった。丁度同じ頃、南アフリカワールドカップでスペインが優勝したことも影響し、世界的にそういったサッカーを目指すチームが急増。日本でも、幼少期からポゼッションサッカーに慣れさせるクラブが増えた。

しかし、その後ショートカウンターやハイプレス戦術などの対抗策が洗練され、ポゼッションサッカーを得意とするチームは減少。代名詞としていたバルセロナやバイエルンが欧州チャンピオンズリーグでカウンター型のアトレティコやレアル・マドリードに屈するとその傾向はますます加速した。

ポゼッションサッカーは主に、フィールドプレーヤーの10人が(チームによってはキーパーを含む場合もある)ディフェンスラインからショートパスを多用し、相手自陣まで攻め込み、隙を見てスルーパス、シュートまで持ち込むのが特徴だ。うまく型にはまれば、相手ディフェンスがパスに翻弄されパススピードに足が追いつかず、守備ラインがほつれたところからチャンスメークしゴールに繋げることができる。しかし、攻め上がりが遅くなる傾向があり、その間に相手がディフェンスラインを整えてしまうというデメリットがある。そうなった場合は、逆にカウンターを食らってしまう可能性が発生する。

ロシアワールドカップグループリーグのポゼッションについて

焦点をロシアワールドカップに移してみよう。ロシアワールドカップ、グループステージ全48試合で、ポゼッション率で上回っているチームの結果は、24勝9分14敗(コスタリカーセルビアのみ両チームのポゼッションが50%)。ポゼッションが高いチームが勝つ確率は51%と、これだけを見るとポゼッションサッカーは有効に見える。

必ずとは言えないが、ボールを65%以上保持していればポゼッションサッカーを行っていると考えられるが、ロシアW杯で65%以上のポゼッションを果たしたチームの戦績は4勝3分2敗だった。しかも面白いことに、それだけ圧倒的なポゼッションを果たしながら2点以上離して勝っている試合がなく、それどころか2点以上離されて負けた試合が2試合もあるのだ。これは、ボールキープ率が高くても守備を固められると得点に至らず、逆にディフェンスがビルドアップしているからカウンターを食らい、相手チームにチャンスを与えてしまっているケースだ。

65%以上ポゼッションした場合

ⒸSPAIA

前回王者ドイツもカウンターの餌食に

ドイツの3試合のボールキープ率は60%、72%、69%と、3試合とも相手を圧倒していた。それにもかかわらず、戦績は1勝1分1敗。勝利したスウェーデン戦ですらアディショナルタイムで最後の最後に何とか1点もぎ取ったという形。そして、やはりカウンターを食らって冷や汗をかくシーンが目立った。

技術もスピードも高さもあるドイツが、あえてポゼッションサッカーを選ぶ理由はあったのだろうか。相手チームからすれば、高さや速攻を使ういわゆる「普通のサッカー」をされる方が勝算が減ったのではないか。ドイツがポゼッションサッカーを選んだことで、対戦相手にカウンターという武器を与えることになってしまった。前回王者ドイツ敗退の大きな要因となったことは明らかだ

ただ、高いポゼッション率が優位な状況を作り出すことも確かだ。1つしかないボールを保持し続ければ、それだけ相手の攻撃機会を奪うことができる。ポゼッションを重視したプレーがなくなることはないだろう。一方でロシア大会のこれまでの結果を見て分かるように、一時代を築いたポゼッションサッカーの衰退が決定的になったのもまた事実だ。