通称「ブラサカ」東京パラリンピックで日本初出場
視覚障害者らによる5人制のブラインドサッカー、通称「ブラサカ」はパラリンピックでも花形競技の一つだ。日本はこれまで一度も出場経験がなかったが、来年の東京パラリンピックで初めて世界のひのき舞台に立つ。
全盲の選手がアイマスク(目隠し)を着用し、転がると音が出る特殊なボールを追って激闘するブラサカは今や国際大会のチケットが完売する人気急上昇ぶりだ。東京五輪・パラリンピック組織委員会は実施競技を紹介する公式サイトの特設ページで、J1神戸のスター選手、アンドレス・イニエスタ(スペイン)がブラサカを初体験する特別動画を公開。日本代表のエース川村怜(アクサ生命保険)とも共演し、その奥深さと魅力を称賛している。
健常者のGKやガイドがサポート
基本ルールを紹介しよう。1980年代初頭に開発され、欧州や南米を中心に広くプレーされてきたブラサカは1チーム5人で構成され、視覚障害者の選手4人と、健常者または弱視者が務めるGKの5人制だ。
試合時間は前後半とも20分。「シャカシャカ」と音が鳴る専用のボールを使用し、選手にボールやゴールの位置を知らせる「ガイド(コーラー)」と呼ばれるメンバーも3人いる。相手ゴール裏から「5メートル、45度、シュート」などと距離や角度の細かい指示を出して音を頼りにプレーするのが最大の特徴だ。監督はピッチ中盤で試合中に指示を出す。
視覚を遮断した状態でプレーするため情報を補う工夫も多く、ボールを持った相手に向かっていくときは衝突を避けるため、守備側が「ボイ(スペイン語でVOY=行くの意味)」と声を掛けるルールがあり、違反するとファウルになる。
観戦マナーは「静寂」
コートはフットサルとほぼ同じ広さで40メートル×20メートル。ボールが外に出ないようサイドラインにフェンスも置かれている。フェンスはボールの跳ね返りを利用してパスする目的でも使われることもある。
試合中の選手はボールの音やガイドの指示が頼り。周囲の音声に耳を傾ける選手を妨げないよう、観客にはプレー中、静寂が求められる独特の観戦マナーがある。得点が決まった瞬間は大歓声で選手を称え、その声で選手も自分の得点が分かる。このメリハリがある観戦スタイルも、ブラサカの醍醐味の一つだ。
日本は世界ランク13位、王国はブラジル
ブラサカは国際ブラインドスポーツ連盟(ISBA)が統括し、日本は2019年の世界ランキングで13位。1位はアルゼンチン、2位は2016年リオデジャネイロ大会金メダルのブラジル、3位は中国だ。

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「王国」は過去4大会をすべて制しているブラジル。2位以下は激戦の様相で、2012年ロンドン大会はフランスが銀、スペインが銅メダルを獲得し、2016年リオデジャネイロ大会ではイランが銀、アルゼンチンが銅と顔触れが変わっている。
3月に東京で8カ国が参加して開催されたブラサカの国際大会、ワールドグランプリで日本は3位決定戦でスペインに0-1で敗れて4位。決勝ではアルゼンチンがイングランドを2-0で下して優勝した。
世界のスター選手はリカルジーニョ
世界一のスター選手といえばブラジルのエース、リカルジーニョだろう。主将として臨んだ地元の2016年リオデジャネイロ大会では決勝で貴重なゴールを決め、1-0でイランを下して正式競技となった2004年アテネ大会から4連覇を達成。決勝点は相手4人をまとめてドリブルでかわして鋭く右足を振り抜き、ゴールネットを揺らした。
国際的なサッカー人気もあり、ブラサカの普及・強化も各国で進む。東京大会では日本が旋風を起こせるのか、ブラジルが王国の牙城を保つのか。注目が高まっている。