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メディアやファンが勘違いしてしまうサッカーのテクニック&戦術

2018 4/10 17:30dai06
サッカー メディア
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キーパーのパンチングは前線へのパス

得点が生まれるゴール前でのワンシーンでは、シュートとそれに対抗するGKのセービングとの応酬になることが多い。そんな時GKが相手側のシュートを取りこぼすことがある。これは広義にいえばキャッチミスと呼ばれるもので、細かく分ければ一度キャッチしたボールを落としてしまうファンブルなども含まれるだろうか。

ただ、この時メディアである実況などが話す「GK、パンチングに逃げます!」といったように紹介されるこのパンチングは、一概にミスであったり、逃げだと受け取ったりすることはできないだろう。なぜならパンチングは単なるセービングのみならず、前線へのパスも意味するためだ。

もっともGKがしっかりとキャッチしてから前線にスローイングするほうが正確かもしれない。ただ、パンチングの方がキャッチするよりも確実にクリアできる場面もある上に、味方のいる方向に飛ばすことができればカウンターにも繋げやすい。日本のGKで言えば川島永嗣などが果敢にパンチングを行う選手だろうか。彼はリーグ・アンのメスの主力として今も活躍中だ。

パンチングはミスと表裏一体ではあるが、決まれば大きいプレーだろう。

壁を少なくするのはGKの目線を通すため

ゴールまでのFKのシーンを思い出していただきたい。このような場合には通常何人かの選手で壁を作り、相手に直接FKを決められないようにするのが一般的で、FKを蹴る位置とゴールまでの位置が近ければ近いほどその枚数を増やすことも多い。

この時に壁の枚数が少ないようだと、メディアやファンは「壁の枚数が足りない」、「もっと枚数を増やした方が良い」という見方をしがちだ。しかし、意図して枚数を減らしている場合もあることを頭に置いておかなくてはならない。

その戦術の意図するところは「GKの目線を通すため」。相手選手が直接FKで得点を狙ってくるような場合、GKはシュートのコースをできるだけ早く読み、その方向に飛ばなくてはならない。壁の枚数が多いと、相手がシュートを蹴る瞬間やコースに気付くタイミングにズレが生じてしまう。当然、その一瞬のズレでFKは決まってしまう。これを避けるには壁の枚数を減らして、GKの視界を広く保つ必要があるわけだ。

後ろががら空きなのはハイプレスを狙っているから

当然のことだが、サッカーでは1つのボールを使う。その1つのボールの行方を追って、20人ほどの選手がピッチを右へ左へと移動していく。ということは、一方がゴールに迫る以上、もう一方のゴール前には広大な空間が存在することになる。カウンターともなればこの空間にロングボールを放り込んだりするのが鉄則だろうか。

こうした空間ができている時、「GKの前はがら空きです」といった実況の声や「誰か戻っておいた方が良い!」と檄を飛ばす解説者の声も少なくない。もちろん、彼らの指摘はもっともだろう。ただ、この空間の存在がすべてミスかというとそうではない。後ろががら空きである分、前には多くの選手がいるはずで、彼らはハイプレスを狙っている可能性がある。

ジョゼップ・グアルディオラが率いるマンチェスター・シティは、中盤で高い支配率を誇ること知られている。彼らが高い支配率を誇るのはハイプレスによりすぐさまボールを奪えるから。そうして奪ったボールを常に相手のエリアで大人数で回すことにより、支配率の向上と攻撃回数の増加に成功。

2018年3月に行われた強敵チェルシーとの一戦でも、71.1%の支配率に加え902本のパスを成功させて勝利している。今やシティのサッカーはビッグクラブも太刀打ちすることが難しいレベルに達しているのだ。