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Jリーグにも広まり始めた「ポジショナルプレー」とは何か

2019 6/2 11:00中山亮
サッカーⒸShutterstock.com

ⒸThomas Bethge/Shutterstock.com

コンセプトであり評価基準

Jリーグでも聞かれるようになった「ポジショナルプレー」。今ひとつよくわからないという人も多いのではないだろうか。

「ポジショナルプレー」という言葉自体がチェス用語ということもあり、チェスがあまり一般的では無い日本では理解しにくいという面もあるのだろう。

しかし「ポジショナルプレー」は現在そしてこれからのサッカーを考える上で重要なキーワードとなり得る言葉でもある。

Jリーグで「ポジショナルプレー」という言葉が聞かれるようになったことは、スペイン系の監督が増えてきたことと関係している。先日まで神戸の監督を務めていたスペイン人のファン・マヌエル・リージョが「ポジショナルプレー」の第一人者だからだ。

源流となるものは古くからあったのだが、それを1つの考え方にまとめ「ポジショナルプレー(ポジションプレー)」として名前をつけたのがリージョ。そして、それを広めたのが現マンチェスター・シティの監督であるグアルディオラだ。

「ポジショナルプレー」自体が一般的ではなかった2011年、「ポジショナルプレーとは何か?」という質問に対し、リージョが答えた「コンセプトであり評価基準だ」は、実に良くできた答えだった。

サッカーには「ポゼッション」や「カウンター」という戦術を表す言葉がいくつもあるが、これらは全て戦い方を表したもの。また、「ポジショナルプレー」と「ポゼッションサッカー」の語感が似ているため、混同されることや、「ポジショナルプレーはポゼッションサッカーの一種」と勘違いされることも多い。

しかし、「ポジショナルプレー」は戦い方ではなくコンセプト(概念)だ。つまり、もっと原則的な部分を指すため、「ポジショナルプレー」と「ポゼッションサッカー」は全く別の階層にあり、比較や同一視することはナンセンスなのだ。

ボールが唯一の基準

グアルディオラは、「自分たちがボールを持って攻撃している時でも、相手に攻撃されている時でも、ボールを基準に正しいポジショニングをすることがポジショナルプレーだ」と答えている。この「攻撃している時でも、攻撃されている時でも」という部分はポジショナルプレーの根幹にある考え方だ。

そもそもリージョは、「攻撃」や「守備」という分類自体がサッカーには無いと言っている。例えば、野球は「攻撃側」と「守備側」が明確に分かれている。また、野球ほど明確にではないが、バスケットボールにもボール保持側にショットクロックがある。他にも、ハンドボールでは「パッシブプレー」というルールがあり、シュートを打たないと反則になる。

だが、サッカーは自陣で延々とパスをつなぎ、攻撃せずにボールを保持するという選択ができる。つまり「ボールを保持=攻撃」や「ボール非保持=守備」とは限らないため、攻撃や守備という概念で分類することができない。

唯一、基準となるのがボールの位置だ。どこにボールがあり、どこに移動し、どこに移動させたいのか、ボールの位置を基準に優位なポジショニングを取り続ける。それが「ポジショナルプレー」なのだ。

自分たちの意図したところにボールを移動させるには、ボールを保持していた方が都合良い。そのため、「ポジショナルプレー」と「ポゼッションサッカー」は親和性が高いといえる。だが、ボール保持そのものは相手との駆け引きの結果でしかなく絶対条件ではない。

仮にボール保持ができなかった場合でも、陣形を整え相手の攻撃を誘導し、そこでボールを奪う。勿論これも、ボールの位置によって選手のポジションが決まり、自分たちの意図したところにボールを移動させようとした「ポジショナルプレー」なのだ。

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