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永遠のサッカー小僧 乾貴士、日本をW杯決勝トーナメントへ導け

2018 6/28 07:00SPAIA編集部
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Ⓒゲッティイメージズ

見逃せない守備での貢献

ワールドカップロシア大会グループリーグで、日本代表は2試合を終え1勝1分。大方の予想を覆し首位でグループ最終戦を迎える。日本代表を牽引している1人が、コロンビア戦で何度も好機を生み出し、セネガル戦では1ゴール1アシストと日本代表の全得点を演出した乾貴士であることは間違いない。

セネガル戦での乾は攻撃面での活躍が目立ったが、今大会のプレーで見逃せないのは守備面の貢献だ。コロンビア戦ではボール奪取数11回を記録。この試合に出ていた全選手中最多。DF吉田麻也、長谷部などの守備的ミッドフィルダーはもちろんコロンビアの全ての選手よりも多いのだ。

乾はセレッソ大阪で見せた香川真司とのコンビでブレークした2009年以降、日本代表に何度か選ばれていたものの主力にはなりきれなかった。その要因の1つは守備面。強豪国との対戦も多い国際試合ではどうしても使いにくい選手だったのだが、今大会ではその課題を完全に解消している。

成長させたのはエイバルで過ごした3シーズンだった。

メンディリバル監督から学んだ守備

人口わずか2万7千人の街を本拠地とするエイバルはスペイン1部リーグの中でも特に小さいクラブだ。代表選手はほとんどおらず、今回のワールドカップに参加しているエイバルの選手は乾とGKのマルコ・ドミトロビッチ(セルビア代表)のみ。そしてエイバルの所属選手がワールドカップメンバーに入るのはクラブ史上初の出来事でもある。

そんな小さなクラブがレアル・マドリードやバルセロナなどのビッグクラブと同じカテゴリーで戦い続けることができているのはメンディリバル監督の存在が大きい。

メンディリバル監督率いるエイバルは、引いて守ってカウンターというスモールクラブの常とう手段は取らない。行っているのはアグレッシブなサッカー。どんな相手でも高い位置から守備を行い積極的に攻撃する。

加入1年目はメンディリバル監督も乾の課題は守備面だと公言していたが、3シーズンに渡ってエイバルのサッカーを続ける中で大きく改善。2017-18シーズンはメンディリバル監督に「守備面で最も信頼できる選手」と言わせるまでに成長した。

永遠のサッカー小僧

乾の魅力は技術的なことももちろん、それ以上の強みとなっているのが楽しんでプレーしていることだろう。「とにかくサッカーが好きだ」という思いがプレーから溢れている。

7歳年上の兄の影響でサッカーを始め、自宅にあったマラドーナのビデオを見て、ひたすらマネをした少年時代から、台風の休校日すらグラウンドで1人ボールを蹴っていた野洲高校時代を経て、ドイツやスペインで活躍する今でも全く変わらない。

2011年夏からドイツ、2015年からはスペインへと活躍の場をヨーロッパへと移した乾だが、シーズンオフは必ず日本に帰国し、古巣セレッソ大阪の練習に参加する。
これだけなら他の海外組も行っており、それほど珍しいことでも無いが、乾の場合はその頻度が桁外れ。関西空港に到着すると、その足でセレッソ大阪の練習場に直行。そこから帰国の前日までほぼ毎日練習に参加する。とにかくボールを蹴っていたいのだ。

2017年4月にスペイン国王が来日した際の晩餐会に参加するために帰国した際も、晩餐会の翌朝にはセレッソ大阪の練習場に乾の姿があり、その翌日にはスペインへと帰国していった。
これまで日本代表にも定着できず、国際的な大舞台にはほとんど縁がなかった乾が30歳にしてようやく掴んだワールドカップの舞台。永遠のサッカー小僧にもう少しこの舞台を味わって欲しい。
グループ最終戦となるポーランドとの試合は日本時間28日23時から。これまでの2戦と同様に日本代表をけん引し、ベスト16へ進出させた男として歴史に名を残す活躍を期待したい。