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W杯改革に課題山積み。最小国開催の22年と最多開催国の26年

2018 7/25 07:00SPAIA編集部
2022 FIFAワールドカップ,ⒸShutterstock.com
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オーソドックスな大会はロシアが最後? W杯改革案

フランスが20年ぶりの優勝で幕を閉じたW杯ロシア大会は、若手が活躍したフランスやイングランドのチームが目立った。次回以降の大会でも主力として大会を盛り上げてくれるだろう。一方で、W杯改革に絡み開催国の在り方は変革の時期を迎えている。

2022年の開催国はW杯史上最小国のカタール、2026年はアメリカ、カナダ、メキシコの北米3カ国共催が決まっているのだが、今までのW杯とはレギュレーションや出場国の大会中の過ごし方などが大きく変わるのではと予想されている。

W杯過去最小の開催国、カタール

初めて中東で行われる22年のカタール大会は、W杯史上最も小さな国での開催となる。これまでは欧州主要リーグのシーズンオフである6月から7月という時期に開催されてきたが、この時期のカタールは平均気温が38度を超え、最高気温が42度にまで上がる。

過去に開催したメキシコやブラジルも暑さ対策が課題とされたが、カタールの気温が選手に与える影響はさらに大きいと考えられるため、11月~12月にかけて行われることが決定された。この決定により各国、年末とあわせ長期のウィンターブレークを設けるなどの対応が必要となってくる。

現在、隣国サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)ら7カ国から国交を断絶されており、政治的な問題を抱えているカタール。会場建設を巡る労働者待遇の問題や招致運動をめぐる不正疑惑もある。また、北米大会から予定されている参加枠数の拡大が4年前倒しで行われる可能性もあり、仮にそうなった場合、周辺国の協力を得られない中、カタールの大会運営能力を上回る規模になることが懸念され、開催自体を疑問視する声も上がっている。しかし、22年開催国がカタールという決定に変更はなさそうだ。

過去最大の開催規模 アメリカ、カナダ、メキシコ大会

ロシア大会直前に行われたFIFA総会で、26年大会はアメリカ、カナダ、メキシコによる史上初の3か国共催となることが決定した。これまでW杯が共催されたのは02年の日韓大会のみ。3か国共催は北米大陸全土が開催地となる過去最大規模の大会だ。

現在はカナダの東部2都市と西部の1都市(トロント、モントリオール、エドモントン)、メキシコの中部2都市と北部1都市(メキシコシティ、グアダラハラ、モンテレー)、そしてアメリカの10都市(未定)が開催都市とされている。アメリカの開催都市は未定だが既に相当な移動距離が想定されており、各国はキャンプ地の設定と移動に伴う負担が大きな課題となる。

過去の開催規模の大きな大会を振り返ると、14年ブラジル大会は北部マナウスから南部の港町ポルト・アレグレまで開催都市が全土に広がり、キャンプ地の選定と移動時間、気候の変化への順応が課題となった。また94年アメリカ大会では、開催都市が西部カリフォルニアから東部のニュージャージー州やマサチューセッツ州まで全土に広がったこ。この時は東部と西部で最大3時間の時差があったため、選手たちはその時間調整に苦慮した。

ちなみにカリフォルニアのサンノゼ空港からニュージャージーのニュー・アーク空港までは、直行便で約5時間30分かかる距離だ。26年北米大会では単純な移動距離の広がりだけでなく、南北の広がりで生まれる気候差や東西の広がりで生まれる時差といった問題もうまれるだろう。グループごとに開催地がブロック分けされるといった対応策があるのか、現時点でははっきりしていない。

参加国枠の拡大でどうなるか

26年大会から、参加国枠を36から48へと拡大することを決定しているFIFA。この拡大措置は現在22年大会に前倒しするか検討が進められているが、そもそもこの参加国枠の拡大で何が起きるのだろう。 まずはそのまま、より多くの国がW杯の舞台に立つことができるようになる。48の内訳はアジアが8(現行制度では4)、アフリカが9(同5)、ヨーロッパが16(同13)、オセアニアが1(同0)、北中米カリブが6(同3)南米が6(同4)、そして大陸間プレーオフで2枠(同2)、開催国枠1(同1、共催の場合はFIFA評議会が判断)だ。人口が多いアジアやアフリカの増枠と、オセアニアに1枠が確保されたことで「フットボールがより多くの子供たちに夢を与えることになるだろう」とFIFAは言う。

懸念されるのは大会レベルの低下だ。特に南米と欧州の増枠数に比べてアジアとアフリカの枠数はほぼ倍増することになり、出場国のレベル差は現行制度より広がるのは間違いないだろう。自国代表が強豪国に挑む姿を見る機会が増える一方、フットボールファンからすれば退屈なワンサイドゲームが増えるだけになる可能性がある。

世界中を熱狂と歓喜、そして悲嘆の渦に巻き込んだフットボールの祭典。次回以降どのような形式になるのか気がかりだ。