大会運営を巡りFIFAとUEFAが綱引き
FIFA(国際サッカー連盟)のジャンニ・インファンティーノ会長の押し進める改革案がUEFA(欧州サッカー連盟)と衝突している。3月に米国マイアミで開催されるFIFA理事会では、様々な事柄が議論される予定となっているが、その中でもクラブワールドカップで、意見が大きく割れている。議論の行方次第で、Jクラブや日本代表にも大きな影響が出てくることは必至だ。
FIFA(国際サッカー連盟)のジャンニ・インファンティーノ会長の押し進める改革案がUEFA(欧州サッカー連盟)と衝突している。3月に米国マイアミで開催されるFIFA理事会では、様々な事柄が議論される予定となっているが、その中でもクラブワールドカップで、意見が大きく割れている。議論の行方次第で、Jクラブや日本代表にも大きな影響が出てくることは必至だ。
インファンティーノ会長は、「クラブワールドカップを進展させる時だと私は信じています。限定された常連のクラブばかりがタイトルを獲ることは望みません。より多くのチームがしのぎを削る、真のクラブワールドカップを開催したいのです」と語る。
クラブワールドカップを拡大することで、FIFAの収益は2500万ユーロ(約32億円)増加するとみられ、その背後にはこの案を後押しする投資家グループがいると言われている。
現在、クラブワールドカップは、各大陸の王者に開催国枠を加えた7クラブにより毎年開催されている。南米クラブと欧州クラブが2試合で優勝出来るのに対し、他の出場チームはより多くの試合に勝たなければ、優勝に手が届かない。
また、アジア大陸王者であれば、真剣勝負で世界の強豪クラブと対戦できる貴重な機会ととらえることができるが、シーズン真っ只中の欧州では、欧州チャンピオンズリーグと国内リーグの方が大事であり、「2試合だったら」ということで、しぶしぶ了承し出場しているのが現状だ。
これを、4年に1度とし、出場クラブも24クラブに増やし、大々的に開催するというのがFIFAの提案だ。欧州ビッグクラブの中には、この案に同調しているクラブもある。
今日、最高の選手たちが集うクラブ最高峰の大会といわれる欧州チャンピオンズリーグは、世界的に大きな成功を収めている。現在のクラブワールドカップは、世界一を決める大会とはいえ、欧州からすれば、おまけのお祭りのような位置づけだ。それを24クラブにまで拡大し、大々的に行うということは、長い目で考えると欧州CLよりステータスが上になりかねず、UEFAの立場からすれば、あまり好ましいとは言えないかもしれない。
インファンティーノ会長は「UEFAは、サッカー界がヨーロッパだけではなく、211の国と地域から成り立っていることを考慮してほしいです」と主張しており、世界のサッカーを統括するFIFAとサッカーの都、欧州を預かるUEFAの綱引きが繰り広げられている。
FIFAの案では、クラブワールドカップ出場24チームのうち欧州が12枠なのに対し、アジアに振り分けられるのは、僅かに2枠のみだ。あまりに少ないようにも見えるが、欧州とアジアのクラブの力関係を考えると、仕方ないかもしれない。しかしこの2枠を求めて、アジア各国クラブの強化合戦がさらに熾烈になる可能性もある。
現在のJリーグは、実力が拮抗しており、今年アジアチャンピオンズリーグ(ACL)に出場するからと言って、必ずしも来年出場できるとは限らない。近年は、放映権の分配や選手移籍ルール等により、強豪クラブが生まれるような施策が講じられている。
中国や中東諸国では、4年に一度のクラブワールドカップを目指して、国家の威信をかけて一部のクラブを集中的に強化してくることも考えられる。そうなると、Jクラブも対策を打たなければ、クラブワールドカップ出場から遠ざかってしまう可能性もある。
今季から欧州の各国代表チームのレベルに応じて、カテゴリを分けてリーグ戦を行うUEFAネーションズリーグが新設された。これにより国際親善試合の数は大幅に少なくなったが、ネーションズリーグで好成績を収めると、ユーロ(欧州選手権)のプレーオフに出場できるという特典がある。FIFAは、このネーションズリーグを全世界に拡大し、2年に一度、ミニワールドカップなる大会を開催することを提案している。
インファンティーノ会長は、「私がUEFAで働き始めた20年ほど前は、欧州チャンピオンズリーグとユーロの収益を合わせても、ワールドカップの収益には及びませんでした。その構図は、根本的に変わりました。私はUEFAからFIFAに来て、今度は巻き返しを図りたいのです。サッカーはグローバルなもので、地球規模で成長を続けるべきです」と、FIFAのシェアを増加させる意図を明確にしている。
そうなると、サッカー最大の大会であるワールドカップの位置づけがどうなるかということも気になるが、日本代表に与える影響が気がかりだ。
もしアジアでもネーションズリーグが開催されれば、日本代表も出場することになり、必然的にアジア諸国との試合が増え、世界の強豪国との親善試合の数は減る。
アジアでは常に優勝することが求められるレベルにある日本が、世界に立ち向かうための強化をどのようにするか、岐路に立たされることになる。