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スペインの強さは選手あってこそ 監督直前交代もポルトガルとドロー

2018 6/16 14:59Takuya Nagata
ジエゴ・ダ・シウヴァ・コスタ,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ポルトガル3-3スペイン

2018年ワールドカップロシア大会が6月14日開幕し、翌15日に早速グループリーグ屈指の好カード、ポルトガル対スペインの試合が行われ、ポルトガルFWクリスチアーノ・ロナルド(レアル・マドリード)のハットトリックやスペインFWジエゴ・コスタ(アトレティコ・マドリード)の2ゴール等で、3-3の引き分けとなった。

互いに高い攻撃力が特徴の両国。ロナルドを矢じりに置いた強烈なクロスボウのようなポルトガルと、チキタカと表現される超高速パスサッカーのスペインは両者ともに譲らなかった。

欧州選手権(ユーロ)2016年大会に優勝したディフェンディングチャンピオンのポルトガルと2012年大会覇者スペインの新旧欧州王者の対決。そして隣国同士のイベリア半島ダービーでもある。

スター選手も多く、様々な理由により大会前から注目されていたが、さらにその注目に拍車をかけたのが、この試合のわずか2日前に起こったスペインの監督交代劇だ。

ハリル解任どころではない。開幕2日前にスペイン代表監督交代

スペインサッカー連盟(RFEF)がフレン・ロペテギ監督を解任した理由は、本大会前にスペイン代表監督の契約を2020年まで延長しておきながら、何の相談もなく同監督がレアル・マドリードと契約し、クラブから監督就任が発表されたためだ。

人気・資金力ともに世界屈指のレアル・マドリードと、国内のサッカーを統括する連盟の威信が衝突した形だ。

日本であれば、協会とクラブには明確な上下関係があるが、スペインはレアル・マドリードやバルセロナといったビッグクラブが大きな力を持ち、例えるなら、幕末の薩摩と長州のような位置づけにある。

スペインは2010年W杯優勝と2012年欧州選手権優勝で黄金時代を築いたため、強豪国のイメージが強いが、それ以前は国内の各クラブの力が強いために、国として一つにまとまることが出来ず国際大会でタイトルに縁がない時代が続いていた。

今回の一件は、スペインサッカーの国内事情がバラバラだという本来の姿に戻ったことを感じさせる。

スペイン連盟のルイス・マヌエル・ルビアレス会長は、チームとしての継続よりも、スペイン代表スポーツディレクターだった、フェルナンド・イエロを新監督に置き雑音をシャットアウトすることを選んだ。

これは西野朗強化委員長が監督に就任した日本代表と同じ流れの人事だ。違いは、準備期間が日本は2か月なのに対し、スペインは2日。わずかなりとも「心技体」を修正する時間があった日本に対し、スペインは「心」のみをすげ替えた形だ。監督交代の判断が、吉と出るか凶と出るかは、大会閉幕までに明らかになるだろう。

互いの持ち味が激突した名勝負に

元々、絶対的なサッカーの実力とスタイルを有するスペインは、監督が誰で対戦相手がどこであろうと貫けるサッカーが確立されている。初戦ではこのことを熟知する選手たちが、伸び伸びとスペインサッカーを体現した。しかし、スペインサッカーが機能し出すまでには、前半4分クリスチアーノ・ロナウドのPKゴールまで要したことも事実だ。

立ち上がりの攻勢で1点先制したポルトガルは、自陣を固め、本来狙っていたであろう堅守速攻戦略で追加点を狙う。しかし、これはスペインのポゼッションサッカーを目覚めさせることにもなった。

ボールをもって相手陣内深くまでパスを軽々とつないでいくスペインに対し、強烈な速攻で応戦するポルトガル。最終的には、リードを奪ったスペインが、イニエスタというファンタジスタをベンチに下げてまで逃げ切ろうしたのに対して、ポルトガルが追いつき引き分けに持ち込んだことから、心理的にはポルトガルが勝ったかのような喜びを見せた。対照的にスペインは意気消沈する結果となったが、監督交代直後にもかかわらず高いパフォーマンスを発揮し、サッカーは選手がおこなうものだということを見せつけた。

枠内シュート3本で3ゴールのポルトガルと、ボール支配率62%のスペイン。お互いの持ち味を如何なくぶつけ合ったこの試合は、今後、名勝負として語り継がれるだろう。