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PK増加だけじゃないW杯史上最長の36試合連続得点 VARが与える影響とは

2018 6/28 18:10SPAIA編集部
サッカーボールⒸShutterstock.com
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史上最長の36試合連続得点

FIFAワールドカップ2018ロシア大会、各グループの対戦も最終節を迎え決勝トーナメント進出チームが次々と決定する中、現地時間26日に行われたグループC最終節、フランス対デンマークの一戦はスコアレスドローに終わった。 サッカーにおいてスコアレスドローは珍しいものではない。しかし、今大会ではここまで行われた全ての試合で少なくともどちらかのチームがゴールを決めていたため、なんと37試合目にして今大会初のスコアレスドロー。前回ブラジル大会では13試合目、これまでの最長記録でも1998年フランス大会での33試合目だったのだが、その記録を4試合伸ばすこととなった。

1試合平均得点は2.66点

今大会グループリーグ2巡目が終了となる32試合終了時点での両チーム合計1試合平均得点数は2.66点だった。

これまでの推移としては、本大会参加チーム数が現行の32カ国となった98年フランス大会で2.67得点を記録して以降、02年日韓大会では2.52得点、06年ドイツ大会では2.30得点、10年南アフリカ大会では2.27得点と減少傾向にあったが、14年ブラジル大会ではフランス大会と同じ2.67得点と一気に増加。今大会もブラジル大会に引き続きゴール数は増加傾向にある。

しかしこの増加傾向。内訳を見ると前回大会とは大きく異なる。最も特徴的なのがPKの数だ。現地時間26日に行われた大会14日目となるグループリーグの40試合を終えた時点でのPK獲得総数は22回(うち17回成功)を記録している。

過去の大会でのPK最多獲得数は、98年フランス大会、02年日韓大会での18回。最多成功数は98年フランス大会での17回となっていたが、グループリーグが終了していない段階で早くもこの数字を塗り替え、今大会が最多となった。

そしてこのPK数に大きな影響を与えているのは、今大会から導入されたVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)。22回中およそ4割にあたる8回はVARによりPKが与えられた。

VAR導入による間接的な効果も

今大会での得点数の特徴はPKだけに留まらない。

グループリーグ1巡目で記録された38得点中、約55%にあたる21得点がセットプレーから。PKによる7得点以外にも、直接FKが4得点、CKから6得点、FKからが4得点。ブラジル大会でのセットプレーからの得点率が全体の約22%だったことを考えるとこの比率の高さがわかるだろう。

そしてこのPK以外のセットプレーの得点が増えたのも間接的ではあるがVARが影響していると考えられる。というのも、VARが導入されたことでPKを取られてしまうことを恐れセットプレーのマークがどうしても緩くなってしまうからだ。

この傾向が続くなら今後はセットプレーの守備でマンツーマンを採用するチームは激減する可能性が高い。

PK数増加などを理由に今回のVAR導入については批判も含め多くの議論が出ている。しかし忘れてはならないのは、VARは決して新たなファウルを生み出している訳では無いということ。あくまで見逃されてきたファウルがあらわになっただけである。

実際に国内リーグでVARのテストを行ってきたドイツ・ブンデスリーガおよびイタリア・セリエAの関係者は「誤審を80%軽減できた」と話しており、IFAB(国際サッカー評議会)では、VARを使用しない場合の判定で7%が誤審であったのに対し、VARを導入することでわずか1.1%になるというデータを公表している。確実に誤審の低減につながるのだ。

VARはその名の通り現状ではあくまでアシスタントレフリーであるため、最終的な決定権を持っているのは主審。確認するかどうかも主審が決めており、主審によって差があると感じさせる試合もある。また、対象となるシーンもゴール判定やPK判定、レッドカードの判定などに限定されている。

確認のために費やす時間も含めて、運用方法には改善が必要な部分もあるが、公平にかつ正当なジャッジを行うためにはVAR導入は今後も加速していくことになるだろう。