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川口能活がA代表のコーチなれず ライセンスは絶対視されるべきか?

2019 1/23 15:00Takuya Nagata
サッカーボール,ⒸShutterstock.com
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川口能活が日本代表GKコーチから一転、ユースディレクター就任

元日本代表GKの川口能活が現役引退したのを受け、日本サッカー協会がA代表のGKコーチに大抜てきするオファーを出した。しかし、日本協会内で議論を進める中で、川口が最上位のコーチライセンスを持っていないことがJリーグから指摘され、結局日本協会のユースダイレクターから指導者のキャリアを始めることになった。

初めての仕事が協会のコーチと言うだけでも大したものだが、A代表のベンチに座る川口の姿が見られないのは非常に残念だ。

日本サッカー協会は、代表チームの内製化を進め、日本人指導者を重要なポジションに配置しているが、その際にボトルネックとなり得るのが、国際経験の少なさだ。

関塚隆技術委員長には、川口を英才教育したいという考えもあったが、育成のためだけにA代表のコーチに招へいできるはずがない。日本のGK第一人者であり海外経験の豊富な川口は、現場が喉から手が出るほど欲しい人材だったのだ。

今こそライセンスのあり方を考えるべき

2010年の南アフリカワールドカップでは、日本国民は大会前の不振ぶりから代表チームに期待していなかったが、第三GKとしてサプライズ召集された川口は、若手選手を後方支援し、兄貴分としてチームをまとめ上げ、決勝トーナメント進出の陰の立役者となった。ベンチにいるだけでチームを変えることができる貴重な存在でもある。

代表スタッフもそれを十分に理解した上での今回のオファーだったが、Jリーグの監督を務めるにはS級ライセンスが必須条件で、海外の指導者も同等のライセンスを持っていないと、Jリーグでは指揮を執れない。GKコーチとはいえ、A代表は更に上のレベルにあるチームだ。このライセンス規定があるために、日本協会は今回、自己矛盾に陥ってしまった。

川口にはユース世代から下積みすることが要求され、A代表は戦力ダウンを余儀なくされた。日本国内で足を引っ張り合っているようでは、日本代表は到底世界に太刀打ちすることはできない。日本サッカー協会は、本気で強い日本代表を国民に見せたいと考えているのか。それとも決まりだからと言って頑なになるのか。これは、ヒエラルキーがもたらす機能不全だといえる。

ライセンスの決まりがあるからこの人事はおかしい、という表面的な議論に終始しては、日本代表の強化という目的を達成することはできない。そもそも、ライセンスはサッカーの価値を高めるためのシステムのはずで、魅力を奪うものであってはならない。広い視野でいま一度、制度全体を見つめ直してほしい。

選手上がりの川口が、指導者としてどのような活躍をするのか、日本国民は見てみたいのである。代表チームも川口の力を必要としており、それを決まりだからと言って退け、思考停止するのはあまりにも四角四面ではないだろうか。