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危険信号を見逃すな サッカーのオーバーユース症候群

2018 6/24 15:00SPAIA編集部
オーバーユース,ⒸShutterstock.com
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サッカー選手に発生しやすい、主なオーバーユース症候群

連日熱戦が繰り広げられているW杯。トップレベルの選手を見ていると、いつもより練習に力が入るという人も少なくないだろう。

しかし、連日の激しいトレーニングや試合の結果、怪我をしてしまう人も少なくない。中でも、同じ部位への過度の負担が継続することが原因で起こる疾患を「オーバーユース症候群」という。

サッカーの場合は脚部に発生することが多く、対処を怠ると症状の長期化や慢性化を引き起こしかねない。サッカー選手に起こりやすいオーバーユース症候群には、どのようなものがあるのだろうか。


  • 鵞足炎(がそくえん)
    膝の内側に痛みが出る疾患。膝の屈伸を伴うランニングやジャンプ、ターンなどによって起こる。膝のすぐ下の内側から膝の上部に腱状についている筋肉に、過度の負担から炎症が起きた状態。X脚や誤った靴選びなども一因となる。痛みが出たらランニングを控え、膝の内側と裏側のストレッチやマッサージによって血行を促進し、症状の悪化を予防する。

  • 足底腱膜炎(そくていけんまくえん)
    足の裏のアーチを支えている足底腱膜に炎症が起こり、かかとの骨の内側が痛む疾患。日中はあまり痛みを感じないが、朝歩き始める時に痛むのが特徴。土踏まずが高い足や、扁平足など足の形に問題がある人に起こりやすい傾向がある。ふくらはぎや足裏にある筋肉のストレッチやマッサージを行い、弾力性のあるシューズを使用し、足裏への負担を軽減することが予防となる。

  • 離断性骨軟骨炎
    聞きなれない名称であるが、「ネズミ」と聞くとピンと来るサッカーファンも多いのではないだろうか。軟骨と骨の間の部分が分離することで発症し、ひどくなると関節内に脱落してしまう。慢性的な膝の痛みを引き起こし、悪化すると脱落した軟骨や骨を手術で取り出す必要がある。初期の場合は運動の休止によって回復が期待できるので、まずは十分な休養を。再開後も無理をせず徐々に負荷を上げることが大切。

  • オスグッドスシュラッター病
    ジャンプや踏み込む動作を繰り返すことによって太ももの前面にある大腿四頭筋に強い負荷がかかって脛骨結節を引っ張るため、成長軟骨部が剥離されてしまう疾患。成長期の柔らかい骨が原因で起こるので、通常大人には起こらない。高確率で軸足に発生し、屈伸運動の際に膝の下が痛むのが特徴。膝の下の骨が飛び出したようにポコッと出てくる場合もあり、押すと痛む。大腿四頭筋や、ハムストリングス(太ももの後面にある大腿二頭筋)のストレッチを充分に行うことで予防できる。

オーバーユース症候群へのセルフケア

オーバーユース症候群の痛みへの対策で共通しているのは、練習や試合の後アイシングだ。10~20分ほど行うが時間にとらわれすぎず、冷やすことで感覚がなくなったら一旦終了すると良いだろう。夏は練習後に水風呂に一浸かって患部を冷やすのも、痛みや疲労の軽減に有効である。

急性的な痛みが落ち着いたら、次はストレッチとマッサージ。硬くなった筋肉の柔軟性を高めることが、再発を防ぐ鍵になる。

筋肉の柔軟性を高めるためには「弱く、長く、伸ばす」ことと「温める」ことが大切だ。そのため、シャワーや入浴後にストレッチをするとより効果的。ストレッチの後は、足の裏や脛などをしっかりマッサージして血液の循環を促すと良い。

アロママッサージも効果的だ。精油を使うことで患部への効果はもちろん、ストレスや気分の落ち込みの改善にも期待ができる。オススメの精油は以下の通り。必要に応じて、クリーム機材やキャリアオイルに1~5%を目安にブレンドしてマッサージする。


  • スイートマジョラム…筋肉痛や筋肉疲労の緩和。鎮痛・鎮静。
  • ローズマリー…全身の活性化。血行促進。筋肉疲労の回復。
  • レモングラス…筋肉の動きを高める。乳酸の排泄促進。
  • ジュニパーベリー…老廃物の排出促進。関節炎の緩和。

「オーバーユース症候群」は身体が危険信号を出している証拠。最も有効な治療法は、無理せず充分な休息をとることだ。サポーター等の使用で痛みが抑えられるからといって、我慢しながらプレイすることがないよう注意してほしい。

上手く自分の身体と付き合い、より良い状態でスポーツを楽しめるよう、適切なウォーミングアップやクールダウン、日常的なストレッチの習慣を身につけることを心がけたい。