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ロシアW杯ダークホースの西野ジャパン、決勝Tであと何回波乱を起こせるか

2018 6/30 19:09Takuya Nagata
ワールドカップ,ロシア大会,日本代表,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

W杯の恐ろしさ示したドイツ敗退

6月14日に開幕した2018年ワールドカップロシア大会は、同28日、グループステージの全48試合を終え、決勝トーナメントに進出する16チームが出揃った。同30日からは、ノックアウト方式の決勝トーナメントが始まり、グループH2位の日本は、グループG1位のベルギーと7月2日に激突する。

今大会のグループリーグを振り返ると、様々な波乱が起こったが、16強に進出した国の顔ぶれをみると、概ね順当に勝ち上がったと言える。その中で、大きなサプライズが2つあった。盤石と言われていた前回大会王者のドイツが、グループF 最下位で敗退したこと。そして、前評判を覆して生き残った日本代表だ。

ドイツ代表は、初戦のメキシコ戦を落とすと、2戦目のスウェーデンでは、相手に先制を許し、退場者を出しながらロスタイムに勝ち越すという薄氷を踏む勝利。3戦目では、意地を見せた韓国に、やはり先制され敗れた。グループステージで再三、GKノイアーが捨て身の攻撃参加を行う姿は、異様な光景だった。国際大会で圧倒的な安定感を誇ったドイツが姿を消し、ワールドカップの恐ろしさが改めて浮き彫りとなった。

大会に波風を起こした西野ジャパン

そして、もう一つのサプライズとなった日本の16強進出。今大会から採用されたフェアープレーポイント(FPP)適用で勝ち上がった初の事例となった西野ジャパンだが、それ以上に世界で議論を巻き起こしたのが、日本の戦い方だ。勝負に徹したこの緊張感が国際大会の醍醐味でもあるが、試合終盤に見せた受け身の戦略が、思った以上に世界各地でバッシングを受けている。

日本は決勝Tでその批判を称賛に変えることが出来るであろうか。トーナメントの一回戦で対戦するベルギーとは、2002年日韓W杯でも対戦し、2-2の善戦を演じたが、あれから16年の時を経て、ヨーロッパの弱小国だったベルギーは、サッカー大国へと変貌を遂げた。あれから日本のサッカーも数段に進化しているが、ベルギーはその上を行くスピードで成長してきた。

今大会の得点王ランキングで、クリスチアーノ・ロナウドに並ぶ4得点で2位タイのベルギーFWロメル・ルカク(マンチェスターU)は、190CM、93KGと、巨漢ながら抜群の敏捷性と得点感覚を誇り、フィジカルで劣る日本にとっては大きな脅威となる。他にも技巧派の主将エデン・アザール等タレント揃いで、多彩な攻撃オプションを抑えるのは、並大抵ではない。

万全のベルギーが日本に襲い掛かる

グループ2試合を終えた時点で決勝T進出を決めていたベルギーは、3戦目で9人を入れ替え、チームは万全のコンディションで、日本に牙を剥いてくるだろう。一方の日本も、3試合目で先発メンバーを6選手入れ替えたことから、コンディション的には大きく不利な状況ではない。日の浅いチームのメンバーをグループステージのポーランド戦で大幅に入れ替えることは、ギャンブルでもあった。その賭けにも勝ちベルギー戦を迎える西野監督は、おそらく1戦目と2戦目の先発メンバーを中心にチームを構成することが考えられる。短期間でどこまで進化を見せられるかが鍵となる。

マイアミの奇跡再現なるか

あまり遠くを見過ぎずに目の前の試合に集中すべきだが、仮にベルギーに勝利すると、準々決勝では、優勝候補筆頭のブラジルと対戦する可能性もある。1996年アトランタ五輪で1-0とブラジル相手に日本が勝利した「マイアミの奇跡」で指揮を執っていたのが西野監督だ。実力差から、極端に自陣に引き、カウンター攻撃一発に賭けた勝利はまさに奇跡だった。

あれから22年が経過し、ブラジル相手に成長した姿を示したい日本。次に対戦する時には、引いて守る以外の選択肢も使えるだけの力を、日本代表はつけている。

既に今大会に幾度となく波風を立てている西野ジャパン。決勝Tでは日本の勝利の報は全て「ジャイアントキリング」として世界を駆け巡るだろう。日本サッカー史上初のW杯8強、そして更なる高みへ向け、あと何回、波乱を起こすことが出来るだろうか。泣いても笑っても一発勝負の決勝トーナメントの火ぶたが切って落とされる。