「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

極上の一戦で明らかになったポルトガルの課題

2018 6/17 12:50SPAIA編集部
クリスティアーノ・ロナウド
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

ロナウドのハットトリックの裏で浮き彫りとなった課題

日本時間6月16日未明、ワールドカップロシア大会のグループステージ最高の一戦、スペイン対ポルトガルが行われた。イベリアダービーとして、また強豪同士の対決として注目されたこの試合だったが、結果は3-3のドロー。クリスティアーノ・ロナウドのハットトリックに対して、ジエゴ・コスタの2得点、そしてナチョのスーパーゴールで勝ち点1を分け合った。 スーパースターが大活躍し、計6ゴールが生まれるというスペクタクルな一戦に世界中が盛り上がった。EURO2016で初の主要タイトルを手にしたポルトガル代表。悲願のW杯優勝を目指してロシアに乗り込んだ。だが迎えた初戦スペイン戦で、エース頼りの攻撃、そして後手に回る守備という課題が浮き彫りになった。

攻撃ではカウンターが機能も最後はロナウド頼り

ポルトガル最大の課題。それはやはり“クリスティアーノ・ロナウド頼り”に尽きる。チームとしてこの試合10本のシュートを放ったポルトガル。だがそのなかで枠内は3本、つまりロナウドの3ゴール以外は枠内に飛ばせていないのだ。

ロナウドの相棒を務めたゴンサロ・ゲデスはバレンシアで今シーズン5ゴールを決めた21歳。しかしこの日放ったシュートはわずかに1本。カウンター戦術の一翼を担い、ロナウドの2点目をおぜん立てするなど一定の活躍は見せたが、ネットを揺らすには至らなかった。

またヨーロッパ予選でロナウドに次ぐ9得点をあげたアンドレ・シウバは後半途中出場。攻撃の活性化を期待されたが、シュート0本に終わっている。 カウンターアタックはある程度機能していた。だがフィニッシュのところはロナウド任せだったため、スペインディフェンス陣は守りやすかったかもしれない。

守備陣はスピードとパワーに圧倒され3失点

ポルトガルはこの試合を見る限り守備にも不安がつきまとう。この日はCBがペペとフォンテ、SBがセドリックとゲレイロという4バックを形成。だが経験豊富なCBコンビはスペインの多彩な攻撃に翻弄された。

スペインはルイス・アラゴネス時代から積み上げてきたポゼッションサッカーを中心にゲームを組み立てるが、シャビが抜け、イニエスタもフル出場が減った今、よりダイレクトなサッカーを織り交ぜるようになっている。

この試合でも圧倒的なボール支配(63%)と正確なパス回しで中盤を支配。ダビド・シルバやアセンシオらのドリブル突破などを織り交ぜたプレーで崩されかけるシーンが目立った。そのためポルトガル中盤はあまり攻め込まずに対応に追われた。

また、これまでのスペインにはなかった武器にも大いに苦しめられた。ジエゴ・コスタだ。強靭なフィジカルとテクニックを併せ持つブラジル出身のストライカー。1失点目は彼一人に決められた。ロングボールを受けたコスタにペペが競り負けると、マークするフォンテもかわされ、シュートを叩き込まれた。その後もスペインらしいパスでの崩し、ドリブル突破、そしてコスタのフィジカルと多彩な攻めに苦しめられた。

2失点目、3失点目はセットプレーから失った。ナチョのスーパーゴールはノーチャンスとしても、2失点目は長身のポルトガルCBコンビがブスケツとの競り合いに負け、折り返されたところをコスタが押し込んだ。スピード、パワー、高さ。その全てでスペインに崩されてしまっていた。

悲願のタイトルに向けてプレーの向上は不可欠

スペインがどの攻めの形でも高い水準にあったことと、カウンターを志向したことを差し引いても、あらゆる形でスペインに押し込まれていたポルトガル。グループステージで残るモロッコ戦、イラン戦ははっきりいうと格下相手のため、スペイン戦とは逆に自分たちがボールを持つ展開も予想される。

そこでカギになるのは中盤の攻撃参加だ。この試合では前に顔を覗かせることが少なかった司令塔ジョアン・モウチーニョや創造的レフティーのベルナルド・シルバが中盤からどれだけ攻撃に参加できるか。攻撃に厚みを持たせ、ロナウド以外からの崩しが無ければ、厚い守備は崩せないだろう。

また2点目を奪われたセットプレーは、モロッコやイランからしてみれば格上ポルトガル相手に得点を見込める数少ないチャンスだ。両国とも背が高くフィジカルの強い選手が揃っている。しっかり改善して臨まないと、思わぬ取りこぼしをしてしまう恐れもある。

ポルトガルはこのあと6月20日(水)にモロッコと、26日にイランと対戦する(日本時間)。