大混戦のJ2は後半戦へ
上位陣の勝ち点差が拮抗している今季のJ2。2019年の前半戦を首位で折り返したのはモンテディオ山形。リーグ最少の失点数を誇る堅守で勝ちを重ねてきた。2位で折り返した京都サンガはパスサッカーでブレイク。後半戦の初戦、この2チームが対戦。京都が勝利し首位に浮上。一方の山形は2位となり、更にエース阪野が松本山雅へ移籍。J2の上位争いはより混沌としていきそうだ。
かつては自動昇格圏となる2位以内に入るためには1試合平均の勝ち点が2以上必要だとされていたJ2。しかし2017年からは首位チームの平均勝ち点も2を下回るようになり、昨年2018年は首位から4位までのチームの勝ち点差がわずか1という大混戦のリーグだった。そしてその流れは今季も変わらず。上位陣の勝ち点差は非常に拮抗した状態が続いている。
そんなJ2も7月6日、7日に行われた第21節で前半戦が終了。7月13日、14日の第22節から後半戦に突入した。
後半戦初戦で首位攻防戦
2019年のJ2前半戦を首位で折り返したのはモンテディオ山形。J1昇格経験のみならずJ1残留経験も持つクラブだが、2度目のJ1となった2015年は1年でJ2降格という結果に終わると、2016年以降はJ2でも3年連続2桁順位と苦しい時間が続いていた。
しかし木山監督就任3年目となる今季は序盤から好調。特筆すべきはリーグ最少の失点数を誇る堅守で、そこからの素早い攻撃、そしてセットプレーを武器に勝ち点を重ねた。
2位での折返しとなったのは京都サンガ。こちらはJ1昇格、J1残留はもちろん天皇杯優勝というタイトル獲得経験もあるチーム。しかし2011年以降はJ1から遠ざかり、近年は2012年、2013年2016年と参加していたJ1昇格プレーオフからも遠ざかることに。昨年はJ2残留争いにも巻き込まれた。
しかし今季就任した中田一三監督の下で、J2ナンバーワンのポゼッション率、パス数を記録しているパスサッカーでブレイク。中田監督はこれまで三重県リーグや東海リーグでの監督経験しかなく、開幕前はJクラブでの指導歴が無いことを不安視されていたが、ポジショナルプレーの理念を踏まえた今J2で最も面白いサッカーを繰り広げている。
そして後半戦の初戦となる第22節。この2チームが対戦した。
山形は3-1-4-2で京都対策
京都の布陣は4-3-3。CBの位置から高いビルドアップ能力を発揮する安藤は出場停止となっているが、それ以外は前節長崎を下したメンバーをそのまま起用。一方の山形は、スコアレスドローに終わった前節愛媛戦からは3人を入れ替え。
しかしこれまで共に3-4-2-1の1トップで起用されていた阪野とジェフェルソン・バイアーノ、右WBで起用されてきた三鬼と柳、左WBで起用されてきた山田とホドルフォ、と同じポジションの選手を同時起用。どの様な布陣になるのかも予想しきれないメンバーが並んでいた。
試合が始まると明らかになったのは山形の京都対策。布陣は3-1-4-2で、J2ナンバーワンパサーの庄司のところには2トップの一角に入る阪野が徹底的に捕まえる。そして3バックの左にホドルフォ、右インサイドハーフに柳とWBでプレーできる運動量とスピードがある選手を入れることで京都のスピードに対応し、さらにボールを奪うと徹底的に縦に早く攻める形をとってきた。
山形の京都対策は効果的だった。試合のペースを山形が握るところまでには至っていなかったものの、ここまで609.6本/試合のパスを記録する京都がこの試合では523本。おそらく前半はこの半分も記録できていなかっただろう。
しかし前半を0-0で折り返した後半に先制したのは京都。セットプレーのこぼれ球から一美が豪快なボレーシュートを決め先制。山形が得意とするセットプレーで京都が先制した。
J2の上位争いは混戦の予感
ここからは京都が勝負に対するこだわりをみせた。普段の華麗なパスサッカーというよりも徹底的に勝負にこだわったのだ。
京都が行ったのはパスを繋いで時間を消費すること。
京都は前半からもちろんパスをつなごうとしていた。だが思うようにパスをつなぐことはできなかった。それは京都が相手ゴールに向かおうとするからであり、山形がそれを防ごうとするからである。
しかし、ここからの京都はリードしたことで相手ゴールに向かう必要がなくなったことで安全なパスを繋ぎ、できるだけ試合を動かさないという展開に持ち込んだのである。
終盤は山形も形を変え、前がかりになることで何とか同点に追いつこうとするが決められず、その分京都もカウンターで追加点を奪うチャンスが何度も訪れたがスコアは動かず。0-1で京都が勝利。その結果京都が首位、山形が2位と順位が入れ替わった。
まだシーズンはほぼ半分を残しているが、京都にとっては昇格へ幸先のいい後半戦スタートとなった。
一方の山形にとっても、敗れはしたもののシーズン後半戦にも期待を抱かせる内容だったのではないだろうか。ただ、この試合の3日後、7月16日に阪野がJ1の松本山雅への移籍を発表。山形は痛いタイミングでエースを失うこととなった。
ここから山形が新たな選手を獲得することができるのかは不透明。J2の上位争いはより混沌としていきそうである。