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バイエルンがリーグ7連覇へ大苦戦 毎年の圧勝でマンネリのブンデスリーガには転機

2019 4/20 11:00Takuya Nagata
バイエルン・ミュンヘン,サポーター,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

史上初の7連覇かかるバイエルンが四苦八苦

ブンデスリーガ7連覇がかかっているバイエルン・ミュンヘンが苦戦している。今季からニコ・コヴァチ新監督が就任し心機一転で臨んだものの、序盤で取りこぼしたことから出遅れてしまった。終盤にかけて挽回してきてはいるものの、ボルシア・ドルトムントと大接戦を演じている。これは、過去6年間にはなかった出来事だ。

ブンデスリーガでは、香川真司も大きく貢献したドルトムント2連覇の後にバイエルン・ミュンヘンの覇権が続いている。しかも2位以下に圧倒的な勝ち点差をつけてのぶっちぎりの優勝だ。今季、バイエルンは7連覇を目指しているのだが、昨季までとは異なり、ドルトムントと首位を争っている。

ドイツサッカー史上かつてない程の、絶対的なバイエルン・ミュンヘン一強時代の礎を築いたのはユップ・ハインケス監督だ。守備から攻撃まで完全無欠のチームをつくり上げ、1季目は2位に勝点25差で優勝した。後任のジョゼップ・グアルディオラ監督は、当時最先端と言われていたバルセロナ仕込みのパスワークをバイエルンに植え付けた。ラテン系指揮官が、質実剛健なドイツサッカーを美しく飾り上げた。

チームは強いし、試合内容も観ていて楽しい。バイエルンは、もうどうにも手が付けられなくなり、国内に向かうところ敵なし。ピッチの内外でドイツサッカーに大きな影響を及ぼした。

昨シーズンまで、そんな状況が続いていた。

毎年バイエルンが圧勝しマンネリ化

長い歴史を振り返ると、バイエルン・ミュンヘンは、過去にブンデスリーガで27度優勝している。これはドイツで群を抜いているが、6連覇というのはバイエルンといえども史上初めてのことだ。ドイツサッカーは、バイエルン・ミュンヘンの一強状態で、それが近年、さらに顕著になっていた。

そのため、ドイツの人々はサッカーへの関心が高いが、近年は「どうせ、またバイエルンが優勝するんだろう」という空気が開幕前から漂っている。これでは、リーグのエンターテイメント性が欠け興業としての価値が落ちてしまう。

映画でもドラマでもそうだが、ストーリーの行方が観ていて分からないから面白いのだ。どんなリーグでも、圧倒的な戦力を持ち負ける姿を想像させないクラブは人々を魅了するが、リーグ全体が盛り上がるためには、複数クラブがしのぎを削る構図が不可欠だ。

それを実現しているのが、イングランド・プレミアリーグではないだろうか。

昨季は、マンチェスターの万年2番手だったマンチェスター・シティが勝点100の大台に乗せて優勝し、今季はリバプールとデッドヒートを繰り広げている。また、2015-16シーズンには、降格候補筆頭だった岡崎慎司のレスター・シティが優勝するという大事件が起こった。

マンチェスター・ユナイテッドはイングランドのビッグクラブの筆頭だが、ロンドンのチェルシー、アーセナル、トッテナム・ホットスパー等、いつ優勝してもおかしくない強豪クラブがゴロゴロしている。こういうリーグは、開幕前に自然とワクワクするものだ。

ドイツは地方が健在、やり方次第で将来有望

もちろんドイツにだって、有望なビッグクラブ候補は沢山ある。優勝回数が2番目に多いのは、5回のボルシア・メンヒェングラートバッハとボルシア・ドルトムントだ。クラブ名が少し似ているが、地理的にも近い位置にある。

世界で最も観客動員が多いボルシア・ドルトムントは、1試合で7万人から8万人が観戦しており、スタジアムの熱気は凄まじいものがある。ドルトムントは、かつて内田篤人が所属したシャルケ04とルールダービー、別名レヴィアダービーを形成している。

ルール工業地帯は非常にサッカーが盛んで、主要クラブがひしめき合っている。ちなみに3番手は大迫勇也のヴェルダー・ブレーメンで4回の優勝経験がある。

ブンデスリーガとは、連邦リーグという意味だ。ドイツは一極集中型ではなく、それぞれの地域に大きな都市と強固な経済基盤がある。サッカークラブは公共財という考え方が根付いており、それが運営にも反映されている。

誰でも観戦できるように、チケット価格は欧州5大リーグで最も安い。また、海外の大企業や富豪が金融商品や個人的な娯楽の如くコロコロとクラブを売り買いすることもない。これは一長一短だが、ドイツでは受け入れられていない。

一方で、ドイツは、海外市場のマーケティングでイングランドとスペインから遅れをとっている。だがリーグの業績そのものは、順調な成長を続けており、大きなポテンシャルがある。

今季は、バイエルン・ミュンヘンが全盛期の勢いを失っていることから接戦になっているが、今後は複数クラブで競争を繰り広げて、トップ集団を形成していくかもしれない。そうやって複数のビッグクラブが生まれればブンデスリーガが、真の世界最高峰リーグになることだって十分に考えられる。